ここからいよいよ会社法のゾーンに突入ですね!気合を入れていきましょう。
令和6年度の第27問は、会社法のトップバッターとして超頻出のテーマである「発起人の責任」からの出題です。
会社法における設立の分野は、「発起設立」と「募集設立」のルールの違いや、「発起人が負う責任は過失責任(ミスがあった時だけ)か、それとも無過失責任(ミスがなくてもアウト)か」というパズルが毎年のように狙われます。
実務に出てからも、会社の設立登記は司法書士のメイン業務の一つですから、試験委員もかなり気合を入れて作問してきます。
問題文
発起人の責任に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして、解答してください。
ア 発起設立の場合も, 募集設立の場合も、各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
イ 発起人は、自らが給付した現物出資財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足する場合であっても、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、株式会社に対して当該不足額を支払う義務を負わない。
ウ 発起人は、株式会社が成立しなかった場合であっても、設立時募集株式の引受人があるときは、当該株式会社の設立に関して支出した費用を負担しない。
エ 発起人の責任を追及する訴えは、株主代表訴訟として提起することができる。
オ 発起人が株式会社の設立についてその任務を怠ったことによって当該株式会社に損害を生じさせた場合であっても、当該株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該発起人は、当該株式会社に対し、損害を賠償する責任を負わない。
【選択肢】
1:ア
ウ
2:ア
エ
3:イ
エ
4:イ
オ
5:ウ
オ
ア:発起人の株式引受義務(設立の超大前提)
【問題文】
ア 発起設立の場合も、募集設立の場合も、各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
【結論:正しい】
解説
会社法を勉強する上で、一番最初に出会う超重要ルールです。
会社を立ち上げる言い出しっぺである「発起人」は、ただ口を出すだけでなく、自分自身も必ずリスクを背負ってその会社の株主にならなければいけません。
これは、自分たちだけでお金を出し合う「発起設立」であっても、外部の投資家からもお金を集める「募集設立」であっても一切変わりません。
発起人は全員、必ず1株以上の株式を引き受ける義務があります(会社法25条2項)。
📌 暗記のポイント: 言い出しっぺ(発起人)は、どんな設立方法でも「最低1株」は絶対に自分で身銭を切って買うべし!
【参照条文:会社法第25条2項】
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
イ:現物出資の価額不足責任(自分で出した人の無過失責任)
【問題文】
イ 発起人は、自らが給付した現物出資財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足する場合であっても、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、株式会社に対して当該不足額を支払う義務を負わない。
【結論:誤り】
解説
お金ではなく、車やパソコンなどの「モノ」で出資することを現物出資(げんぶつしゅっし)といいます。
例えば、「この車は300万円の価値があります!」と言って出資したのに、会社設立後に査定し直したら、実はボロ車で100万円の価値しか選べなかった(200万円不足していた)というケースです。
このとき、その現物出資を「自分で」行った発起人は、たとえ「悪気はなかったんです!」「しっかり注意して見積もったんです!」と言い訳(無過失の証明)をしたとしても、絶対にその不足分の200万円を会社に支払う義務を免れることはできません(=無過失責任)。 自分が持ち込んだモノの価値に責任を持つのは当然だからです。
※なお、自分以外の他のメンバーが持ち込んだモノの価値が足りなかった場合(他の発起人の責任)は、「私はちゃんと注意していました」と証明すれば責任を免れることができます(過失責任)。
今回は「自らが給付した」とあるため、言い訳無用の無過失責任となり、本肢は誤りです。
📌 暗記のポイント: 現物出資を「自ら行った本人」は、どんなに注意していても不足額の穴埋め責任から逃れられない!
【参照条文:会社法第52条2項1号】
前項の規定(価額補填責任)にかかわらず、次に掲げる発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、同項に規定する義務を負わない。
一 現物出資財産等を給付した発起人以外の発起人であって、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したもの
ウ:会社が不成立だった場合の設立費用のゆくえ
【問題文】
ウ 発起人は、株式会社が成立しなかった場合であっても、設立時募集株式の引受人があるときは、当該株式会社の設立に関して支出した費用を負担しない。
【結論:誤り】
解説
いろいろ準備したものの、結局途中でポシャってしまい、会社が誕生しなかった(不成立)という悲しいケースです。
会社設立のために使った事務所の契約代や通信費などの「設立費用」は、誰が払うべきでしょうか?
