【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第13問:民法「抵当権の効力」の完全解説

2026年6月13日土曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第13問の解説です。

 

テーマは「抵当権の効力」。

 

司法書士試験の民法において、抵当権は毎年必ず出題される超重要単元ですが、今回の問13は、過去問で何度も形を変えて出題されている「超ド定番のA級判例」ばかりが集まった、絶対に落とせない問題です。

 

本試験で、一瞬で正誤を見抜くためのポイントを、スッキリ整理していきましょう!

 

 

 

問題文

 

抵当権の効力に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

 

 

 

ア 抵当権が設定されている甲建物と抵当権が設定されていない乙建物がその間の隔壁を除去する工事により一棟の建物となった場合において、甲建物と乙建物が互いに主従の関係になかったときは、甲建物に設定されていた抵当権は消滅する。

 

 

イ 土地の賃借人が当該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、その抵当権の効力は、当該土地の賃貸人の承諾がない限り、当該土地の賃借権に及ばない。

 

 

ウ 抵当権が設定されている建物について賃貸借契約が締結され、敷金が授受された場合において、当該賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた後に、当該賃貸借契約が終了し、当該建物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する。

 

 

エ 抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に配当要求をすることによっても、優先弁済を受けることができる。

 

 

オ 第三者が抵当不動産を損傷しようとしているときは、抵当権者は、当該第三者に対し、その行為の差止めを求めることができる。

 

 

【選択肢】 1:ア イ 2:ア ウ 3:イ エ 4:ウ オ 5:エ オ

 

 

 

ア:建物の合体と抵当権について

 

【問題文】

 ア 抵当権が設定されている甲建物と抵当権が設定されていない乙建物がその間の隔壁を除去する工事により一棟の建物となった場合において、甲建物と乙建物が互いに主従の関係になかったときは、甲建物に設定されていた抵当権は消滅する。

 

【結論:誤り】

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、自分が持っている「甲建物(銀行の抵当権あり)」と、隣にある「乙建物(抵当権なし)」をくっつけて、1つの大きな建物にするリフォーム工事をしました。

 

甲と乙の価値は同じくらいで、どちらがメイン(主)ともオマケ(従)とも言えません。

 

建物が合体して1つになったとき、甲建物についていた銀行の抵当権は、跡形もなく消えてなくなってしまうのでしょうか?

 

【解説】

建物同士が合体して1つになった場合、民法の「動産の付合(244条)」のルールが類推適用されます。

主従の区別がつかない場合、合体後の建物は、それぞれの合体前の価格の割合に応じて、元々のオーナーたちが「共有」することになります。

 

このとき、建物が合体したからといって、せっかく設定されていた抵当権が勝手に消滅してしまうのは、抵当権者(銀行)にとってあまりに酷ですし、不当に損をさせてしまいます。

 

最高裁判所の判例(最判平6.1.25)は、「抵当権が消滅することはない。その抵当権は、合体後の建物のうち、もともとの甲建物の価格の割合に応じた『持分』の上にそのまま存続する」と判断しています。

 

📌 暗記のポイント: 法律の世界では、誰もミスをしていないのに「権利が勝手に消滅する」ということは原則ありません。主従がなければ、価格の割合に応じた「持分」の上にしぶとく残ります。

 

 

 

イ:建物抵当権と敷地利用権について

 

【問題文】

イ 土地の賃借人が当該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、その抵当権の効力は、当該土地の賃貸人の承諾がない限り、当該土地の賃借権に及ばない。

 

【結論:誤り】

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、地主のBさんから土地を借りて(賃借権)、その土地の上に自分のマイホームを建てました。

 

その後、Aさんは銀行からお金を借りるために、その「建物」に抵当権を設定しました。

 

もし、Aさんが借金を返せなくなって建物が競売にかけられたとき、地主のBさんが「私は建物の競売なんて承諾してないぞ!」と怒ったら、建物の抵当権の効力は土地を使う権利(賃借権)には及ばないのでしょうか?

 

【解説】

民法370条には「抵当権は、その目的である不動産に付加して一体となった物に及ぶ」というルールがあります。

 

もし、建物の抵当権の効力が「土地の賃借権」に及ばないとしたら、建物を競売で買った(競落した)人は土地を使う権利がないため、せっかく買った建物をすぐに取り壊さなければならなくなります。これでは社会的に大損害です。

 

そのため判例(最判昭40.5.4)は、「建物の抵当権の効力は、原則として、地主の承諾がなくても当然に土地の賃借権にも及ぶ」としています。建物が売れたら、土地を使う権利もセットでついてくる、ということです。(地主の承諾が必要になるのは、競落した後に賃借権の名義を正式に変更する段階の話です)。

 

📌 暗記のポイント: 建物と敷地利用権は一蓮托生(セット)!地主の承諾がなくても、抵当権の効力は当然に及びます。

 

 

 

ウ:物上代位の差押えと敷金の充当について

 

【問題文】

ウ 抵当権が設定されている建物について賃貸借契約が締結され、敷金が授受された場合において、当該賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた後に、当該賃貸借契約が終了し、当該建物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりその限度で消滅する。

 

【結論:正しい】

どんな状況?(状況イメージ)

 

ビルのオーナーAさんが借金を返さなくなったため、ビルに抵当権を設定している銀行が「オーナーに入る予定の家賃を、俺が直接もらう!」と、物上代位を使って家賃(賃料債権)を差し押さえました。

 

その後、ビルのテナントであるBさんが家賃を滞納したまま、ビルを退去(明渡し)することになりました。

 

オーナーAさんはBさんから敷金を預かっています。

 

銀行が先に家賃を差し押さえているのに、滞納家賃は敷金から引かれて(充当されて)消えてしまうのでしょうか?

