令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第9問の解説です。
テーマは「共有物の分割(きょうゆうぶつのぶんかつ)」。複数人で持っている財産を、バラバラに分けるときのルールです。
この分野は令和3年の民法改正(令和5年4月施行)で、裁判による分割方法が明文化されたり、所在不明者がいる場合の画期的な新システムが導入されたりと、今もっとも試験に出やすいホットな単元です。しっかり整理しておきましょう。
問題文
共有物の分割に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 共有者は、共有物について、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる。
イ 共有者は、他の共有者が所在不明であることにより、共有物の分割についての協議をすることができない場合には、裁判所に共有物の分割を請求することができる。
ウ 裁判所は、共有物の現物を分割する方法により共有物を分割することができない場合に限り、共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法により共有物の分割を命ずることができる。
エ 甲土地を所有していたAが死亡し、B及びCがAを相続した場合において、甲土地の分割についてBC間で協議が調わないときは、B又はCは、遺産分割の審判を申し立てずに、共有物分割の訴えを提起することができる。
オ A及びBが共有する甲土地について抵当権を有するCは、甲土地の分割に参加することができる。
【選択肢】 1:ア イ 2:ア ウ 3:イ オ 4:ウ エ 5:エ オ
ア:不分割特約(分割しない約束)について
【問題文】 ア 共有者は、共有物について、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる。
【結論:正しい】
どんな状況?(状況イメージ)
Aさん、Bさん、Cさんの3人で、リゾート地にある別荘を共同でお金を出し合って買い、共有(3分の1ずつ)にしました。「せっかく買ったんだから、少なくとも最初の5年間は『売って山分けしよう』なんて言い出さずに、みんなで楽しもうぜ!」と約束(契約)しました。こういう約束は有効でしょうか?
解説
各共有者は、原則として「いつでも」共有物の分割を請求できます(民法256条1項本文)。しかし、せっかくみんなでお金を出し合って買ったのに、翌日に「やっぱり僕の持分をお金に換えたいから、別荘を売り払って分割しよう」と誰かが言い出すと、他の人が困ってしまいますよね。
そこで、「最大5年間」であれば、「分割をしない」という約束(これを不分割特約といいます)を交わすことが認められています。もちろん、この特約は5年以内なら更新することも可能です。
- 暗記のポイント: 共有物不分割特約は、最大5年(更新も5年を超えなければ何回でもOK)
【参照条文:民法第256条1項(共有物の分割請求)】
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
イ:所在不明の共有者がいる場合の分割について
【問題文】 イ 共有者は、他の共有者が所在不明であることにより、共有物の分割についての協議をすることができない場合には、裁判所に共有物の分割を請求することができる。
【結論:正しい】
どんな状況?(状況イメージ)
Aさん、Bさん、Cさんの3人で持っている土地があります。AさんとBさんは「この土地をきっちり分けて別々に使おう」と考えましたが、もう一人の共有者であるCさんが音信不通になり、今どこに住んでるのか全く分かりません。Cさんがいないと話し合い(協議)ができませんが、AさんとBさんは一生この土地を分けることができないのでしょうか?
解説
共有物を分割したいときは、まずは全員で話し合う(協議する)のが大原則です。しかし、「他の共有者がどこにいるか分からない(所在不明)」のであれば、そもそも話し合いのテーブルにつくことすらできません。
このように「話し合いができないとき」は、裁判所に「きっちり分けてください!」と請求(共有物分割の訴えを提起)することができます(民法258条1項)。
したがって、本肢の記述は正しいです。
💡 さらに一歩先へ!令和5年新設の「超重要」関連条文(民法262条の2)
司法書士の試験対策(および実務)として絶対に知っておきたいのが、2023年(令和5年)4月に新設された民法第262条の2です。
本肢のように「裁判で土地そのものを細かく分ける(共有物分割)」という方法だけでなく、この新条文を使えば、「行方不明のCさんの持分(権利)を、裁判所の許可をもらって、AさんやBさんがお金を払って買い取る(自分のものにする)」という解決ができるようになりました。
連絡のつかない共有者のせいで不動産が放置されるのを防ぐための、現代ならではの超画期的な新制度です。あわせて押さえておきましょう!
【参照条文:民法第258条1項(裁判による共有物の分割)】
共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
【参照条文:民法第262条の2第1項(所在等不明共有者の持分の取得)】※参考
不動産が共有されている場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。(以下省略)
ウ:裁判所による分割の方法について【重要 改正事項】
【問題文】 ウ 裁判所は、共有物の現物を分割する方法により共有物を分割することができない場合に限り、共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法により共有物の分割を命ずることができる。
【結論:誤り】
どんな状況?(状況イメージ)
AさんとBさんが1つの一戸建てを共有しています。話し合いがまとまらず、裁判所に分割をお願いしました。
裁判所が選べる選択肢として、 ①「家を真ん中で2つに真っ二つに切り分ける(現物分割)」 ②「家はAさんのものにする代わり、AさんはBさんに持分相当のお金を払う(賠償分割)」 などがあります。裁判所は、①の「家を真っ二つに切るのが不可能なとき」にしか、②の「お金を払わせて引き取る方法」を命じることができないのでしょうか?
解説
ここは改正民法で条文がすっきりと整理された、超頻出のポイントです!
