【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第29問:会社法「株式の併合・単元株式」の完全解説

2026年7月4日土曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部·29問の解説です。

 

テーマは、株式実務において非常に重要な「株式の併合」と「単元株式」。

 

近年、株式の併合は、少数株主を会社から締め出す「スクイーズアウト(強制買収)」の手法として実務上も大活躍しているため、手続きの透明性や株主保護の観点から非常に厳格なルールが敷かれています。

 

一方の単元株式は、「100株で1票」のように議決権のまとまりを決める制度で、株主に有利な変更か不利な変更かで手続きの重さが変わるのが特徴です。

 

 

 

問題文

 

株式の併合及び単元株式に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。

 

ア 株式の併合における併合の割合は、法務省令で定める一定の割合を下回ることはできない。

 

イ 取締役は、株式の併合に関する事項を定める株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

 

ウ 株式会社は、株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合において、当該株式について市場価格がないときは、その端数の合計数に相当する数の株式を競売以外の方法によって売却することはできない。

 

エ 単元株式数に満たない数の株式を有する株主は、定款の定めがない場合であっても、株式会社に対し、当該株主が保有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該株主に売り渡すことを請求することができる。

 

オ 取締役会設置会社は、取締役会の決議によって、定款を変更して単元株式数を減少することができる。

 

 

 

【選択肢】

 

 1:ア ウ

 

 2:ア エ

 

 3:イ ウ

 

 4:イ オ

 

 5:エ オ

 

 

 

ア:株式の併合割合の制限について

 

【問題文】

 

ア 株式の併合における併合の割合は、法務省令で定める一定の割合を下回ることはできない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

株式の併合とは、例えば「10株を1株にまとめる」という手続きです。 この「併合の割合」について、法律や法務省令による「分の1以下にしてはダメ」といった数字上の制限は一切ありません。

 

極端な話、大株主以外の少数株主を全員追い出すために「100万株を1株に併合する」という強烈な割合を設定することも理屈上は可能です。

 

割合そのものを一律の数字で制限するのではなく、その代わりに「株主総会の特別決議」や「取締役による理由の説明(記述イ)」といった手続き面のハードルを高くすることで株主を保護しています。

 

 

📌 暗記のポイント: 株式の併合割合には、法律上の下限・上限のシャッター(数値制限)はない!



イ:株式の併合における取締役の理由説明義務

  

【問題文】

 

イ 取締役は、株式の併合に関する事項を定める株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

株式を併合すると、持っている株数が減るだけでなく、計算上「0.5株」のように1株に満たないハ端(端数)になってしまい、株主の資格を失って追い出されてしまう株主(少数株主)が出るリスクがあります。

 

株主にとって非常に重大な影響を与える手続きであるため、会社法は取締役に重い義務を課しています。

 

株主総会当日、取締役は株主たちの前で「なぜ今、株式の併合をしなければならないのか」という必要性と理由をきっちり口頭で説明しなければいけないルールになっています(会社法1804項)。

 

 

📌 暗記のポイント: 株式の併合は株主の運命を左右する大ごと。だから取締役は総会で「理由の説明」が絶対に必要!

 

 

【参照条文:会社法第1804項】

 

取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役)は、第一項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

 

 

ウ:併合で生じた端数株式(市場価格なし)の処分方法

 

【問題文】

 

ウ 株式会社は、株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずる場合において、当該株式について市場価格がないときは、その端数の合計数に相当する数の株式を競売以外の方法によって売却することはできない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

株式の併合によって、「0.3株」や「0.7株」といった1株未満の切れ端(端数)が集まった場合、会社はそれらを合算して「1株」にまとめ、売却してお金に換え、元の株主たちに分配します。

 

このとき、原則は「競売(オークション)」にかけて売るのですが、非上場企業のように「市場価格がない(誰も買わない不人気な)株式」の場合、オークションを開いても誰も買ってくれません。

 

そのため会社法は、市場価格がない株式については、「裁判所の許可」を得ることで、競売以外の方法(特定の誰かに直接売るなど)で売却することを認めています(会社法2352項、2342項)。

 

また、会社自身が買い取ることも可能です。

 

 「競売以外の方法によって売却することはできない」とする本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 市場価格のない端数株は、「裁判所の許可」さえ取れば、オークション(競売)以外の方法でも売却できる!