 

【解説】

ここは本試験でも形を変えて何度も狙われる超超重要判例です! 結論から言うと、敷金の方が物上代位の差押えよりも強いため、家賃は敷金の充当によって消滅します。

 

敷金というものは、そもそも「テナントが退去するまでに発生した未払い家賃などのリスクを、退去時に自動的に引き算して清算するための担保」です。

 

判例(最判平14.3.28)は、敷金が持っているこの強力な清算パワーを重視しました。

 

抵当権者がいくら一歩先に家賃を差し押さえていようが、その後テナントが建物を明け渡した段階で、未払い家賃は敷金から当然に差し引かれ、その分だけ家賃債権は消滅すると判断しています。

 

📌 暗記のポイント: 「物上代位の差押え」vs「敷金の充当」のガチンコ勝負は、敷金の勝ち!と脳内変換しておきましょう。

 

 

 

エ:物上代位権の行使と配当要求について

 

【問題文】

エ 抵当権に基づき物上代位権を行使する債権者は、他の債権者による債権差押事件に配当要求をすることによっても、優先弁済を受けることができる。

 

【結論:誤り】

どんな状況?(状況イメージ)

債務者がもらえる予定の「火災保険金」があります。この保険金を、一般の債権者が先に差し押さえました。

 

そこに抵当権者が後からやってきて、「ちょっと待った!私はその建物に抵当権を持っていたんだから、物上代位する権利がある!その差押えの列に私も混ぜて(配当要求)、優先的に分配して!」と申請しました。

 

このような都合の良い乗っかりは許されるでしょうか?

 

【解説】

物上代位の絶対的なルール(民法3041項但書)は、お金が債務者の手に渡ってしまう前に、「自分で差し押さえること」です。

 

みずから差押えをすることで、一般の債権者に対して「これは私が担保にとっていたものだ」と警告する意味があるからです。

 

そのため判例(最判平13.10.25)は、「他の債権者が始めた差押えの列に後ろからノコノコついていって、配当要求の形で物上代位のパワーを主張することは認められない」としています。

 

優先弁済を受けたいなら、他人の手続きに乗っかるのではなく、自分自身で差し押さえの手続きを起こさなければなりません。

 

📌 暗記のポイント: 物上代位の基本は「自力救済」。配当要求による物上代位はバツ!と覚えましょう。

 

 

 

オ:第三者の侵害に対する抵当権に基づく妨害排除について

 

【問題文】 オ 第三者が抵当不動産を損傷しようとしているときは、抵当権者は、当該第三者に対し、その行為の差止めを求めることができる。

 

【結論:正しい】

どんな状況?(状況イメージ)

 

A銀行が担保(抵当権)をとっているBさんの山林があります。

 

ある日、全く関係のない不法な第三者が勝手にその山林に立ち入り、木をどんどん伐採して山をボロボロにし始めました。

 

このままだと担保の価値が下がって、A銀行は大損してしまいます。まだ競売を始めていない段階のA銀行は、この第三者に向かって「俺の担保を壊すな!今すぐやめろ!」と言えるでしょうか?

 

【解説】

抵当権は、不動産の「価値」をがっちりキープしてもらうための立派な「物権」です。

 

所有者のようにその場所を自分が使っているわけではありませんが、担保の価値を不当に下げるような侵害行為に対しては、黙って見ている必要はありません。

 

判例(最判平11.11.24など)は、抵当権の価値を不当に減少させる第三者に対し、抵当権そのものに基づく物権的請求権(妨害排除請求・妨害予防請求)を行使して、その損壊行為を差し止めることができると認めています。

 

📌 暗記のポイント: 抵当権も強い「物権」の一つ。自分の担保をめちゃくちゃにされそうなときは、堂々と「やめろ!」と言えます。

 

 

 

まとめ

 

正しい記述の組合せは ウ と オ なので、正解は 4 です。

 

本試験の会場でこの問題を解くときは、

 

  1. まず超基本である オ(妨害排除はできる:) を見抜く。この時点で選択肢はに絞られます。

 

  1. 次に ウ(物上代位vs敷金は敷金の勝ち:) または エ(配当要求による物上代位はダメ:×) を確認する。

 

 

というステップを踏めば、わずか数十秒で確実な1点を毟り取ることができるサービス問題でした。

 

どれも記述式(不動産登記法)の前提知識としても必須の超重要判例ばかりですので、ストーリーと一緒に丸ごと脳に焼き付けておきましょう!

 

 

 

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