【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第14問:民法「抵当不動産の第三取得者」の完全解説

2026年6月14日日曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第14問の解説です。

 

 

テーマは「抵当不動産の第三取得者」

「抵当権がついたままの不動産」を買い受けたり、譲り受けたりした人たちのことです。

 

この分野は「代価弁済」や「抵当権消滅請求」など、条文の要件がそのままパズルのように出題されるため、受験生が苦手意識を持ちやすい単元です。

 

しかし、実はイメージさえ掴めば一瞬で正誤を見抜くことができるサービス分野でもあります。

 

本試験で迷わないよう、いつものようにストーリーでスッキリ整理していきましょう!

 

 

 

問題文

 

抵当不動産の第三取得者に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

 

ア 抵当不動産について所有権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

 

イ 抵当権の被担保債務の保証人が抵当不動産の所有権を取得した場合には、当該保証人は、抵当権消滅請求をすることができない。

 

ウ 抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求の書面の送付を受けた抵当権者が抵当権を実行して競売の申立てをするときは、法定の期間内に、債務者及び当該抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。

 

エ 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売において、買受人となることができない。

 

オ 抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費を支出した場合において、抵当権の実行により抵当不動産が競売されたときは、当該第三取得者は、競売による抵当不動産の売却代金から抵当権者に優先してその支出した額の償還を受けることができない。

 

 

 

【選択肢】 1:ア ウ 2:ア エ 3:イ ウ 4:イ オ 5:エ オ

 

 

 

ア:代価弁済について

 

【問題文】

ア 抵当不動産について所有権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

 

【結論:正しい】

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、銀行の抵当権がついたままのマイホームを、売り主のBさんから3000万円で買い受けました。 (Aさんが第三取得者です)

しばらくして、銀行から、 「Aさん、その家を買った代金の3000万円、売り主のBさんじゃなくて、うちの借金の返済として直接こっちに振り込んでくれませんか?」 と請求されました。

Aさんがその請求に応じて、銀行に3000万円を直接支払った場合(代価弁済)、この家についている抵当権はどうなるでしょうか?

 

解説

これは民法378条に規定されている「代価弁済(だいかべんさい)」そのものの記述です。

抵当権者(銀行)の方から「その代金をこっちに払って」と請求し、第三取得者がその通りに支払った場合、抵当権は無事に消滅します。

銀行としては、競売にかける手間を省いて一足先に確実にお金を回収できたわけですから、もう文句を言う必要はありませんよね。

 

⚠️ 受験生が絶対に引っかかる超重要ひっかけ!

この条文には、本試験で命取りになる凶悪なひっかけポイントがあります。 それが「抵当権者の請求に応じて」という部分です。

もし試験で「第三取得者が自発的に代価を弁済したときは〜」と出題されたら、自信を持って「バツ(消滅しない)」と答えてください。 あくまで「銀行側からの請求」があった場合限定のハナシです。

 

📌 暗記のポイント: 代価弁済は、「銀行からの請求」が絶対条件! 応じて支払えば抵当権は消滅する。

 

【参照条文:民法第378条(代価弁済)】

 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

 

 

 

イ:抵当権消滅請求ができる人について


【問題文】

 

イ 抵当権の被担保債務の保証人が抵当不動産の所有権を取得した場合には、当該保証人は、抵当権消滅請求をすることができない。

 

【結論:正しい】

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、友達のBさんが銀行からお金を借りる際、Bさんの「保証人」になってあげました。

その後、AさんはBさんが担保に入れている家を買い受けて、自分のものにしました。

このときAさんは、 「私はこの家の新しいオーナー(第三取得者)になったので、抵当権消滅請求の手続きを使って、この家から抵当権を消し去ります!」 と主張できるでしょうか?

 

解説

民法379条により、第三取得者は「抵当権消滅請求(ていとうけんしょうめつききゅう)」という、自分から「これだけのお金を払うので抵当権を消してください」とアプローチする権利が認められています。

しかし、民法380条には強力なストッパー(除外規定)があります。

「主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。」

今回のAさんは、確かに新オーナー(第三取得者)ですが、同時に「保証人」という当事者でもあります。

もともと借金全体を代わりに返す重い義務を背負っている人間が、この便利なキセルのような制度を使って「家の価値の分だけ払うから、抵当権を消して!」と都合よく立ち回ることは許されません。

 

📌 暗記のポイント: 借金の当事者である「債務者」と「保証人」は、絶対に抵当権消滅請求ができない!

 

【参照条文:民法第380条】 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

 

 

 

ウ:抵当権消滅請求に対する競売の通知について

 

【問題文】

ウ 抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求の書面の送付を受けた抵当権者が抵当権を実行して競売の申立てをするときは、法定の期間内に、債務者及び当該抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。

 

【結論:正しい】

どんな状況?(状況イメージ)

新オーナー(第三取得者)になったAさんから、銀行に対して「2000万円払うので抵当権を消してください(抵当権消滅請求)」という手紙が届きました。

銀行は、 「ふざけるな、この家は競売にかけたら3000万円で売れるはずだ!2000万円なんかで手を打てるか!」 と怒り、突っぱねて競売を申し立てることにしました(2ヶ月以内に申し立てる必要があります)。

このとき銀行は、元々の借金をした本人(債務者)や、家をAさんに売った人(譲渡人)に対して、「消滅請求を拒否して競売にかけるからね!」と教えてあげる必要があるでしょうか?

