令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部·第30問の解説です。
テーマは、会社法の中でも超一等地である「株主総会」。
決議の要件、利害関係人の扱い、議決権の行使方法など、基本でありながら本試験で合否を分ける重要論点ばかりが並んでいます。
特にこの分野は、「株主総会のルール」と「取締役会のルール」をわざとごっちゃにして引っかける問題が定番です。
問題文
株主総会に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。
ア 株主総会の決議について特別の利害関係を有する株主は、当該決議について、議決権を行使することはできない。
イ 株式会社は、定款を変更する株主総会の決議について、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行うこととする旨を定款で定めることができる。
ウ 株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数の制限をすることはできない。
エ 株式会社は、株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が株主総会においてその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
オ 定時株主総会は、毎事業年度の終了の日から3か月以内に招集しなければならない。
【選択肢】
1:ア
イ
2:ア
オ
3:イ
エ
4:ウ
エ
5:ウ
オ
ア:株主総会における「特別利害関係人」の議決権
【問題文】
ア 株主総会の決議について特別の利害関係を有する株主は、当該決議について、議決権を行使することはできない。
【結論:誤り】
解説
試験委員が大好きな、「取締役会」とのすり替えひっかけです。
- 株主総会の場合(本肢): 自分の株主なのですから、決議に個人的な利害関係(特別利害関係)があっても、原則として議決権を行使できます。
株主は自分の利益のために動くのが当然だからです。 ※ただし、あまりにも不当な決議がされた場合は、後から「株主総会決議取消しの訴え」の対象になります。また、特定の株主から自己株式を買い取る場合など、ごく一部の例外的な場面でのみ制限されます。
- 取締役会の場合: 取締役は会社から経営を任されている立場(受任者)です。自分の個人的な利益と会社の利益が衝突する場合、その取締役は議決権を行使できません(会社法369条2項)。
問題文は「株主総会」について「行使できない」としているため、誤りです。
📌 暗記のポイント: 利害関係があっても「株主」は投票してOK!(自分の財産だから)。「取締役」は投票NG!(会社の代理人だから)。
イ:定款変更(特別決議)の定足数の緩和制限
【問題文】
イ 株式会社は、定款を変更する株主総会の決議について、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行うこととする旨を定款で定めることができる。
【結論:正しい】
解説
株主総会の「特別決議(定款変更など)」のハードルをどこまで下げていいか、という少し細かい条文(会社法309条2項)の知識です。
特別決議の原則的なルールは以下の通りです。
- 定足数(キックオフに必要な出席者):議決権の過半数の株主が出席
- 決議要件(パスに必要な賛成数):出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成
このうち、定足数(過半数)については、定款で自由に変えることができますが、あまりに引き下げすぎると勝手な決議ができてしまいます。
そのため法律は、「どんなに定款で引き下げても、3分の1未満にすることはできない(=3分の1以上は必要)」という防波堤を設けています。
問題文では「3分の1以上を有する株主が出席し、3分の2以上の賛成」と定款で定める、となっているため、この防波堤の範囲内に収まっており、完全に適法で正しい記述です。
📌 暗記のポイント: 株主総会の特別決議、定款でいくら定足数をオマケしても、最低「3分の1」の出席ラインは崩しちゃダメ!
ウ:株主総会における代理人の「数」の制限
【問題文】 ウ 株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数の制限をすることはできない。
【結論:誤り】
解説
判例(最判昭61.12.19)の趣旨からの出題です。
株主は、自分で総会に行けないときに代理人を出席させることができます(会社法310条1項)。
しかし、1人の株主が「じゃあ、代理人を50人連れていきます!」と言って、総会場の席を占領したり、次々と発言して議事を妨害したりしたら、総会のスムーズな運営(円滑な進行)ができなくなってしまいます。
そのため最高裁は、会社が定款などで「代理人は株主1人につき1人に限る」というように、数的な制限をかけることは有効(できる)としています。
📌 暗記のポイント: 総会がパニックになるのを防ぐため、「代理人は1人まで!」という数制限をかけるのはOK!
