【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第5問:民法「意思表示の効力発生・公示」の完全解説
午前の部・第5問(民法)の解説です!
今回のテーマは「意思表示の効力発生時期(到達主義)」および「公示による意思表示」に関する基本~重要知識です。
到達の意義、発信後の事情変更(意思能力喪失等)、契約の成立時期(2020年民法改正点)、公示による意思表示の要件や申立管轄など、総則分野の必須論点が網羅されています。
本問は「正しいものの組合せ」を問う問題です。各肢の〇×判定を確実に行い、正解を導き出しましょう。それでは、解説に入ります!
■ 問題文
意思表示に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、選択肢のうち、どれか。
ア 意思表示の通知が相手方に到達したというためには、その通知が相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りる。
イ 契約を解除する旨の意思表示は、その通知の発信から相手方への到達までの間に表意者が意思能力を喪失したときは、その効力を生じない。
ウ 隔地者間の契約は、承諾の通知が申込者に到達したときは、承諾の通知を発した時に遡って成立する。
エ 公示による意思表示は、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失がないときは、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる。
オ 公示による意思表示の公示に関する手続は、表意者の住所地の登記所の管轄に属する。
【選択肢】
1:ア ウ
2:ア エ
3:イ エ
4:イ オ
5:ウ オ
■ ア:到達主義と「到達」の概念
【記述ア】 意思表示の通知が相手方に到達したというためには、その通知が相手方の了知可能な状態に置かれることをもって足りる。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
意思表示の効力発生時期について、民法は「到達主義(97条1項)」を採用しています。
判例上、意思表示が「到達した」というためには、相手方が実際にその通知の内容を読み知ったこと(現実の了知)までは必要とされず、相手方が了知可能な状態に置かれたこと(受領可能な状態)で足ります(大判大5.3.15等)。
例えば、相手方の郵便受けに手紙が投入された段階で「了知可能な状態」となり到達が認められます。したがって、本記述は正しい(〇)です。
■ イ:発信後の意思能力喪失
【記述イ】 契約を解除する旨の意思表示は、その通知の発信から相手方への到達までの間に表意者が意思能力を喪失したときは、その効力を生じない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
民法97条3項は、「意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」と規定しています。
通知を発信した時点で表意者の意思は固定されているため、その後に表意者が意思能力を喪失したとしても、相手方に到達すれば有効に効力を生じます。
したがって、「その効力を生じない」とする本記述は誤り(×)です。
■ ウ:契約の成立時期(改正民法)
【記述ウ】 隔地者間の契約は、承諾の通知が申込者に到達したときは、承諾の通知を発した時に遡って成立する。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
2020年(令和2年)施行の改正民法により、隔地者間の契約の成立時期に関する発信主義の特則(旧526条1項)は廃止されました。
現行民法522条1項において、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定されており、総則の原則(97条1項)どおり「承諾の通知が到達した時」に契約が成立します(発信時に遡ることはありません)。
したがって、本記述は誤り(×)です。
■ エ:公示による意思表示の要件と効果
【記述エ】 公示による意思表示は、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失がないときは、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
民法98条1項・3項は、相手方が不明な場合や相手方の所在が不明な場合に利用できる「公示による意思表示」について定めています。
表意者が相手方を知らないこと、または相手方の所在を知らないことについて無過失(過失がないこと)である場合、裁判所の掲示板への掲示・官報掲載等から2週間を経過した時に到達の効力が生じます(同条3項)。
したがって、本記述は正しい(〇)です。
■ オ:公示による意思表示の手続管轄
【記述オ】 公示による意思表示の公示に関する手続は、表意者の住所地の登記所の管轄に属する。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
民法98条2項は「前項の公示は、裁判所の掲示場に掲示し(中略)行う」と定めています。
さらに具体的手続を定める非訟事件手続法98条1項によると、公示による意思表示の許可事件は、裁判所(相手方不明の場合は「表意者の住所地の簡易裁判所」、相手方所在不明の場合は「相手方の最後の住所地の簡易裁判所」)の管轄に属します。
「登記所の管轄」とする本記述は誤り(×)です。
■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:正しい(到達は了知可能状態の創出で足りる)
・イ:誤り(発信後の意思能力喪失でも効力は妨げられない)
・ウ:誤り(隔地者間も到達主義。発信時に遡らない)
・エ:正しい(無過失+掲載・掲示開始から2週間経過で到達擬制)
・オ:誤り(管轄は簡易裁判所であり、登記所ではない)
正しい記述は ア と エ なので、正解は 2(ア エ) となります。
💡 解法テクニック
- 基本原則である ア(了知可能な状態=到達⇒正しい) を即座に判断します。この時点で選択肢は 1(アウ) または 2(アエ) に絞れます。
- 次に ウ と エ を比較します。民法改正で到達主義に一元化された ウ(発信時に遡る⇒誤り) を見抜けば、迷わず 2(ア エ) を選ぶことができます!
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