令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部·第31問の解説です。
テーマは、機関設計やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の要である「監査役」。
監査役の「欠格事由(なれない人)」、「兼任禁止のルール」、「監査役会や委員会設置会社との関係」など、どれも商業登記法の記述式問題(申請書の作成)に直結する超・超重要論点ばかりです。
この問題は、近年の大きな法改正(成年被後見人の欠格事由廃止など)を網羅しつつ、受験生がうっかり引っかかりやすい「数字の罠」をきれいに仕込んできています。
問題文
監査役に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。
ア 成年被後見人は、監査役となることができない。
イ 指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
ウ 監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち3分の2以上は、社外監査役でなければならない。
エ 監査役設置会社の監査役は、当該会社の子会社の会計参与を兼ねることができない。
オ 監査役設置会社の監査役は、正当な理由がなければ、株主総会の決議によって解任することができない。
【選択肢】
1:ア
ウ
2:ア
オ
3:イ
ウ
4:イ
エ
5:エ
オ
ア:役員の「欠格事由」に関する重要法改正
【問題文】 ア 成年被後見人は、監査役となることができない。
【結論:誤り】
解説
令和元年の法改正(2021年施行)による、絶対に落とせない超重要テーマです。
かつては「成年被後見人や被保佐人は一律で取締役や監査役になれない」という欠格事由のルールがありましたが、障害者排除に繋がる点や成年後見制度の利用を促進する観点から、この欠格事由は一律廃止されました。
現在では、成年被後見人であっても監査役(および取締役など)に就任することができます。
※ただし、意思能力を欠く状態の人が就任するのを防ぐため、就任する際には「成年後見人が本人に代わって承諾する」といった適切な手続き(会社法331条の2など)を踏む必要があります。
記述は「なることができない」としているため、間違いです。
📌 暗記のポイント: 「成年被後見人だから」という理由だけで役員になれない時代は終わった! 改正法で役員就任が可能に!
イ:指名委員会等設置会社と監査役の設置
【問題文】 イ 指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
【結論:正しい】
解説
機関設計の「置いてはならない(設置禁止)」の絶対ルール(会社法327条4項)です。
指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社には、社内に「監査委員会」や「監査等委員会」という取締役たちで構成された強力な独自の監査組織が最初から組み込まれています。
ここにさらに従来の「監査役」まで置いてしまうと、社内の監査システムが二重になってしまい、お互いに権限がぶつかって大混乱してしまいます。
そのため会社法は、「委員会組織で監査するなら、従来の監査役は絶対に置いてはならない」と明確に禁止しています。
📌 暗記のポイント: 「○○委員会等設置会社」には、監査役を絶対に置いてはならない!(監査の仕事がバッティングして大混乱するから)
ウ:監査役会設置会社における「社外監査役」の割合
【問題文】
ウ 監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち3分の2以上は、社外監査役でなければならない。
【結論:誤り】
解説
試験委員が何度も何度も繰り返し出してくる、伝統的な「数字のひっかけ」です。
監査役会を置く会社では、監査の客観性を高めるために以下のルールがあります。
- 監査役全体の人数:3人以上(ここは正しい)
- そのうち社外監査役の割合:「半数以上」(ここがバツ!)
問題文の「3分の2以上」というのは真っ赤なウソです。
法律上のラインは「半数以上(2分の1以上)」ですので、3人いるなら2人以上が社外監査役であればクリアとなります(会社法335条3項)。
📌 暗記のポイント: 監査役会の社外メンバーのノルマは「3分の2」ではなく「半数以上」! 受験生を釣るための定番の罠。
【参照条文:会社法第335条3項】
監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。
エ:監査役の「兼任禁止」の範囲
【問題文】
エ 監査役設置会社の監査役は、当該会社の子会社の会計参与を兼ねることができない。
【結論:正しい】
解説
実務でも商業登記の記述式でも絶対に落とせない、兼任禁止(けんにんきんし)のルール(会社法335条2項)です。
監査役は、取締役たちが悪いことをしていないか「チェック(監査)する立場」です。
もし監査役が、「自分自身が役員をやっている子会社」を監査することになったらどうでしょう?
自分の仕事や自分の会社を自分でチェックする」ことになり、甘口のザル監査になってしまいますよね。
そのため、監査役は以下のポジションを兼ねることが絶対にできません。
- 自分の会社の:取締役、支配人その他の使用人、執行役
- 子会社の:取締役、支配人その他の使用人、執行役、会計参与
記述の通り、子会社の会計参与を兼ねることはできませんので、正しい記述です。
📌 暗記のポイント: チェックする側(監査役)が、チェックされる側(自社の役員・使用人、子会社の役員・使用人・会計参与)を兼任するのは絶対にNG!
【参照条文:会社法第335条2項】
監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の執行役若しくは会計参与を兼ねることができない。
オ:役員の「解任」と正当な理由の有無
【問題文】
オ 監査役設置会社の監査役は、正当な理由がなければ、株主総会の決議によって解任することができない。
【結論:誤り】
解説
民法(委任契約)と会社法の根本ルールを問う問題です。
会社と役員の関係は「お仕事の委任契約」です。
株主総会は、会社のオーナーである株主が集まる場所ですから、「この監査役(または取締役)、なんか気に入らないからクビにしたいな」と思えば、正当な理由がなくてもいつでも株主総会の決議で解任することができます(会社法339条1項)。
「正当な理由がないと解任できない」わけではありません。
ただし、もし会社側が「何の落ち度もない役員を、ただの好き嫌いで任期途中に理不尽にクビにした」という場合(正当な理由がない解任)は、クビにされた役員は会社に対して「残りの任期でもらえるはずだった報酬分を損害賠償として払いなさい!」と請求できるという金銭的なペナルティが発生するだけです(同条2項)。
解任の決議自体は問題なく有効に成立します。
📌 暗記のポイント: 会社のオーナー(株主総会)は、理由がなくてもいつでも役員をクビにできる!(ただし、理不尽なクビなら後からお金を請求される)
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
正しい記述は イ と エ なので、正解は 4 となります。
本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。
- まず、法改正の超大玉である ア(成年被後見人はなれない ⇒ 改正でなれるようになったので大ウソ・バツ) を見つける。 ⇒ この時点で、アを含む ① と ② が一瞬で消去されます。
- 次に、誰もが絶対に引っかからないように訓練している ウ(社外監査役は3分の2以上 ⇒ 半数以上なのでバツ)
を見つける。 ⇒ これで、ウを含む ③ も消去されます。
残ったのは ④(イ・エ)か ⑤(エ・オ)です。
ここで イ(委員会設置会社には監査役を置いてはならない ⇒ 正しい)または オ(正当な理由がなくても解任はできる ⇒ バツ)を判断すれば、迷うことなく自信を持って 4 を選ぶことができます!
会社法の「機関(監査役など)」は、今回の問題のように「ア(法改正)」「ウ(定番の数字ひっかけ)」「オ(解任の基本ルール)」といった、過去問をきっちり回していれば瞬殺できる足が必ず混ざっています。
ここでスピードを稼いで、他の難しい問題や午後の記述式に時間を残すのが合格のセオリーです。
しっかり脳内に定着させておきましょう!

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