エ:議決権の不統一行使を拒めるケース
【問題文】
エ 株式会社は、株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が株主総会においてその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
【結論:正しい】
解説
議決権の不統一行使(ふとういつこうし)とは、「私が持っている100株のうち、60株は賛成、40株は反対します」というように、バラバラの投票をすることです。
信託銀行のように「他人のために(たくさんのお客さんの要望をまとめて)株を持っている人」であれば、お客さんごとに意見が分かれるので不統一行使をする正当な理由があります。会社もこれを拒めません。
しかし、「自分のためだけに株を持っている普通の株主」が、1人で「賛成と反対をバラバラに入れます!」と言うのは、ただ会社を混乱させるだけです(精神的にも矛盾しています)。
そのため会社法は、株主が他人のために株を持っている人ではない(=純粋に自分のためだけに持っている)ときは、会社側から「不統一行使は受け付けません!」と拒むことができると定めています(会社法313条3項)。
📌 暗記のポイント: 自分のためだけに株を持ってる人は、「賛成と反対を両方出す」というワガママ(不統一行使)を会社から拒否される!
【参照条文:会社法第313条3項】
株式会社は、第一項の株主(不統一行使をしようとする株主)が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
オ:定時株主総会の「3か月以内」という罠
【問題文】
オ 定時株主総会は、毎事業年度の終了の日から3か月以内に招集しなければならない。
【結論:誤り】
解説
実務のイメージに引きずられた受験生をバサバサ落とす、超有名な引っかけ問題です。
日本の企業の多くは、3月決算の場合、6月(3か月以内)に定時株主総会を開きます。
しかし、会社法の条文(会社法296条1項)をよーく見ると、「毎事業年度の終了後『一定の時期』に招集しなければならない」としか書かれておらず、具体的な「3か月以内」という数字の縛りは一切ありません。
ではなぜみんな3か月以内に開くかというと、それは「法人税の申告期限が原則2か月(延長して3か月)」であることや、会社法上の「基準日の有効期間」によるものです。
ここが試験でも超重要です!会社法上、議決権を行使できる基準日の有効期間は「基準日から3か月以内」と決まっています(会社法124条2項)。
多くの企業は定款で「事業年度の終了の日(決算日)を基準日とする」と定めているため、自動的に「決算日から3か月以内」に総会を開かないと、その基準日が使えなくなってしまうのです。
逆に言えば、もし決算日から4か月後に定時総会を開くなら、定款の基準日とは別に新たに基準日を設定して、その2週間前までに公告(会社法124条3項)し直せば、会社法上は何も問題ありません(法務省の公式見解でも認められています)。
会社法上のルールとしては、定款や公告で適切にコントロールすれば「4か月後」に定時総会を開いても法律違反にはなりません。
📌 暗記のポイント: 定時株主総会の時期は、会社法上は「一定の時期」とあるだけで、「3か月以内」という絶対の数字ルールはない!基準日を別途設定・公告すれば3か月超えも可能!
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
正しい記述は イ と エ なので、正解は 3 となります。
本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。
- まず、受験生おなじみの超頻出トラップ オ(会社法には「3か月以内」という文字はない ⇒ バツ) を見つける。 ⇒ この時点で、オを含む ② と ⑤ が一気を消去されます。
- 次に、これまた基本中の基本である ア(株主総会なら利害関係人も投票OK ⇒ バツ) を見つける。 ⇒ これで、アを含む ① も消去されます。
残ったのは ③(イ・エ)か ④(ウ・エ)です。
ここで ウ の「代理人の人数制限はできる(=記述はバツ)」が判断できれば、見事に 3 が浮かび上がります!
今回の問題は、会社法の中でも非常にメジャーな論点だけで構成されていました。
特に 「ア(取締役会との比較)」 や 「オ(3か月以内の引っかけ)」 は、過去問でも何度も形を変えて出題されている骨董品のような知識です。
こういう基本問題を確実に、かつスピード感を持って正解できるよう、繰り返し復習しておきましょう!

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