令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部·第23問の解説です。
テーマは、平成30年改正で新しく創設された相続法の超注目制度「特別の寄与(とくべつのきよ)」。
昔からよくあった「義理の父を長年つきっきりで介護したのに、お嫁さん(息子の妻)には1円も遺産がもらえない……」という悲劇を救うために作られた、実務上も極めて重要な現代的な制度です。
この制度の肝は、「①誰が、②どんな方法で尽くしたときに、③いくらまで請求できるか」という要件をどれだけ正確に整理できているか。
特別の寄与(民法1050条)の3大ルール
この問題を解く前に、頭に入れておくべき超重要ルールが3つあります。
- 誰が請求できる? ⇒ 被相続人の「親族」(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)。ただし、「相続人」は除外されます(相続人は、自分の「寄与分」として遺産分割の中で主張できるため、この別制度を使う必要がないからです)。
- どんな方法で貢献した? ⇒ 「労務の提供」(無償の療養看護や家業の手伝いなど、自分の体や時間を使って尽くしたこと)に限られます。
- いくらまで請求できる? ⇒ 相続人の取り分を脅かさないよう、「遺産の額(遺贈の額を引いた残高)」が上限となります。
これらを踏まえて、各記述をスカッと切っていきましょう!
問題文
特別の寄与に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア Aには、配偶者B及び子Cがおり、BがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Bが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Bは、Cに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
イ Aには、子B及びCがおり、Cの配偶者DがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Dが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Dは、B及びCに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
ウ Aには、子Bがおり、Aの弟であるCが定期的にA名義の預金口座に現金を振込送金し、生活費の援助をしていたところ、Aが死亡し、BがAを相続した。この場合において、CがAの生活費を援助したことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Cは、Bに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
エ 特別寄与者と相続人との間で特別寄与料の支払について協議が調わない場合には、特別寄与者は、法定の期間内に、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
オ 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
【選択肢】
1:ア
イ
2:ア
ウ
3:イ
エ
4:ウ
オ
5:エ
オ
ア:「請求できる人」のひっかけ(相続人はNG)
【問題文】
ア Aには、配偶者B及び子Cがおり、BがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Bが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Bは、Cに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
【結論:誤り】
解説
配偶者であるBさんは、Aさんの「法定相続人」そのものです。
この「特別の寄与(特別寄与料)」という制度は、「相続人以外の親族」を救うための最終兵器です。
Bさんのように最初から遺産をもらう権利がある「相続人」は、この制度を使うことはできません。
Bさんが「私は夫を一生懸命介護した!」と主張したいときは、遺言がない限り、遺言や遺産分割協議の中で自身の「寄与分(民法904条の2)」を主張して遺産の分け前を増やしてもらうルートに進むべきだからです。
記述は、相続人であるBが特別寄与料を請求できるとしているため、間違いです。
📌 暗記のポイント: 「相続人(妻や子供など)」は特別寄与料の請求はできない! あくまで相続人になれない「お嫁さん」などを救うための制度!
イ:王道の特別寄与者(子の配偶者による療養看護)
【問題文】
イ Aには、子B及びCがおり、Cの配偶者DがAに対して無償で療養看護をしていたところ、Aが死亡し、B及びCがAを相続した。この場合において、Dが療養看護をしたことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Dは、B及びCに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
【結論:正しい】
解説
これこそが、この法律が作られた一番の目的(王道パターン)です!
亡くなったAさんの相続人は、子供であるBさんとCさんです。
Cさんの妻(お嫁さん)であるDさんは、Aさんから見て「子の配偶者」なので「1親等の姻族(=親族)」にあたりますが、相続人ではありません。
相続人ではないDさんが、無償で一生懸命に義理の父Aさんを介護(療養看護)し、それによってAさんの財産が維持された(介護費用を外に払わずに済んだなど)のであれば、Dさんは相続人(B・C)に対して「私の頑張りをお金で払ってください」と堂々と請求することができます。
📌 暗記のポイント: これぞ法改正の星!相続人じゃないお嫁さん(親族)の介護は、特別寄与料としてバッチリ請求できる!
