【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第34問:会社法「組織再編行為」の完全解説

2026年7月4日土曜日

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午前の部の第34問(会社法)の解説です。

 

組織再編(合併・分割・株式交換など)を解くときの最強の武器は、「その行為によって、会社の外にお金(財産)が出ていくか?」「誰の立場が激変するか?」という視点を持つことです。

 

この視点があれば、膨大な条文を暗記しなくても現場でパチッと正誤が判断できるようになります。

 

それでは問題文と選択肢のすべてを確認し、各肢をスッキリ解説していきます!

 

 


問題文

 

組織再編行為に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

 

ア 解散したことにより清算をする株式会社は、当該株式会社を吸収合併存続株式会社とする吸収合併をすることができない。

 

イ 吸収合併において、吸収合併存続株式会社は、吸収合併消滅株式会社の株主に対して、合併対価を交付しないこととすることができない。

 

ウ 新設合併契約を承認した新設合併消滅株式会社の株主総会の決議に瑕疵があることを理由とする新設合併の無効の訴えは、当該新設合併消滅株式会社を被告としなければならない。

 

エ 吸収分割において、吸収分割株式会社が株主総会の決議によって吸収分割契約の承認を受けなければならないときは、当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、当該吸収分割株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

 

オ 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対して交付する対価が金銭のみである場合には、当該株式交換完全親株式会社の債権者は、当該株式交換完全親株式会社に対し、当該株式交換について異議を述べることができない。

 

 

 

【選択肢】

 

 1:アイ

 

 2:アエ

 

 3:イウ

 

 4:ウオ

 

 5:エオ




ア:清算株式会社が「存続会社」になれない理由

 

【問題文】

 

ア 解散したことにより清算をする株式会社は、当該株式会社を吸収合併存続株式会社とする吸収合併をすることができない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

前問(第32問)でお話しした「お片付けモード」のルールがここでも大活躍します。

 

解散して清算中の会社は、文字通り「お店を畳んで、残務処理をして消滅する」ことだけが目的の会社です。 それなのに、他社を飲み込んで(吸収合併して)、「これからもっとビジネスを大きくして存続します!」なんてことは、清算の目的の範囲を完全にハみ出しているので絶対に認められません(会社法4741号)。

 

なお、自分が「消滅会社」となって他社に吸収してもらい、消えてなくなる形の合併であれば、お片付け(清算結了)に繋がるためOKです。

 

 

📌 暗記のポイント: 清算中の会社は消えゆく運命。他社を飲み込んで「存続会社」になるようなバイタリティは見せちゃダメ!

 

 

イ:グループ再編で大活躍の「無対価合併」

 

【問題文】

 

イ 吸収合併において、吸収合併存続株式会社は、吸収合併消滅株式会社の株主に対して、合併対価を交付しないこととすることができない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

実務でも非常によく使われる無対価(むたいか)再編のひっかけです。

 

合併をするときは、消滅する会社の株主に対して、存続会社の株や現金を「お代(対価)」として渡すのが原則です。

 

しかし、例えば「100%親会社が、100%子会社を吸収合併する」というケースを想像してみてください。

 

親会社はもともと子会社の株をすべて持っている親分です。

 

合併によって子会社が消滅したからといって、親会社が自分自身に向かって「はい、合併の対価として我が社の株をどうぞ」と渡すのは、右のポケットから左のポケットにモノを移すだけで、全く意味がありません(手続きの無駄です)。

 

そのため法律は、対価を一切交付しない「無対価合併」もバッチリ認めています。

 

 

📌 暗記のポイント: 身内(グループ)同士の合併なら、お代を払わない「無対価合併」も全然アリ!

 

 

 

ウ:新設合併無効の訴えの「被告」は誰?