結論から言うと、現物分割ができない場合に限られません。
改正民法(258条2項)では、以下の2つの方法が「並列(どちらが優先という順位なし)」で規定されました。
- 1号:現物分割(土地に線を引いて分ける、など)
- 2号:賠償分割(1人にモノを集中させて、他の人にはお金を支払う)
裁判所は、その共有物の性質や利用状況などを総合的に見て、「現物で分けることが可能であっても、1人に所有権をまとめてお金で解決した方が合理的だな」と判断すれば、最初から2号の賠償分割を命じることができます。
したがって、「現物分割ができない場合に限り」とする本肢は誤りです。
【参照条文:民法第258条2項(裁判による共有物の分割)】
裁判所は、前項の規定による請求があった場合には、次に掲げる方法によって共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法 二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
エ:遺産分割と共有物分割の訴えについて
【問題文】 エ 甲土地を所有していたAが死亡し、B及びCがAを相続した場合において、甲土地の分割についてBC間で協議が調わないときは、B又はCは、遺産分割の審判を申し立てずに、共有物分割の訴えを提起することができる。
【結論:誤り】
どんな状況?(状況イメージ)
お父さん(Aさん)が亡くなり、残された子供2人(BさんとCさん)が、お父さんの名義だった甲土地を相続しました。この土地をどう分けるかで兄弟喧嘩になり、話し合いがまとまりません。しびれを切らした兄のBさんは、家庭裁判所の「遺産分割」の手続きをすっ飛ばして、いきなり普通の地方裁判所に「この共有地を裁判で分けてくれ!」と訴えを起こすことができるでしょうか?
解説
相続によって生まれた共有関係は、普通の共有関係とはワケが違います。なぜなら、お父さんの遺産には、土地だけでなく、現金や借金など「他の財産」もあるかもしれないからです。それらを無視して、特定の土地だけを普通の裁判所で小切れに分けるのは不公平ですよね。
そのため、最高裁判所の判例(最判昭62.9.4)は、「相続によって共有になった財産は、まずは家庭裁判所で『遺産分割』の手続き(調停や審判)として、全体のバランスを見ながら分けるべきだ」としています。遺産分割の審判を経ずに、いきなり地裁に「共有物分割の訴え」を起こすことはできません。
オ:抵当権者の分割への参加について
【問題文】 オ A及びBが共有する甲土地について抵当権を有するCは、甲土地の分割に参加することができる。
【結論:正しい】
どんな状況?(状況イメージ)
AさんとBさんが共有している土地があります。この土地の「Aさんの持分」を担保にして、銀行のCさんはお金を貸し、抵当権を設定しています。その後、AさんとBさんが「この土地を2つに分けよう」という話し合いを始めました。もし、AさんがBさんに言いくルめられて、ものすごく価値の低いゴミのような場所だけをAさんの取り分にされてしまったら、そこを担保にしている銀行のCさんは大損してしまいます。Cさんは「ちょっと待った!その話し合いに僕も混ぜて!」と言えるでしょうか?
解説
共有物がどうやって分割されるかは、その共有物に利害関係を持っている人(持分に抵当権を設定している人など)にとって死活問題です。
そのため、民法260条1項により、共有物について権利を持つ者(抵当権者など)は、自分の費用で、その分割の話し合い(協議や裁判)に参加(訴訟参加など)することができます。利益を守るために口出ししていいよ、ということですね。
【参照条文:民法第260条1項(共有物の分割への参加)】
共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。
⚠️ 受験生が絶対に引っかかる「オ」の超重要ひっかけ!
本肢「オ」に関連して、記述式の問題や、より深い択一式問題で受験生を奈落の底に突き落とす超有名なひっかけ足があります。それがこちらです。
❌ 引っかけの例:
「共有物の分割をしようとする場合、共有者は、持分上の抵当権者に対して、分割をする旨を通知しなければならない。」
これ、一見すると「参加できる権利があるんだから、教えてあげる義務もあるでしょ?」と正解にしたくなりますよね。でも、民法上、共有者から抵当権者へ「通知する義務」はありません。(自分で気づいて参加してね、というスタンスです)。
ただし!ここからが鳥肌ポイントです。 もし通知を「してあげなかった」場合、どうなるでしょうか? 民法261条によると、通知をされずに勝手に分割されてしまった抵当権者は、「その分割、僕には関係ないんで!」と、分割前の元の持分を主張し続ける(対抗する)ことができるとされています。
- 共有者の義務: 通知しなくても違反ではない(通知義務はない)。
- 通知しなかったペナルティ: 分割の成果を抵当権者に対抗できなくなる。
つまり、「義務ではないけれど、後で文句を言われないために、実務上は絶対に通知する」という、法律(民法)と実務(登記)のギャップが生まれる超面白いポイントなんです。試験では「通知しなければならないか?」と聞かれたら、自信を持って「バツ(義務はない)」と答えてくださいね!
まとめ
誤っている記述の組合せは ウ と
エ なので、正解は 4 です。
本問は、令和3年改正によって「並列」になった裁判分割の方法(ウ)と、相続共有における王道の判例(エ)の知識を組み合わせる問題でした。
改正されたばかりの条文や制度(イの解説で触れた民法262条の2など)は、試験委員も大好きな狙い目スポットです。単なる暗記ではなく、「なぜその法律が必要になったのか」という背景のストーリーと一緒に、楽しく脳に焼き付けていきましょう!

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