【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第7問:民法「物権的請求権」の完全解説

2026年9月13日日曜日

令和7年度【民法】

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【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第7問:民法「物権的請求権」の完全解説

午前の部・第7問(民法)の解説です!

今回のテーマは物権編の最重要分野の一つである「物権的請求権(返還・妨害排除・妨害予防)」です。

建物収去土地明渡請求の相手方(自称所有者・登記名義人・賃借人)、共有者による単独行使(保存行為)、盗難車両の所有者に対する妨害排除請求、地役権に基づく明渡請求の可否など、判例の超超重要論点がずらりと並んでいます。

本問は「正しいものの組合せ」を問う問題です。各肢の〇×判定を正確に行い、確実に得点へ繋げましょう。

それでは、解説に入ります!

■ 問題文

物権的請求権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、選択肢のうち、どれか。

Aが所有する甲土地上にBが権原なく乙建物を新築し、乙建物について所有権の保存の登記がされた場合において、BがCに乙建物を売却したが、その旨の登記がされていないときは、Bは、Aに対し、乙建物の所有権の喪失を主張して、乙建物の収去及び甲土地の明渡しの義務を免れることはできない。

Aが所有する甲土地上にBが権原なく乙建物を新築し、Cに乙建物を賃貸したときは、Aは、Cに対し、乙建物の収去を請求することができる。

AとBが各2分の1の持分の割合で共有する甲土地上にCが権原なく乙建物を新築したときは、Aは、単独で、Cに対し、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

AがBの所有する自動車を盗んでCが所有する甲土地上に権原なく放置しているときは、Cは、Bに対し、当該自動車の撤去を請求することはできない。

Aが所有する甲土地にBのために通行地役権が設定されている場合において、Cが甲土地を権原なく占有してBの通行を妨害しているときは、Bは、Cに対し、地役権に基づいて甲土地の明渡しを請求することができる。

【選択肢】

1:ア イ
2:ア ウ
3:イ エ
4:ウ オ
5:エ オ

■ ア:未登記譲渡と登記名義人の建物収去義務

【記述ア】 Aが所有する甲土地上にBが権原なく乙建物を新築し、乙建物について所有権の保存の登記がされた場合において、BがCに乙建物を売却したが、その旨の登記がされていないときは、Bは、Aに対し、乙建物の所有権の喪失を主張して、乙建物の収去及び甲土地の明渡しの義務を免れることはできない。

【結論:正しい(マル)】

【解説】

他人の土地上に無権原で建物を新築した者が、その建物について自己名義の所有権保存登記をした後、建物を第三者に譲渡したが名義変更登記をしていない場合、土地所有者からの建物収去・土地明渡請求に対し、自らの意思で登記をした前所有者Bは「所有権を失った」と主張して義務を免れることはできません(最判平6.2.8)。

土地所有者Aとしては、登記簿上の所有者であるBを相手方として責任を追及できるため、本記述は正しい(〇)です。

📌 暗記のポイント: 自ら登記した建物建築者は、第三者に売っても登記名義が残る限り土地所有者からの収去請求を拒めない!

■ イ:建物賃借人に対する建物収去請求の可否

【記述イ】 Aが所有する甲土地上にBが権原なく乙建物を新築し、Cに乙建物を賃貸したときは、Aは、Cに対し、乙建物の収去を請求することができる。

【結論:誤り(バツ)】

【解説】

建物収去請求権は、建物を解体・取り壊す処分の権限を有する者(通常は建物所有者)に対してのみ行使できます。

建物の借主である賃借人Cは、建物を壊す法律上・事実上の処分権限を持っていません。そのため、土地所有者Aは賃借人Cに対して「退去」を請求することはできても、「建物収去」を請求することはできません(最判昭35.6.17)。

したがって、「収去を請求することができる」とする本記述は誤り(×)です。

📌 暗記のポイント: 建物所有者には「収去・明渡し」、建物賃借人には「退去(退去請求のみ)」!

