【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第21問:民法「扶養」の完全解説

2026年7月1日水曜日

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令和6年度(2024年度)司法書士試験、午前の部・第21問の解説です。

 

テーマは、親族法の最後に登場する「扶養」。

 

生活に困っている親族を助けなければならないという、法律上の義務に関するルールです。

 

司法書士試験における「扶養」は、出題頻度こそ低いものの、「何親等まで義務を負う可能性があるか」「家庭裁判所がどこまで介入できるか」「権利を処分できるか」という基本パターンが完全に決まっている、典型的な「出たらラッキー」な得点源単元です。

 

 

 

問題文

 

扶養に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。

 

ア 扶養権利者を扶養した扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の分担額について、扶養義務者の間で協議が調わなかったときは、家庭裁判所が当該分担額を審判で定める。

 

イ 扶養権利者と扶養義務者との間で扶養の程度又は方法について協議が調った後に、事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議の変更又は取消しをすることができる。

 

ウ 家庭裁判所は、特別の事情がある場合には、扶養を受けるべき者の父母の兄弟姉妹の子に扶養の義務を負わせることができる。

 

エ ある扶養権利者に対して扶養義務者が数人ある場合において、扶養義務者の間で扶養をすべき者の順序について協議が調ったときは、当該扶養権利者は、その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない。

 

オ 扶養権利者は、扶養義務者との間で扶養料の具体的な額について協議をする前に扶養を受ける権利を放棄することができる。

 

 

 

【選択肢】

 

 1:ア イ

 

 2:ア エ

 

 3:イ ウ

 

 4:ウ オ

 

 5:エ オ

 

 

 

ア:扶養義務者同士の求償(立て替え分の請求)について

 

【問題文】

 

ア 扶養権利者を扶養した扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の分担額について、扶養義務者の間で協議が調わなかったときは、家庭裁判所が当該分担額を審判で定める。

 

 

【結論:正しい】

 

 

状況イメージ

 

高齢で生活費に困っている親(扶養権利者)を助ける義務のある兄弟が2人(長男・次男)います。

 

本来は2人で分担すべきなのに、次男が音信不通だったため、長男が1人で毎月の生活費を全額仕送りしていました。

 

後日、長男が次男に対して「俺が立て替えた分の半分を払ってくれ!」と請求(求償)しましたが、次男は「そんなの知らん、払わない」と拒否。

 

話し合い(協議)がまとまらない場合、長男は家庭裁判所に持ち込んで、次男が支払うべき分担額をカチッと決めてもらえるでしょうか?

 

 

解説

 

判例(最大決昭40.6.30)の超重要知識です。

 

本来なら複数人で分担して支えるべき扶養義務を、誰か1人がひとまず全額立て替えて面倒を見た場合、その人は他の扶養義務者に対して「お前の分を返せ(求償)」と言うことができます。

 

このとき、「誰がいくら負担すべきだったか」の話し合い(協議)がまとまらない、あるいは話し合いができないときは、家庭裁判所がそれぞれの経済力などを考慮して、審判でその分担額を定めることができるとされています。実務上も非常に大切な救済措置です。

 

 

📌 暗記のポイント: 扶養を1人で立て替えた場合の「身内同士の精算(求償)」の揉め事は、家庭裁判所が審判で白黒つけてくれる!

 

 

 

イ:事情変更による扶養の変更・取消し

 

【問題文】

 

イ 扶養権利者と扶養義務者との間で扶養の程度又は方法について協議が調った後に、事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議の変更又は取消しをすることができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

状況イメージ

 

仕送りを必要とする親と、仕送りをする子供の間で、「毎月5万円を仕送りする」という約束(協議)を交わしました。

 

ところが数年後、子供が会社の倒産で失業してしまい、どうしても毎月5万円を払うことができなくなってしまいました。

 

このように「お互いの経済状況などの事情が変わった」とき、家庭裁判所に申し立てれば、昔交わした「毎月5万円」という約束を減額したり、取り消したりしてもらえるでしょうか?

 

 

解説

 

これは民法880条の条文そのものの知識です。

 

扶養は、人間の生活や経済状況に密接に関わっているため、最初に決めた約束が一生縛り続けるというのは現実的ではありません。

 

あげる側が貧乏になったり、もらう側が大金持ちになったりするなどの「事情の変更」があったときは、家庭裁判所は、いつでもその約束(協議や審判)の内容を変更したり、取り消したりすることができます。

 

 

📌 暗記のポイント: 生活の状況は変わるもの。「事情が変わった」なら、家庭裁判所が約束をいくらでもチェンジ・リセットできる!

