【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第17問:民法「保証」の完全解説

2026年6月28日日曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第17問の解説です。

 

テーマは「保証」。

 

主たる債務者が借金を返さなかったときに、代わりに返す義務を負うお馴染みのルールです。

 

この分野は、平成30年の民法大改正によって「個人の保証人を守るためのルール」が非常に強力になりました。

 

今回の問題は、その改正の中心である「個人根保証(こじんねほしょう)」や「事業用債務の個人保証の制限」から、条文の超重要ポイントが並んでいます。

 

 

 

問題文

 

保証に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

 

ア 保証契約は、その内容を記録した電磁的記録によっても有効に締結することができる。

 

イ 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないものは、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を定めなければ、その効力を生じない。

 

ウ 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人であるものにおける主たる債務の元本は、主たる債務者が死亡したときは、確定する。

 

エ 事業の用に供する建物の賃貸借契約に基づく賃料債務を主たる債務とする保証契約は、その契約の締結に先立ち、公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

 

オ 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証を法人でない者に委託する場合には、その者に対し、財産及び収支の状況を含む民法所定の事項に関する情報を提供しなければならない。

 

 

 

【選択肢】

 1:ア イ

2:ア オ

 3:イ ウ

 4:ウ エ

 5:エ オ

 

 

 

ア:保証契約の電磁的記録について

 

【問題文】

 

ア 保証契約は、その内容を記録した電磁的記録によっても有効に締結することができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

どんな状況?(状況イメージ)

Aさんは、友達のBさんの借金の保証人になることになりました。

 

紙の保証契約書にハンコを捺す代わりに、パソコンやスマホを使って、契約内容を記録した電子データ(電磁的記録・電子契約など)に電子署名をする形で手続きを進めました。

 

「保証人は責任が重いから、絶対に紙の書面じゃなきゃダメ!」と言って、この電子契約は無効になってしまうでしょうか?

 

 

解説

 

民法4462項は、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定めています。うっかり口約束で重い責任を負わないようにするためです。

 

しかし、続く3項には「電磁的記録(電子データ)でされたときは、書面でされたものとみなす」という規定があります。

 

IT化が進んだ現代の実務に合わせたルールですね。電子データであっても、きっちり記録が残って慎重に手続きが行われるため、有効な保証契約として認められます。

 

 

📌 暗記のポイント: 保証契約は「書面」または「電磁的記録(電子データ)」が必須!口約束だけがバツ。

 

 

【参照条文:民法第4463項】

 

保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

 

 

 

イ:個人根保証契約の極度額について

 

【問題文】

 

イ 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないものは、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を定めなければ、その効力を生じない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

どんな状況?(状況イメージ)

 

Aさんは、甥っ子のBくんがアパートを借りるため、または会社を経営して何度も銀行と取引するために、「将来発生するかもしれない家賃や借金をまるごと保証するよ(根保証)」と引き受けました。

 

Aさんは会社ではなく「個人(法人でないもの)」です。

 

このとき、保証契約書に「最大〇〇万円までしか保証しません!」という枠(極度額)をカチッと決めて書き込んでおかなければ、この保証契約自体が丸ごと無効になってしまうでしょうか?

 

 

解説

 

改正民法の超・目玉規定である「個人根保証(こじんねほしょう)」のルールです。

 

個人が「いくら膨らむか分からない将来の借金」を無限に背負わされて破産するのを防ぐため、法律は「個人が根保証人になるなら、絶対に『極度額(上限金)』を数字で決めなさい。書かないなら契約ごと無効!」と強力なペナルティを用意しました(民法465条の21項)。

 

さらに、その極度額の中身には、大元の借金(元本)だけでなく、利息や違約金、損害賠償など、「ついてくるおまけの金額もすべて含めた合計額」として、わかりやすく枠を決める必要があります。 記述の通り、これら全部を含めた極度額を定めなければ効力を生じません。

 

 

📌 暗記のポイント: 個人の根保証は、利息などもすべてコミコミの「極度額」を定めないと一発で無効!

 

 

【参照条文:民法第465条の21項】

 

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額のすべてについて、その生じる一部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

 

個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない。

 

 

 

ウ:法人の根保証における元本確定事由について

 

【問題文】

 

ウ 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人であるものにおける主たる債務の元本は、主たる債務者が死亡したときは、確定する。

 

 

【結論:誤り】

 

 

どんな状況?(状況イメージ)

 

主たる債務者である社長のBさんが亡くなってしまいました。

 

この借金の根保証人になっていたのは、個人の友人ではなく、「〇〇信用保証株式会社(法人)」でした。

 

借金をした本人が死んでしまったのだから、法人である根保証人の保証枠も、その時点で自動的にストップ(元本確定)して、それ以降の新しい借金は保証しなくてよくなるのでしょうか?