 

【問題文】

 

ウ 新設合併契約を承認した新設合併消滅株式会社の株主総会の決議に瑕疵があることを理由とする新設合併の無効の訴えは、当該新設合併消滅株式会社を被告としなければならない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

訴訟法(裁判)の超・大前提を問う、冷静になれば絶対に引っかからない問題です。

 

「新設合併」が成立したということは、古い会社(消滅会社)は完全にこの世から消滅して、存在していません。

 

裁判を起こす(訴えを提起する)時点で、この世に存在しない幽霊のような会社を「被告(訴える相手)」にすることは物理的に不可能です。

 

そのため、新設合併の無効を訴えたいときは、合併によって新しく生まれた「新設合併設立株式会社」を被告にする必要があります(会社法82821号)。

 

 

📌 暗記のポイント: 死んだ人(消滅した会社)は訴えられない! 裁判の相手は、新しく生まれた生き残り(新設会社)にするべし。

 

 

 

エ:議決権のない株主にも認められる「最後の抵抗」

 

【問題文】

 

エ 吸収分割において、吸収分割株式会社が株主総会の決議によって吸収分割契約の承認を受けなければならないときは、当該株主総会において議決権を行使することができない株主は、当該吸収分割株式会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

会社の事業を切り取って他社に渡してしまう「吸収分割」は、会社にとって大事件です。

 

当然、株主にとっても自分の投資した会社の姿がガラリと変わるわけですから、「そんな再編をするなら、俺はもう降りる!株を買い取ってくれ!」と言いたくなりますよね(反対株主の株式買取請求権)。

 

ここでポイントになるのが、「議決権のない株主」です。

 

彼らは普段の総会で「反対!」と投票する権利すら持っていません。

 

会社の大激変に対して、自分の意見を反映させるチャンスがゼロなのです。

 

だからこそ法律は、「せめて会社から脱出する権利(株を買い取ってもらう権利)だけは、議決権のない株主にも平等にあげよう」と定めています(会社法7851項)。

 

 

📌 暗記のポイント: 組織再編という大事件では、投票権を持たない「議決権なき株主」にも、株の買取請求権(脱出ボタン)がちゃんと用意されている!

 

 

 

オ:金銭対価の株式交換と「債権者保護」

 

【問題文】

 

オ 株式交換完全親株式会社が株式交換に際して株式交換完全子会社の株主に対して交付する対価が金銭のみである場合には、当該株式交換完全親株式会社の債権者は、当該株式交換完全親株式会社に対し、当該株式交換について異議を述べることができない。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

これこそが、最初に申し上げた「会社の外にお金が出ていくか?」という視点一発で切れる論点です。

 

株式交換というのは、親会社が子会社の株を買い取って100%子会社化する手続きです。

 

このとき、親会社が子会社の株主に対して「自社の株」を渡すのであれば、親会社の財布から現金は出ていきません。

 

親会社の債権者(お金を貸している人)も安心です。

 

しかし、今回の問題では、親会社は子会社の株主に対して「金銭のみ(キャッシュ)」を支払っています。

 

これは、親会社の金庫から大量の現金が外へ流出することを意味します。

 

親会社の財布が軽くなれば、お金を貸している債権者にとっては「俺たちへの返済は大丈夫か!?」と大ピンチになり得ます。

 

そのため、親会社の債権者は「ちょっと待て!」と異議を述べる権利(債権者保護手続き)が絶対に必要になります(会社法79913号)。

 

 

📌 暗記のポイント: 親会社が「株」ではなく「現金」をバラまく株式交換なら、親会社の債権者は黙っていられない(異議を述べることができる)!

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

正しい記述は ア と エ なので、正解は 2 となります。

 

現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。

 

  1. ア(清算会社は存続会社になれない超基本・マル)

 

  1. ウ(消滅した会社は被告にできない常識的にバツ)

 

  1. オ(現金が流出するなら債権者は黙ってないバツ)

 

 

この3つのどれか2つに気づければ、難解に見える組織再編の問題も、一瞬で選択肢を 2 にロックオンすることができます。

 

 

 

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