■ ウ:共有者による不法占有者への妨害排除・返還請求

【記述ウ】 AとBが各2分の1の持分の割合で共有する甲土地上にCが権原なく乙建物を新築したときは、Aは、単独で、Cに対し、乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

【結論:正しい(マル)】

【解説】

第三者が共有地を無権原で不法占有(建物を新築)している場合、その排除や明渡しを求める行為は共有物の状態を維持する「保存行為(民法252条5項)」に該当します。

保存行為は各共有者が単独で行うことができるため、持分2分の1の共有者Aは単独で不法占有者Cに対し、建物収去および土地明渡しを請求できます(最判昭32.2.22等)。

したがって、本記述は正しい(〇)です。

📌 暗記のポイント: 不法占有者に対する建物収去・明渡請求は「保存行為」=共有者単独で行使可能!

■ エ:盗難物の所有者に対する妨害排除請求

【記述エ】 AがBの所有する自動車を盗んでCが所有する甲土地上に権原なく放置しているときは、Cは、Bに対し、当該自動車の撤去を請求することはできない。

【結論:誤り(バツ)】

【解説】

土地所有者が、自己の土地上にある他人の所有物によって土地利用を妨害されている場合、物権的妨害排除請求権を行使できます。

この請求の相手方は「現在その物を所有し、法律上の支配・帰属関係を有している者」です。例えその物が盗用(盗難)されて勝手に放置されたものであっても、所有者である限りBは撤去の相手方となります(所有権の客体的支配状態)。

したがって、土地所有者Cは所有者Bに対して自動車の撤去を請求できるため、「請求することはできない」とする本記述は誤り(×)です。

📌 暗記のポイント: 盗難等で不法放置された物であっても、その「所有者」に対して物権的妨害排除(撤去)請求ができる!

■ オ:地役権に基づく明渡(返還)請求の可否

【記述オ】 Aが所有する甲土地にBのために通行地役権が設定されている場合において、Cが甲土地を権原なく占有してBの通行を妨害しているときは、Bは、Cに対し、地役権に基づいて甲土地の明渡しを請求することができる。

【結論:誤り(バツ)】

【解説】

地役権は、承役地を「非占有的に利用する(占有を伴わない)」物権です。

返還請求権(明渡請求権)は「自らに占有を移せ」と求める権利であるため、もともと占有権能を持たない地役権者Bには、物権的返還請求権(明渡請求権)は認められません。

不法占有者Cに対して通行妨害を取り除かせる**「物権的妨害排除請求権(妨害除去請求)」**を行使することはできますが、「明渡し」まで請求することはできません。したがって、本記述は誤り(×)です。

📌 超重要比較: 非占有の物権(地役権・抵当権)には「物権的返還請求権(明渡請求)」は原則として認められない!認められるのは「妨害排除・妨害予防」のみ!

■ まとめ

🏁 正解の組み合わせ

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

・ア:正しい(登記名義人は未登記譲渡を理由に収去義務を免れない)
・イ:誤り(建物賃借人に求められるのは「退去」であり「収去」ではない)
・ウ:正しい(不法占有者への収去・明渡請求は共有者の保存行為として単独行使可)
・エ:誤り(盗難車であっても所有者に対して撤去請求できる)
・オ:誤り(非占有の地役権者に物権的返還(明渡)請求権はない)

正しい記述は なので、正解は 2(ア ウ) となります。

💡 解法テクニック

  1. 判例知識として超有名な ア(登記名義人は責任を免れない⇒正しい) を確定します。これで選択肢は 1(アイ) または 2(アウ) に絞られます。
  2. 次に を比較します。
  3. 建物賃借人には処分権限がないため イ(賃借人に収去請求できる⇒誤り) を見抜くか、共有の保存行為である ウ(単独で請求可能⇒正しい) を判断すれば、確実に 2(ア ウ) に到達できます!


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