ウ:「貢献の方法」のひっかけ(お金の援助はNG)
【問題文】
ウ Aには、子Bがおり、Aの弟であるCが定期的にA名義の預金口座に現金を振込送金し、生活費の援助をしていたところ、Aが死亡し、BがAを相続した。この場合において、CがAの生活費を援助したことによりAの財産の維持又は増加に特別の寄与をしたと認められるときは、Cは、Bに対し、特別寄与料の支払を請求することができる。
【結論:誤り】
解説
Aさんの弟であるCさんは「2親等の血族(=親族)」であり、今回の相続人(子B)ではないため、「人(主体)」の条件はクリアしています。
しかし、Cさんが行ったのは「現金の振り込み(経済的援助)」です。
特別の寄与として認められるのは、あくまで「労務の提供」、つまり、自分の体を使って介護をしたり、仕事を無償で手伝ったりした行為に限定されています。
ただお金を仕送りしただけの場合は、どれだけ助かったとしても、この制度の対象にはなりません(お金の貸し借りなら通常の金銭債権として請求すべきですし、あげたものなら贈与になります)。
したがって、Cは請求できず、本肢は誤りです。
📌 暗記のポイント: 汗をかいた(労務提供)のは○だけど、お金を出しただけ(経済的援助)は特別寄与料の対象外!
エ:話し合いが決裂したときの家庭裁判所への請求
【問題文】
エ 特別寄与者と相続人との間で特別寄与料の支払について協議が調わない場合には、特別寄与者は、法定の期間内に、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
【結論:正しい】
解説
条文(民法1050条2項)通りの正しい記述です。
お嫁さん(特別寄与者)と、遺産をもらった相続人との間で「いくら払うか」の話し合い(協議)が決裂した、あるいはそもそも話し合いに応じてくれないという場合、お嫁さんは家庭裁判所に申し立てて、代わりに金額を決めてもらう(協議に代わる処分)ことができます。
ただし、いつまでもダラダラ請求できると相続人が困ってしまうため、期間制限(相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月、又は相続開始の時から1年)が設けられています。
📌 暗記のポイント: 身内の話し合いが不調なら、家庭裁判所が間に入ってバシッと決めてくれる!(ただし期限はタイト)
オ:特別寄与料の「上限額」のルール
【問題文】
オ 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
【結論:正しい】
解説
こちらも条文(民法1050条4項)通りの正しい記述です。
どれだけお嫁さんが介護を頑張ったとしても、もらえる特別寄与料の金額が「亡くなった人の遺産の総額」を超えてしまったら、肝心の相続人の取り分がマイナスになってしまい、本末転倒です。
また、亡くなった人が「この人に遺産をあげる」と遺言で決めた「遺贈(いぞう)」の分を脅かすのも良くありません。
そのため法律は、「遺産の価額から、遺贈の価額を差し引いた残りの金額」をマックスの上限として定めています。
📌 暗記のポイント: 頑張りは認めるけれど、「遺産(から遺贈を引いた額)」を超える額は請求できない!
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。
誤っている記述は ア と ウ なので、正解は 2 となります。
本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。
- まず、主体(人)の超基本ひっかけである ア(相続人である妻Bはそもそも対象外なのでバツ) を見つける。 ⇒ この時点で、アを含む ① か ② に絞られます。
- あとは相方の イ(お嫁さんの介護は王道なのでマル)か ウ(お金の仕送りは対象外なのでバツ)をチェックする。
これだけで、一切迷うことなく 2 を選ぶことができます!
平成30年の大改正で登場した「特別の寄与」は、最初は受験生みんなが身構えましたが、出題パターンは毎回この「相続人はダメ」「お金の援助はダメ」「上限額の引っかけ」のどれかです。
基本さえ押さえれば得点源にできる親切な論点ですので、今回でしっかり脳内にインプットしておきましょう!

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