法律は、「会社ができなかった以上、言い出しっぺである発起人が全員で連帯してポケットマネーから全額負担しなさい」と定めています(会社法56条)。
問題文は「募集株式の引受人(外からお金を出してくれようとした投資家)がいるときは、発起人は負担しなくていい」となっていますが、そんなわけはありません。
投資家に失敗のツケを回すのはお門違いです。
引受人がいようがいまいが、会社が不成立ならすべての責任と費用は発起人が背負います。
📌 暗記のポイント: 会社が不成立に終わったら、かかった費用はすべて発起人の「自腹(連帯責任)」になる!
【参照条文:会社法第56条】
株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。
エ:発起人の責任と「株主代表訴訟」
【問題文】
エ 発起人の責任を追及する訴えは、株主代表訴訟として提起することができる。
【結論:正しい】
解説
会社が役員などの裏切りによって損害を受けたとき、会社自身が「裁判で訴えて損害賠償を取る」のが筋ですが、身内贔屓(みうちびいき)で訴えないことがあります。
そんな時に、株主が会社に代わって「俺が会社のために訴えてやる!」と裁判を起こす仕組みを株主代表訴訟(かぶぬしだいひょうそしょう)といいます。
この株主代表訴訟のターゲット(被告)にできるのは、現在の「取締役」や「監査役」だけではありません。
「発起人」が設立の時にやらかした任務懈怠(にんむけいたい:仕事をサボること)の責任も、バッチリ株主代表訴訟で追及することができます(会社法847条1項)。
発起人は会社が成立した後は一見ただの過去の人に見えますが、設立時にサボって会社に損害を与えていたなら、後から株主代表訴訟で訴えられるリスクを負っています。
📌 暗記のポイント: 「発起人」も株主代表訴訟のターゲットになる! 設立時のサボりは後から株主に訴えられる。
【参照条文:会社法第847条1項】
六箇月(中略)前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、書面その他の電磁的記録により、発起人、設立時取締役、設立時監査役(中略)の責任を追及する訴え(中略)の提起を請求することができる。
オ:設立無効判決と発起人の損害賠償責任
【問題文】
オ 発起人が株式会社の設立についてその任務を怠ったことによって当該株式会社に損害を生じさせた場合であっても、当該株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該発起人は、当該株式会社に対し、損害を賠償する責任を負わない。
【結論:誤り】
解説
設立手続きに致命的な違反があり、裁判によって「この会社の設立は無効です!」という判決(設立無効の判決)が確定してしまったケースです。
設立が無効になると、会社は将来に向かって消滅し、清算手続き(後片付け)に入ることになります。
では、会社が消滅するからといって、「設立の時に仕事をサボって会社に大損害を与えた発起人の個人的な罪(損害賠償責任)」まで一緒にチャラ(ナシ)になるのでしょうか?
当然、そんな都合の良い話はありません。
会社が裁判で潰されることと、その原因を作ったり別の件でサボったりした発起人が「会社に損害を弁償すること」は全くの別問題です。
判決が確定した後でも、発起人は会社(または清算手続き中の会社)に対して、しっかりと損害賠償責任を負い続けます。
📌 暗記のポイント: 裁判で会社設立が「無効」になっても、発起人がやらかした損害賠償責任はチャラにならない!
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
正しい記述は ア と エ なので、正解は 2 となります。
本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。
- まず、会社法設立の超大原則である ア(どんな設立でも発起人は1株以上引き受ける ⇒ 正しい) を確信する。 ⇒ この時点で、アを含む ① か ② に絞られます。
- あとは相方の ウ(不成立の費用を負担しない⇒大ウソ・バツ)か
エ(発起人も株主代表訴訟の対象になる⇒正しい)をチェックする。
これだけで、難しい「イ」や「オ」の判断に時間を割くことなく、確実に 2 を選ぶことができます!
会社法の「設立」は、毎年必ず1問出題される超重要エリアです。
覚えることが多いように見えますが、今回のように「ア(1株義務)」や「ウ(不成立時の自腹)」といった超基本足だけで正解にたどり着ける問題が非常に多いのが特徴です。
基本条文を確実に自分のものにしていきましょう!

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