未成年者に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※以下の試験問題については、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約)の適用は考慮しないものとして、解答してください。また、商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産は、未成年者が自由に処分することができる。
イ 未成年者に対して意思表示をした者は、未成年者の法定代理人がその意思表示を知った後は、その意思表示をもって未成年者に対抗することができる。
ウ 未成年者は、その法定代理人の同意を得ないで、負担付贈与の申込みを承諾することができる。
エ 未成年者が認知をするには、その法定代理人の同意を要しない。
オ 父母の離婚により15歳以上の未成年者が親権者である父又は母と氏を異にする場合には、その未成年者は、家庭裁判所の許可を得ることなく、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その親権者である父又は母の氏を称することができる。
ア 法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産は、未成年者が自由に処分することができる。
ア:正しい
未成年者が法律行為(契約など)をするには、原則として「保護者の同意」が必要です。
しかし、これには例外があります。
今回のケースのように、親から「自由に使っていいよ」と渡されたお金(お小遣いなど)については、たとえ未成年であっても、一人で自由に使うことができます。
【ここがポイント!】 条文にある**「第一項の規定にかかわらず」**とは、「1項では同意が必要だと書いてあるけれど、この3項のケース(お小遣いなど)については、特別に同意がなくても大丈夫ですよ」という意味です。
【参照条文】民法第5条(未成年者の法律行為)
1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
イ 未成年者に対して意思表示をした者は、未成年者の法定代理人がその意思表示を知った後は、その意思表示をもって未成年者に対抗することができる。
イ:正しい
未成年者は、届いた通知の重要性を正しく判断できない可能性があるため、法律によって守られています(受領無能力者)。
そのため、相手方が未成年者に対して意思表示(契約の解除や請求など)をしても、原則としてその効力を相手方は主張することができません。
ただし、未成年者の代わりに正しく判断ができる「法定代理人(親など)」がその意思表示の内容を知った後は、もはや未成年者を保護する必要がなくなるため、相手方はその意思表示の有効性を主張できるようになります。
例えば……
一人暮らしをしている未成年者A君のもとに、大家さんから「来月から家賃を値上げします」という通知が届いたケースを考えてみましょう。
- 原則: A君が手紙を読んで内容を知ったとしても、大家さんは「通知したから来月から値上げだ」とは主張できません。
- 本肢の場合: しかし、A君の親(法定代理人)がその手紙を読み、「家賃値上げの通知が来ている」と知った後であれば、大家さんは「正しく通知した」と主張(対抗)できるようになります。
【ここがポイント!】 条文にある**「対抗することができない」とは、簡単に言うと「その通知の効果を認めさせることができない」という意味です。
ポイントは、未成年者本人が知ったかどうかではなく、「保護者が知ったかどうか」**で決まるという点です。
【参照条文】民法第98条の2(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。
一 相手方の法定代理人
二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方
ウ 未成年者は、その法定代理人の同意を得ないで、負担付贈与の申込みを承諾することができる。
ウ:誤り
未成年者が法律行為をするには、原則として「保護者(法定代理人)の同意」が必要です。
ただし、例外として「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(例:ただでもらう、借金を免除してもらう)であれば、自分一人で決めることができます。
しかし、本肢の「負担付贈与」は、ただでもらえるだけの契約ではありません。
「〇〇をする代わりに、これをあげるよ」というように、もらう側にも何らかの義務(負担)が生じる契約です。
これは「単に権利を得る」だけの行為には当たらないため、親の同意なしに一人で承諾することはできません。
例えば……
- 普通の贈与(一人でOK): おじいちゃんから「10万円あげるよ」と言われ、素直にもらうこと。
- 負担付贈与(同意が必要): 隣のおじさんから「この車をあげる代わりに、うちの庭掃除を毎日してね」と言われるようなケース。
このように、「おまけで義務がついてくる」場合は、未成年者が一人で判断すると損をしてしまう可能性があるため、原則どおり親の同意が必要になります。
【ここがポイント!】 条文にある**「単に権利を得、又は義務を免れる」とは、「未成年者にとってプラス(利益)にしかならない」**という意味です。少しでもマイナス(負担や義務)が混ざるなら、それはもう例外には当てはまりません。
【参照条文】民法第5条(未成年者の法律行為)
1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 (略)
エ 未成年者が認知をするには、その法定代理人の同意を要しない。
エ:正しい
通常、未成年者が契約などの法律行為をするには「親の同意」が必要ですが、「認知」については親の同意は一切不要です。
認知は「この子は自分の子である」と法律上認める行為です。これは非常に個人的でデリケートな事柄(身分上の行為)であるため、たとえ未成年であっても、「本人の意思」が何よりも尊重されるべきだと考えられています。
もし、これに親の同意が必要だとしてしまうと、「親が反対しているから自分の子を認知できない」といった事態が起き、結果として生まれてきた子供の利益を損なう恐れがあるため、このようなルールになっています。
例えば……
17歳の男子A君に子供が生まれたとします。
- A君が「自分の子として責任を持ちたい(認知したい)」と考えた場合、たとえA君の両親(法定代理人)が猛反対していたとしても、A君は一人で有効に認知の届出をすることができます。
【ここがポイント!】 認知は**「身分上の行為」です。民法5条で学んだ「同意がないと取り消せる」というルールは、主にお金や契約などの「財産」を守るためのものです。 認知のような身分に関わることは、「財産法上の制限(親の同意など)は受けない」**と整理しておきましょう。
【参照条文】民法第780条(認知能力)
認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
オ 父母の離婚により15歳以上の未成年者が親権者である父又は母と氏を異にする場合には、その未成年者は、家庭裁判所の許可を得ることなく、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その親権者である父又は母の氏を称することができる。
オ:誤り
父母が離婚し、子が親権者である親と同じ氏(名字)に変更したい場合、たとえ15歳以上の未成年者であっても、原則として家庭裁判所の許可が必要です。
離婚によって親の氏が変わっても、子の氏は自動的には変わりません。親と同じ氏にするためには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」という手続きを行う必要があります。
例えば……
16歳の高校生A君の両親が離婚し、母親が親権者となりました。母親が旧姓に戻った場合:
- A君もお母さんと同じ名字を名乗りたいなら、A君は自分一人で家庭裁判所に申し立てをすることができます(15歳以上なので、親の同意や代理は不要です)。
- しかし、役所に届け出るだけで名字が変わるわけではなく、必ず「裁判所の許可」というステップを踏まなければなりません。
【試験対策のツボ!】 条文3項にある「15歳」という数字は、**「誰が手続きの主体になれるか」**の境目です。
- 15歳未満: 本人はまだ幼いため、法定代理人が代わって手続きをする。
- 15歳以上: 未成年者本人が単独で手続きができる(親の同意も不要)。
多くの受験生が「15歳以上なら裁判所の許可がいらない」と勘違いしがちですが、**「許可は必要だが、手続きを一人でできる」**という意味なので、ひっかからないように注意しましょう!
【参照条文】民法第791条(子の氏の変更)
1 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 (略) 3 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。

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