令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第20問の解説です。
テーマは、成年後見制度の3つ目の類型である「補助」。
精神上の障害によって「判断能力が不十分」な人をサポートする仕組みです。
司法書士試験では、最も判断能力の衰えが軽い「補助」だからこその特殊なルール(本人の同意の要否など)や、成年後見人の規定が「保佐・補助にどこまで準用されているか」という細かいパズルが非常によく狙われます。
問題文
補助に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 ※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
ア 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
イ 補助開始の審判は、被補助人が特定の法律行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判又は被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判とともにしなければならない。
ウ 補助人は、遅滞なく被補助人の財産の調査に着手し、法定の期間内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。
エ 補助人の兄弟姉妹は、補助監督人となることができない。
オ 補助監督人と補助人との間で補助人の報酬の額を合意した場合には、家庭裁判所は、当該合意した額の報酬を補助人に付与しなければならない。
【選択肢】
1:ア
イ
2:ア
オ
3:イ
エ
4:ウ
エ
5:ウ
オ
ア:補助開始の審判における本人の同意
【問題文】
ア 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
【結論:正しい】
解説
「後見」「保佐」「補助」の3つの中で、一番本人の判断能力がしっかりしている(衰えが軽い)のがこの「補助」です。
本人はまだある程度自分でいろいろな判断ができる状態なので、まわりの親族などが「あの人に補助人をつけてサポートしてあげてください」と勝手に裁判所に申し立てて進めることは、本人のプライドや自己決定権を傷つけるおそれがあります。
そのため法律は、本人以外の人が請求して補助をスタートさせる場合には、絶対に「本人の同意」が必要であると定めています(民法15条2項)。
📌 比較で暗記:
- 後見・保佐:本人の判断能力がかなり落ちているため、スタートに本人の同意は不要。
- 補助:本人の判断能力がまだ比較的あるため、スタートに本人の同意が絶対に必要!
【参照条文:民法第15条2項】
本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
イ:補助開始の審判とセットで行う審判
【問題文】
イ 補助開始の審判は、被補助人が特定の法律行為をするには補助人の同意を得なければならない旨の審判又は被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判とともにしなければならない。
【結論:正しい】
解説
補助の審判は、「補助開始の審判」だけを単独でポツンと出すことはできません。
なぜなら、補助人は「後見人(すべての代わりにできる強力な権限)」や「保佐人(重要な契約へのストップ権(同意権)が法律上最初からついている)」とは違い、最初はなんの武器(権限)も持っていないスカスカの状態だからです。
そのため、補助人を付けるときは必ず、「この特定の契約(例:不動産の売買など)には補助人の同意を必要とします」という同意権の審判、または「この手続きは補助人が代わりにやれるようにします」という代理権の審判のどちらか一方(あるいは両方)をセット(ともに行う)で発令しなければならないルールになっています(民法15条3項)。
📌 暗記のポイント: 補助の審判は、「同意権」か「代理権」の審判と絶対にセットで申し込まないといけない!
【参照条文:民法第15条3項】
補助開始の審判は、第十七条第一項の審判(同意権付与)又は第八百七十六条の九第一項の審判(代理権付与)とともにしなければならない。
ウ:財産目録の作成義務の準用について
【問題文】
ウ 補助人は、遅滞なく被補助人の財産の調査に着手し、法定の期間内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。
【結論:誤り】
解説
司法書士試験が大好きな「準用(じゅんよう)の有無」を突く、ハイレベルな引っ掛け肢です。
成年後見人のルールでは、就職したらすぐに本人の財産をめちゃくちゃ細かく調べて「1か月以内」に財産目録を作らなければならない、という非常に厳しい義務(民法853条1項)があります。
しかし、このルールは「保佐人」や「補助人」には準用されていません。
保佐や補助の場合、本人はまだ自分で自分の財産を管理できる能力が残っています。
それなのに、サポート役の保佐人や補助人が、本人の通帳や家財をすべてひっくり返して「財産目録」をきっちり作成することまでは法律は求めていないのです。
📌 暗記のポイント: 「就職後すぐに財産目録を作る義務」があるのは成年後見人だけ! 保佐人・補助人にはこの義務はありません。
エ:補助監督人の欠格事由(なれない人)
【問題文】 エ 補助人の兄弟姉妹は、補助監督人となることができない。
【結論:正しい】
解説
補助監督人(ほじょかんとくにん)とは、補助人が悪いことをしたりサボったりしないように、後ろからチェック(監督)する立場の人です。
もし、補助人(サポートする人)がお兄ちゃんで、補助監督人(チェックする人)がその妹だったとしたらどうでしょう?
身内同士でなあなあになってしまい、しっかりしたチェックが期待できませんよね。
そのため法律は、後見・保佐・補助すべてにおいて、「後見人(保佐人・補助人)の配偶者、直系血族、および兄弟姉妹」は、監督人になることができないという欠格事由を定めています(民法876条の8、850条)。
📌 暗記のポイント: 監督役には身内贔屓(みうちびいき)が入らないよう、補助人の配偶者・親・子供・きょうだいは補助監督人になれない!
【参照条文:民法第850条(後見監督人の欠格事由・保佐補助に準用)】
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
オ:補助人の報酬の決定権
【問題文】
オ 補助監督人と補助人との間で補助人の報酬の額を合意した場合には、家庭裁判所は、当該合意した額の報酬を補助人に付与しなければならない。
【結論:誤り】
解説
これも実務上とても大切な、家庭裁判所の権限に関する問題です。
補助人がもらう報酬(お給料)の金額は、補助人と補助監督人が話し合って勝手に「今月は頑張ったから10万円ね!」などと合意して決めるものではありません。
補助人の報酬は、本人の財産の中から支払われるため、身内や関係者の合意で勝手に引き出せたら本人の財産が脅かされてしまいます。
そのため、報酬の金額を決めるのは、100%「家庭裁判所」の絶対的な権限となっています(民法876条の8、862条)。
家庭裁判所が、本人の持っている資産の多さや、補助人がどれだけ大変な仕事をしたか(資力その他の事情)を考慮して、職権で「いくら」と決定します。当事者の合意に裁判所が縛られることはありません。
📌 暗記のポイント: 成年後見・保佐・補助の「報酬」を決めるのは、当事者の合意ではなく、100%「家庭裁判所」!
【参照条文:民法第862条(後見人の報酬・保佐補助に準用)】
家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。
誤っている記述は ウ と オ なので、正解は 5 となります。
本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。
- まず、絶対に家庭裁判所が金額を握っているはずの オ(当事者の合意に家裁が縛られるわけがないのでバツ)
を見つける。 ⇒ この時点で、選択肢が ② か ⑤ に絞られます。
- あとは相方の ア(補助は本人の同意が必要でマル)か ウ(財産目録の作成義務は補助人に準用されていないのでバツ)をチェックする。
この2ステップを踏めば、自信を持って一瞬で 5 を選ぶことができます!
成年後見の分野は、「後見・保佐・補助の横並びの比較(同意が必要か等)」と、「後見人の重い義務が、保佐・補助にどこまで準用されているか(財産目録など)」の2つの軸をマスターすれば、確実に得点源にできるボーナスステージです。
しっかり区別して覚えておきましょう!

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