【令和6年度 司法書士試験】午前の部 第35問:商法「商行為」の完全解説

2026年7月4日土曜日

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いよいよ午前の部のラスト、第35問の解説です!

 

テーマは「商行為(しょうこうい)」。 商法は民法の特則(特別ルール)です。

 

ベースにある民法の知識と比較しながら、「なぜビジネスの世界(商法)では、民法と違うルールにする必要があるのか?」という視点を持つと、驚くほどスッキリ頭に入ります。

 

本試験の午前の部を締めくくるこの問題、定番の重要論点とちょっと細かい条文が混ざっていますが、現場でスパッと切り落とすテクニックと一緒に確認していきましょう!

 

 

 

問題文

 

商行為に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

 

ア 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅する。

 

イ 商人間の売買において、当該売買の目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合において、その不適合を直ちに発見することができないときであって、買主が当該目的物の受領後6か月以内に当該不適合を発見したときは、買主は,売主に対してその旨の通知を発することを怠ったときであっても、売主に対し、当該不適合を理由とする損害賠償の請求をすることができる。

 

ウ 匿名組合員の出資は、匿名組合員全員の共有に属する。

 

エ 商法上の仲立人は、媒介した商行為について、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行をする責任を負う。

 

オ 問屋は、取引所の相場がある物品の販売の委託を受けたときは、自ら買主となることができる。

 

 

 

【選択肢】

 

 1:ア ウ

 

 2:ア エ

 

 3:イ エ

 

 4:イ オ

 

 5:ウ オ

 

 

 

ア:商行為の「代理権」と本人の死亡

 

【問題文】 ア 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅する。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

民法と商法のルールが真逆になる、超・超頻出の対比論点です。

 

  • 民法の原則: 個人の信頼関係がベースなので、本人が死亡したら代理権は消滅します(民法11111号)。

 

  • 商法の特則(ビジネスのルール): 商売は、本人が亡くなったからといって、進行中の取引やお店の営業を急にストップさせるわけにはいきません。ビジネスの継続性と取引の安全を守るため、商行為の代理権は本人が死亡しても消滅しません(商法506条)。

 

記述は「消滅する」としているため、誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: ビジネスの代理権は、社長(本人)が死んでも不滅!(取引を止めないため)

 

 

イ:商人間の売買における「契約不適合責任」と通知

 

【問題文】

 

イ 商人間の売買において、当該売買の目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合において、その不適合を直ちに発見することができないときであって、買主が当該目的物の受領後6か月以内に当該不適合を発見したときは、買主は、売主に対してその旨の通知を発することを怠ったときであっても、売主に対し、当該不適合を理由とする損害賠償の請求をすることができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

商人同士のシビアな取引(売買)に関するルールです。

 

商人間の売買では、買った側(買主)は商品が届いたらすぐに検査して、不具合(契約不適合)を見つけたら「直ちに売主に通知」しなければ、後から文句(損害賠償請求など)を言えなくなります(商法5261項、2項前段)。

 

すぐには分からない隠れた欠陥であっても、「6か月以内」に見つけて、かつ「直ちに通知」しなければアウトです(同条2項後段)。

 

 

ただし、「売主が最初から不具合を知っていた(悪意)」というケースでは、そんな悪い売主をわざわざ守る必要はありません。

 

そのため、この「6か月以内」という期間制限のルール自体が一切適用されなくなります(=6か月を過ぎても請求できる)。

 

「じゃあこの記述は正しいのでは?」と思うかもしれませんが、罠は後半です。

 

売主が悪意の場合、期間制限(6か月)はなくなりますが、民法の一般原則に戻るため、買主は「不適合を知った時から1年以内」に通知を発しなければならない(民法566条)というルールに服します。

 

いずれにせよ、買主が「通知を発することを怠った(通知しなかった)」のであれば、売主に対して損害賠償請求をすることはできません。

 

売主が悪意だからといって、通知を完全にサボっていいわけではないのです。したがって、本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 売主が悪意なら商法の「6か月ルール」は外れる。でも、「通知を全くしなくていい(サボっていい)」というわけじゃない!

 

 

ウ:匿名組合の「出資」は誰のもの?