 

 

【参照条文:民法第880条】

 

扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後に事情の変更があったときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

 

 

 

ウ:特別の事情による扶養義務の範囲(親等の計算)

 

【問題文】

 

ウ 家庭裁判所は、特別の事情がある場合には、扶養を受けるべき者の父母の兄弟姉妹の子に扶養の義務を負わせることができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

親族法で最も頻出といっても過言ではない、「親等の数え方」をターゲットにしたパズル問題です。

 

民法上、無条件で扶養の義務を負うのは「直系血族(親・子・祖父母など)」と「兄弟姉妹」だけです(民法8771項)。

 

ただし、「特別の事情」がある場合に限り、家庭裁判所は「3親等内の親族」まで扶養義務を広げて負わせることができます(同条2項)。

 

では、問題文にある「父母の兄弟姉妹の子」とは、自分から見て何親等にあたるでしょうか?

 

いわゆる「いとこ」のことですね。

 

親等をおさらいしてみましょう。

 

  • 自分 から 親(父母)へ = 1親等
  • 親 から 祖父母へ = 2親等
  • 祖父母 から 父母の兄弟姉妹(おじ・おば)へ = 3親等
  • おじ・おば から その子(いとこ)へ = 4親等

 

「いとこ(父母の兄弟姉妹の子)」は、4親等の親族です。

 

家庭裁判所がどれだけ「特別の事情がある!」と判断したとしても、法律の上限である「3親等内」を超えてしまっているため、いとこに扶養義務を負わせることは絶対にできません。

 

 

📌 暗記のポイント: 家裁が無理やり義務を負わせられるのは「3親等内」まで!4親等の「いとこ」は絶対にセーフ(義務なし)!

 

 

【参照条文:民法第8772項】

 

家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

 

 

 

エ:扶養義務者の順序に関する協議の拘束力

 

【問題文】

 

エ ある扶養権利者に対して扶養義務者が数人ある場合において、扶養義務者の間で扶養をすべき者の順序について協議が調ったときは、当該扶養権利者は、その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

少し応用的な判例(最判昭32.9.27)をベースにした引っ掛け問題です。

 

たとえば、生活に困っている親(扶養権利者)に対して、子供が長男・次男・三男と3人いるとします。

 

このとき、子供たち3人の間で「よし、まずは長男から仕送りをして、長男が無理になったら次男がやろう」という仕送りの順番(順序)の身内ルール(協議)を決めました。

 

しかし、この身内の約束は、あくまで子供たちの間で交わされたものです。

 

扶養される側である親は、この子供たちのローカルルールに強制的に縛られるわけではありません。

 

親としては、自分が一番頼みやすい次男や三男に対して直接「生活費を助けてほしい」と請求しても、法律上は何ら問題ありません。

 

 

「その協議により定められた順序に従って扶養の請求をしなければならない」とする本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: あげる側(義務者)が勝手に決めた順番は、もらう側(権利者)を縛らない!好きな人に請求してOK

 

 

 

オ:具体的な合意前の扶養請求権の放棄

 

【問題文】

 

オ 扶養権利者は、扶養義務者との間で扶養料の具体的な額について協議をする前に扶養を受ける権利を放棄することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

民法881条の「扶養請求権の処分の禁止」を真正面から問う基本問題です。

 

法律が認めている「扶養を受ける権利」というのは、人間が最低限生きていくための生存権を守るための、非常にデリケートで大切な権利です。

 

そのため民法は、「扶養を受ける権利は、処分することができない」と強力に禁止しています。

 

まだ具体的な金額を話し合う前の段階で、「私はもう扶養を受ける権利を一切放棄します!」などと先走って手放すことは、本人の生存を脅かすため認められません(放棄は無効となります)。

 

なお、話し合いや裁判によって「毎月10万円もらう」と具体的な『金銭債権』の形に変化した後のものであれば、その発生済みの10万円を免除(放棄)することは例外的に可能です。

 

 

📌 暗記のポイント: 生きるための権利だから、具体的な額が決まる前の「扶養を受ける権利そのものの放棄」は絶対に禁止!

 

 

【参照条文:民法第881条】

 

扶養を受ける権利は、処分することができない。

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

 

正しい記述は ア と イ なので、正解は 1 となります。

 

本試験会場での理想的な解き方ステップは以下の通りです。

 

  1. まず、親等計算の超大定番ひっかけである ウ(いとこは4親等なので、特別の事情があっても義務は負わないバツ) を見つける。この時点で、ウを含むが一気に消去されます。

 

  1. 次に、生きるための権利の基本である オ(具体的な額が決まる前の権利の放棄はできないバツ) を見つける。これでも消去されます。

 

残った選択肢は(ア・イ)か(ア・エ)ですが、ア と イ はどちらも極めて常識的・かつ条文通りの正しい記述ですので、迷うことなく自信を持って 1 を選ぶことができます!

 

親族法の「扶養」は、このように「親等数の計算(3親等内)」と「権利の処分禁止」のツートップを頭に入れておくだけで、現場でパパッと正解を導き出せる美味しい問題がほとんどです。

 

確実にマスターしておきましょう!

 

 

 

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