 

 

解説

 

ここが本試験で一番受験生を引っかけにくるポイントです! 結論から言うと、「主たる債務者の死亡によって自動ストップ(元本確定)する」のは、保証人が『個人』の場合だけです。

 

個人が保証人の場合、借主が死んだ後まで、相続人が勝手に借りたお金の保証までさせられたら堪りませんよね。だから個人を守るために自動ストップする仕組み(民法465条の413号)があります。

 

しかし、今回の保証人は「法人」です。プロの保証会社などの法人は、組織としてリスク管理をしてビジネスで保証を引き受けているため、法律がわざわざ「死亡による自動ストップ」という手厚い保護を与えてあげる必要はありません。

 

したがって、法人が保証人の場合にはあてはまらないため、本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 「債務者の死亡で自動ストップ」という優しさは、個人保証人だけの特権!法人はストップしない。

 

 

 

エ:事業用賃貸借の保証と公正証書について

 

【問題文】

 

エ 事業の用に供する建物の賃貸借契約に基づく賃料債務を主たる債務とする保証契約は、その契約の締結に先立ち、公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

どんな状況?(状況イメージ)

 

Bさんは、新しくラーメン屋を開くために「店舗(事業の用に供する建物)」を借りました。その家賃の保証人に、友人のAさんがなってあげることになりました。

 

改正民法では、「事業のための重い保証を個人が引き受けるときは、事前に公証役場に行って『私は本当に保証人になる覚悟があります!』と公正証書を作らなければ無効になる」という厳しいルールができました。

 

今回の「お店の家賃の個人保証」も、わざわざ公証役場に行って公正証書を作ってこなければ無効になってしまうのでしょうか?

 

 

解説

 

非常にひっかかりやすい、実務上も超重要な例外ポイントです!

 

確かに、民法465条の6により、「事業のための借金」の保証人に個人がなるときは、事前の公正証書が絶対に必要です。

 

しかし!同じ事業のための契約であっても、「事業用建物の賃貸借契約の家賃(賃料債権)」の保証については、この公正証書作成ルールの「対象外(不要)」とされています。

 

なぜなら、家賃の保証は、銀行からの高額な事業融資の保証に比べて、毎月の金額がある程度予測しやすく、昔から日常的に行われているため、いちいち公証役場に行かせるのは実務上ハードルが高すぎて大混乱してしまうからです。

 

 

📌 暗記のポイント: 事業のための保証でも、「お店やオフィスの家賃(賃料)」の個人保証には、公正証書は不要!

 

 

【参照条文:民法第465条の61項】要約

 

主たる債務者が事業のために負担する金銭の支払を目的とする債務(中略)を主たる債務とする保証契約は、その契約の締結に先立ち、公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。「金銭の支払を目的とする債務」から、建物の賃貸借に基づく賃料債務などは除外されています(判例・通説)。

 

 

 

オ:主たる債務者の情報提供義務について

 

【問題文】

 

オ 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証を法人でない者に委託する場合には、その者に対し、財産及び収支の状況を含む民法所定の事項に関する情報を提供しなければならない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

どんな状況?(状況イメージ)

 

Bさんは、自分の会社の運転資金として銀行から1000万円を借りるため、個人である友人Aさんに「保証人になってよ!」と頼みました(委託)。

 

このときBさんは、友人Aさんに対して、 「実は今、うちの会社の財産や売上はこんな状態で、他にもこれだけ借金があるんだよね……」 という会社のリアルな懐事情(情報)を、正直に打ち明けなければならないのでしょうか?

 

 

解説

 

これも改正民法465条の10に新設された、個人保証人を保護するための大切なルールです。

 

主たる債務者(Bさん)が、自分の事業の借金の保証を個人(Aさん)にお願いするときは、Aさんが「本当にこの人を信用して大丈夫か?」を冷静に判断できるように、自分の「財産・収支の状況」「他の借金の有無と金額」「担保の状況」をきっちり説明(情報提供)しなければなりません。

 

もし、この説明をサボったり、大嘘をついて保証人にさせていた場合、あとで事情を知った保証人Aさんは、「こんなの聞いてない!保証契約を取り消します!」と解除・取消しを主張できるようになっています(民法465条の102項)。

 

 

📌 暗記のポイント: 事業の借金を個人にお願いするときは、自分のサイフの中身を正直にバラす義務(情報提供義務)がある!

 

 

【参照条文:民法第465条の101項】

 

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又はこれと同一の交渉環境において締結される保証契約の保証(中略)を法人でない者に委託する場合には、その者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

 

誤っている記述は ウ と 工 なので、正解は 4 となります。

 

本試験の会場でこの問題を解くときは、

  1. まず、個人と法人の強烈なひっかけである ウ(主務者死亡で確定するのは個人だけ。法人は確定しないのでバツ) を見つける。この時点で選択肢はに絞られます。

 

  1. あとは相方の イ(個人根保証は極度額が絶対必要でマル)か エ(事業用家賃の保証には公正証書は不要なのでバツ)をチェックする。

 

というステップを踏めば、自信を持って 4 を選ぶことができる問題でした。

 

平成30年改正民法の「保証」のテーマは、「誰が保証人か(個人か法人か)」「何のための借金か(事業用か私用か、家賃か融資か)」によってルールの適用がガラリと変わります。

 

頭の中で「個人 vs 法人」の比較図をイメージしながら、本試験に向けて確実にマスターしておきましょう!

 

 

 

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