 

【問題文】

 

ウ 匿名組合員の出資は、匿名組合員全員の共有に属する。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

「匿名組合(とくめいくみあい)」の定義そのものを問う基本問題です。

 

匿名組合とは、お金を出す人(匿名組合員)が、実際にビジネスを動かす人(営業者)の口座にお金を振り込み、利益が出たら分配してもらうという契約です。

 

このとき、出資されたお金や財産は、組合員みんなの共有物(プールされた財産)になるわけではありません。

 

一回すべて「営業者個人の財産」になります(商法5361項)。

 

だからこそ、お金を出した人は表舞台に名前が出ない「匿名」の組合員でいられるのです。

 

 

📌 暗記のポイント: 匿名組合員の出資は、すべて「営業者のハラ」に入る(営業者の財産になる)! 共有になるのは、民法上の普通の組合(サークルなど)の話。

 

 

 

エ:仲立人の「氏名・名称の不開示」と履行責任

 

【問題文】

 

エ 商法上の仲立人は、媒介した商行為について、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行をする責任を負う。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

仲立人(なかだちにん)とは、売り手と買い手の間に立って取引を仲介する、いわばブローカーです。

 

仲立人はあくまで「間を取り持つだけ」の人なので、基本的には取引の中身(代金の支払いなど)について自分で責任を負うことはありません。

 

しかし、仲立人があえて「相手の名前は秘密です」と伏せて取引をまとめることがあります(介入義務/商法548条)。

 

この場合、名前を教えてもらえなかった側からすると「相手が誰だか分からないままだと、怖くて取引できない(もしお金を払ってくれなかったらどうするんだ!)」となりますよね。

 

そこで商法は、「名前を隠したんだから、もし相手がズラかったら仲立人であるお前が代わりに責任を持てよ」という強力な連帯責任(履行責任)を仲立人に負わせています。

 

記述の通り、正しい内容です。

 

 

📌 暗記のポイント: 仲立人が「相手の名前はナイショ」にしたなら、万が一のときは自分が身代わり(履行責任)になれ!

 

 

 

オ:問屋の「介入権」(自ら売買の当事者になる権利)

 

【問題文】

 

オ 問屋は、取引所の相場がある物品の販売の委託を受けたときは、自ら買主となることができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

問屋(といや)とは、人から頼まれて、自分の名前で誰かと取引をするビジネス(委託販売など)のことです。

 

例えば、顧客から「このお米を市場で売ってきて」と頼まれたとします。

 

もし、そのお米に「取引所の明確な相場(客観的な価格)」が決まっている場合、問屋がわざわざ他の買い手を探しに行かなくても、「じゃあ、その相場価格で俺が直接買い取るよ」としてしまっても、頼んだ顧客には1円も損は発生しませんよね。

 

このように、客観的な価格(相場)がある物品については、問屋が自分で売主や買主のポジションにすっぽり収まることが認められています。

 

これを問屋の介入権(かいにゅうけん)と呼びます(商法5551項)。

 

記述の通り、正しい内容です。

 

 

📌 暗記のポイント: バッチリ相場が決まっているモノなら、問屋が自分で直接買い取っちゃってもOK!(誰も損しないから)

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

 

誤っている記述は ア と ウ(およびイ)なので、正解は 1 となります。

 

現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。

 

  1. 民法との超定番比較である ア(本人が死んでも商法の代理権は消えない記述はバツ) を見つける。この時点で、アを含むに絞られます。

 

  1. あとは相方の ウ(匿名組合の出資は営業者のもの共有とする記述はバツ)か エ(名前を隠したら仲立人が責任を負う正しい)をチェックする。

 

これで、非常に文章が長くて判断に迷いやすい 「イ(契約不適合)」の迷宮に一切足を踏み入れることなく、安全かつ最速で 1 にたどり着くことができます!

 

これにて午前の部(全35問)がすべて終了です!本当にお疲れ様でした。 ここまでの会社法・商法の知識は、午後の部の「商業登記法」の記述式(申請書作成)において、そのまま「添付書面」や「登記できる・できない」を判断する血肉となります。

 

ひと息ついたら、さらに得点源になる午後の部(民事訴訟法・不動産登記法・商業登記法など)へも一緒に突き進んでいきましょう!

 

 

 

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