 

解説

これも民法385条の条文そのままの記述です。

新オーナーから「消滅請求」が届いたのに、それを無視して銀行が競売を申し立てるということは、元々の債務者や売り主(譲渡人)にとっても大問題です。

競売になれば、彼らも担保責任を追及されたり、残りの借金の取り立てが厳しくなったりして大パニックになります。

そのため、銀行は手続きの透明性を保つために、法定の期間内(競売の申立てと同時、または直後)に、「債務者」と「不動産の譲渡人」にその旨をきっちり通知しなければならないと定めています。

 

📌 暗記のポイント: 消滅請求を断って競売にするときは、「債務者」と「譲渡人」への通知が必要! (条文通りに素直に押さえる)。

 

【参照条文:民法第3851項】

抵当権者は、前条各号に掲げる期間内に抵当権を実行して競売の申立てをするときは、その申立てをした旨を債務者及び抵当不動産の譲渡人に通知しなければならない。

 

 

 

エ:第三取得者による競売の買受けについて

 

【問題文】

エ 抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売において、買受人となることができない。

 

【結論:誤り】

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、抵当権がついたままの家を買い受けました(第三取得者)。

その後、元の持ち主の借金返済が滞ったため、銀行によってその家が競売にかけられてしまいました。

せっかく手に入れた我が家が競売のオークションに出されてしまったのを見て、Aさんは、 「自分が一番高いお金を出して、この競売で自分の家を買い戻したい(落札したい)!」 と考えました。

Aさんはこの競売に入札して、買受人(落札者)になることができるでしょうか?

 

解説

民法390条は、ズバリ「第三取得者は、その競売において買受人となることができる」と定めています。

第三取得者は、さきほどの「保証人」などとは違って、元々の借金について何の責任もない綺麗で無実な人です。

たまたま抵当権つきの不動産を買ってしまった被害者のような立ち位置ですから、競売のオークションに自ら参加して、堂々とお金を出してマイホームを死守することを禁止する理由はどこにもありません。

 

📌 暗記のポイント: 無実の第三取得者は、競売のオークション(買受け)に参加してOK

 

【参照条文:民法第390条(第三取得者の買受け)】

抵当不動産の第三取得者は、その競売において、買受人となることができる。

 

 

 

オ:第三取得者の費用償還請求権について

 

【問題文】

オ 抵当不動産の第三取得者が抵当不動産について必要費を支出した場合において、抵当権の実行により抵当不動産が競売されたときは、当該第三取得者は、競売による抵当不動産の売却代金から抵当権者に優先してその支出した額の償還を受けることができない。

 

【結論:誤り】

どんな状況?(状況イメージ)

抵当権がついたままの家を買ったAさん(第三取得者)。 住み始めてすぐに、台風で屋根が吹き飛んでしまったため、Aさんは自分のポケットマネーから100万円を出して屋根を修理しました(必要費の支出)。

しかしその後、家は競売にかけられてしまい、他人の手に渡ることになりました。

競売で売れたお金(売却代金)が配られたとき、Aさんは、 「私がこの家の価値を維持するために立て替えた屋根の修理代100万円は、銀行よりも先に、この売却代金から返してよ!」 と主張できるでしょうか?

 

解説

これも民法391条にストレートな規定があります。

第三取得者が、その不動産を維持するために使った「必要費」や、価値を高めるために使った「有益費」は、不動産そのものの価値を高めて競売の売却価格をアップさせることに貢献しています。

そのため法律は、 「他の債権者(抵当権者である銀行など)よりも先に、その売却代金から真っ先に払い戻してもらえる(優先して償還を受けることができる)」 というご褒美(特権)を与えています。

 

📌 暗記のポイント: 第三取得者が使った修理代(必要費・有益費)は、銀行よりも最優先で配当から返してもらえる!

 

【参照条文:民法第391条(第三取得者による費用償還請求)】

抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、その償還を受けることができる。

 

 

 

まとめ


🏁 正解の組み合わせ

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

 

誤っている記述は エ と オ なので、正解は 5 となります。

 

本試験の会場でこの問題を解くときは、

 

  1. まず条文知識として瞬殺できる エ(第三取得者は競落人になれるのでバツ) を見つける。この時点で選択肢はに絞られます。

 

  1. 次に相方の ア(代価弁済は正しい)か オ(費用は最優先で返してもらえるのでバツ)をチェックする。

 

 

というステップを踏めば、こちらも迷うことなく一瞬で正解にたどり着ける問題でした。

 

「保証人は消滅請求できない」「費用は最優先で戻ってくる」など、記述式(不動産登記法)の登録免許税の計算や配当の前提としても絡む超重要知識ですので、いつでも引っ張り出せるように整理しておきましょう!

 

 

 

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