【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第28問:会社法「株主の権利」の完全解説

2026年7月4日土曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部·28問の解説です。

 

テーマは会社法の骨格である「株主の権利」。

 

株主が持つ譲渡の自由、議決権、配当を受ける権利、そして会社を監視するための各種閲覧権など、バラエティに富んだ重要論点が1問にギュッと凝縮されています。

 

今回の問題は、「原則の条文ルール」と「超有名判例による例外」の組み合わせを正確に整理できているかが勝負の分かれ目です。

 

 

 

問題文

 

株主の権利に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。

 

ア 取締役会設置会社の唯一の株主がその保有する譲渡制限株式を他人に譲渡した場合には、取締役会の決議による承認がないときであっても、その譲渡は、当該会社に対する関係において有効である。

 

イ 株式会社は、基準日株主が行使することができる権利が株主総会における議決権である場合において、当該基準日株主の権利を害しないときは、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を議決権を行使することができる者と定めることができる。

 

ウ 株券発行会社の株券を所持する株主は、当該会社に対し、当該株主に係る株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

 

エ 株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

 

オ 監査役設置会社において、株主が取締役会の議事録の閲覧又は謄写を請求するためには、裁判所の許可を得ることを要しない。

 

【選択肢】

 

 1:ア ウ

 

 2:ア エ

 

 3:イ エ

 

 4:イ オ

 

 5:ウ オ

 

 

 

ア:1人会社における譲渡制限株式の無承認譲渡

 

【問題文】

 

ア 取締役会設置会社の唯一の株主がその保有する譲渡制限株式を他人に譲渡した場合には、取締役会の決議による承認がないときであっても、その譲渡は、当該会社に対する関係において有効である。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

会社法の中で最も有名な最高裁判例(最判昭48.6.15)の1つです。

 

本来、会社が「見ず知らずの変な人」に株主になられないように設定するのが譲渡制限株式です。

 

そのため、会社の承認なしに勝手に株を売っても、会社に対しては「俺が新しい株主だ!」と主張することはできません(会社に対しては無効)。

 

しかし、今回の会社は「唯一の株主(株主が1人だけ)」のいわゆる1人会社です。

 

会社の株を100%持っている本人が「この人に株を売りたい」と言っている以上、保護すべき他の株主は存在しません。

 

このようなケースでは、わざわざ形式的に取締役会の承認決議を経ていなくても、会社に対する関係でもその譲渡は完全に有効となります。

 

 

📌 暗記のポイント: 譲渡制限の無承認譲渡は会社に対して原則無効。でも、「1人会社」のときは例外的に会社に対しても有効!

 

 

 

イ:基準日後に株式を取得した者の議決権(基準日の例外)

 

【問題文】

 

イ 株式会社は、基準日株主が行使することができる権利が株主総会における議決権である場合において、当該基準日株主の権利を害しないときは、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を議決権を行使することができる者と定めることができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

少し細かい条文(会社法1244項)ですが、択一式では非常によく狙われるポイントです。

 

会社は「日の時点で株主名簿に載っている人に議決権をあげます」という基準日を決めることができます。

 

原則として、その基準日の後に株を買った人は、次の総会で議決権を使えません。

 

ただし、これには例外(おまけルール)があります。

 

  1. 対象となる権利が「株主総会での議決権」であること

 

  1. 元々の基準日株主の権利を害しないこと(議決権を奪うわけではないこと)

 

この2つの条件をクリアしていれば、会社は基準日の後に新しく株主になった人(全部または一部)にも、議決権をあげちゃうよ、と決めることができます。

 

 

📌 暗記のポイント: 基準日後に株を買った人にも、「議決権」なら、既存の株主の邪魔をしない範囲で後からあげることができる!