 

 

 

エ:単元未満株主の「買増請求(売渡請求)」と定款

 

【問題文】

 

エ 単元株式数に満たない数の株式を有する株主は、定款の定めがない場合であっても、株式会社に対し、当該株主が保有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該株主に売り渡すことを請求することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

100株で1単元(1票)」と決めている会社で、現在40株しか持っていない株主(単元未満株主)がいたとします。

 

このままだと総会で投票できません。

 

そこで、この株主が会社に対して「あと60株を俺に売ってくれ!合計100株(1単元)にして投票したいんだ!」と請求することを、単元未満株式の買増請求(会社側から見ると売渡請求)といいます。

 

この買増請求は、株主にとって非常に便利な権利ですが、会社側にとっては新しく株を発行したり自己株式を切り崩したりする手間が発生します。

 

そのため、この権利は法的なデフォルト権利ではなく、「定款(ていかん)に『買増しができるよ』というルールをあらかじめ定めている場合に限って」使うことができる権利となっています(会社法1941項)。

 

定款の定めがない場合でも請求できるとする本肢は誤りです。

 

📌 比較で暗記(超重要):

 

  • 買取請求(会社に「俺の40株を買い取ってくれ」と言う):定款がなくても法律上いつでもOK

 

  • 買増請求(会社に「あと60株売ってくれ」と言う):定款に定めてあるときだけOK

 

 

【参照条文:会社法第1941項】

 

株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(中略)をすることができる旨を定款で定めることができる。

 

 

 

オ:取締役会決議による「単元株式数の減少」の定款変更

 

【問題文】

 

オ 取締役会設置会社は、取締役会の決議によって、定款を変更して単元株式数を減少することができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

会社法を勉強する上で外せない、超頻出の「定款変更の例外」ルールです。

 

定款(会社の憲法)を書き換えるには、原則として「株主総会の特別決議」という一番重い手続きが必要です。

 

しかし、「単元株式数を減らす(例:100⇒50株にする)」、あるいは「単元株式数の定め自体を廃止する(例:100⇒1株にする)」という変更はどうでしょうか?

 

今まで100株持っていないと議決権がもらえなかった人が、50株持っていれば議決権をもらえるようになるわけですから、株主にとっては「権利が使いやすくなる(得をする)」だけであり、誰一人として損をしません。

 

このように、株主に1ミリも不利益がない定款変更については、わざわざコストと時間をかけて株主総会を開くまでもなく、「取締役会の決議」だけでサクッと定款を書き換えていいよ、というおまけルールが認められています(会社法191条)。

 

 

📌 暗記のポイント: 単元数を「減らす(または廃止する)」のは株主に有利だから、取締役会決議だけで定款変更OK!(増やすときは株主に不利になるので総会の特別決議が必要です!)

 

 

【参照条文:会社法第191条】

 

株式会社は、単元株式数を減少させ、又は単元株式数についての定款の定めを廃止するときは、株主総会の決議によらないで、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、その減少又は廃止を内容とする定款の変更をすることができる。

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

 

正しい記述は イ と オ なので、正解は 4 となります。

 

本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。

 

  1. まず、受験生が真っ先に暗記するキラー知識 オ(単元数の減少は株主に有利だから取締役会だけで定款変更マル) を見つける。この時点で、オを含むに絞られます。

 

  1. あとは相方の イ(併合は理由説明が必要でマル)か エ(買増請求は定款の定めが必要なのでバツ)をチェックする。

 

この2ステップで、ウなどの少し細かい売却手続きの条文に惑わされることなく、美しく 4 を選ぶことができます!

 

今回の問題は、会社法の「株式」の中でも特に対策が立てやすい定番論点が並んでいました。

 

特に 「オ(株主に有利な変更は取締役会でOK)」 の知識は、商業登記法の記述式(書面申請)でも添付書面として「取締役会議事録」を書かせる形で超頻出ですので、仕組みごと100%完璧にマスターしておきましょう!

 

 

 

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