 

 

【参照条文:会社法第1244項】

 

株式会社は、第一項の権利(基準日株主が行使できる権利)が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合において、当該基準日株主の権利を害しないときは、基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。

 

 

 

ウ:株主名簿記載事項証明書の交付請求(株券発行会社の例外)

 

【問題文】

 

ウ 株券発行会社の株券を所持する株主は、当該会社に対し、当該株主に係る株主名簿記載事項を記載した書面の交付又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

条文の「ただし書」を正確に読み込めているかを突く、ニクいひっかけ問題です。

 

株主は会社に対して「私が株主名簿にどう載っているか、証明書(書面やデータ)をちょうだい」と請求することができます(会社法1221項)。

 

これを株主名簿記載事項証明書といいます。

 

しかし、このルールには明確な除外規定があります。「株券発行会社」の場合は、この請求ができません(同条1項ただし書)。

 

株券発行会社では、手元にある「株券」そのものが強力な株主の証明書となるため、わざわざ会社に証明書を発行させる必要がない(株券を流通させる妨げにもなる)からです。

 

 

📌 暗記のポイント: 株主名簿の証明書請求は、「株券発行会社」の株主は請求できない!(株券を持っていればそれが証明になるから)

 

 

【参照条文:会社法第1221項】

 

株主(株券発行会社にあっては、第七項の規定により株券が発行されていない株式の株主を除く。)は、株式会社に対し、当該株主に係る株主名簿記載事項を記載した書面の交付、又は当該事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

 

 

 

エ:株主の権利の基本(自益権の全部剥奪の禁止)

 

【問題文】

 

エ 株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

会社法の理念を問う超重要ルール(会社法1052項)です。

 

株主の権利には、会社の経営に参加する「共益権(議決権など)」と、会社から経済的な利益をもらう「自益権(配当金や、会社清算時の残り財産の分け前)」があります。

 

いくら会社の自治(定款)が自由だからといって、「この株主には、配当金も一切あげないし、会社が潰れたときの残りの財産も1円もあげません」という、自益権を完全にゼロにする定款の定めは絶対に許されません(無効です)。

 

お金をもらう目的を完全に奪われたら、それはもう法律上の「株主」とは呼べないからです。

 

 

📌 暗記のポイント: 「配当」と「残余財産」、この2つの経済的メリットを両方ともゼロにする定款は一発で無効!

 

 

【参照条文:会社法第1052項】

 

株主に前項第一号(剰余金の配当)及び第二号(残余財産の分配)に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

 

 

 

オ:取締役会議事録の閲覧請求(監査役設置会社のハードル)

 

【問題文】

 

オ 監査役設置会社において、株主が取締役会の議事録の閲覧又は謄写を請求するためには、裁判所の許可を得ることを要しない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

会社法の中で受験生が最も混乱しやすい「閲覧・コピー(謄写)請求権」のトラップです。

 

株主が「取締役会の議事録を見せて」と会社に請求する場合、その会社の中の監視体制によってハードル(条件)が変わります。

 

  • 監視が緩い会社(監査役がいない会社など)株主は、営業時間内ならいつでも、裁判所の許可なしで議事録を見ることができます(会社法3712項)。

 

  • 監視が厳しい会社(監査役設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社)

 

すでにプロの監査役が厳しくチェックしているため、一般の株主が会社を引っかき回すのは控えるべきです。そのため、株主が議事録を見るには、「裁判所の許可」を得てからでなければ見ることができません(同条3項)。

 

問題文は「監査役設置会社」と明記されているため、裁判所の許可が必要です。「要しない」とする本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 監査役がいる会社の取締役会議事録を見たいなら、「裁判所の許可」という高いハードルを越えなければならない!

 

 

【参照条文:会社法第3713項】

 

監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における前項の規定(株主による閲覧請求)の適用については、同項中「営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

 

誤っている記述は ウ と オ なので、正解は 5 となります。

 

本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。

 

  1. まず、定款の絶対ルールである エ(配当も残余財産も両方ゼロにする定款は無効正しい記述) を確信する。この時点で、エを含むが消去されます。

 

  1. 次に、1人会社の超メジャー判例である ア(1人会社なら無承認譲渡も会社に対して有効正しい記述) を確信する。これで、アを含むも消去されます。

 

残ったのは(イ・オ)か(ウ・オ)です。

 

ここで オ の「監査役設置会社では家裁の許可が必要(=記述はバツ)」を思い出せれば、ウの細かい知識に自信がなくても、確実に 5 へ着地することができます!

 

会社法の「株主の権利」は、条文の原則だけでなく「ただし書」や「監査役設置会社の場合の変形」が命取りになります。

 

今回はまさにその落とし穴をキレイに突いてきた良問でした。しっかり復習して血肉にしていきましょう!

 

 

 

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