【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第8問:民法「不動産の物権変動」の完全解説
午前の部・第8問(民法)の解説です!
今回のテーマは物権編の最頻出論点である「不動産の物権変動(対抗要件・第三者)」です。
解除前の第三者と登記、共同相続と登記、相続放棄の対効力、背信的悪意者からの転得者、時効完成後の第三者(抵当権設定)と再時効取得など、判例の超重要論点が目白押しとなっています。
本問は「正しいものの組合せ」を問う問題です。各肢の理由付けを正確に理解して得点源にしましょう。
それでは、解説に入ります!
■ 問題文
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、選択肢のうち、どれか。
ア A所有の甲土地がAからBへ、BからCへと順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合には、Cは、BからCへの所有権移転登記がされていないときであっても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
イ A及びBが甲土地を共同相続した場合において、Bが、甲土地について単独で相続した旨の登記をした上で甲土地をCに売却し、その旨の登記がされたときは、Aは、Cに対し、当該登記の全部抹消登記手続をすることを請求することができる。
ウ 甲土地を所有するAが死亡し、Aの子B及びCのうちBが相続の放棄をしてCがAの唯一の相続人となった場合には、Bの債権者Dが甲土地をBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえたときであっても、Cは、Dに対し、甲土地の単独所有権の取得を主張することができる。
エ A所有の甲土地をAがBに売却したが、その旨の登記がされていないことを奇貨として、CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け、その旨の登記がされた場合には、その後、Cが事情を知らないDに甲土地を売却し、その旨の登記がされたときであっても、Bは、Dに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。【選択肢】
1:ア イ
2:ア エ
3:イ オ
4:ウ エ
5:ウ オ
■ ア:契約解除と解除前の第三者の対抗要件(要登記)
【記述ア】 A所有の甲土地がAからBへ、BからCへと順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合には、Cは、BからCへの所有権移転登記がされていないときであっても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
契約が解除(合意解除を含む)された場合、解除前に利害関係を有するに至った第三者は保護されます(民法545条1項但書)。判例上、この第三者として保護されるためには自らの権利保護要件として登記を備えること(対抗要件)が必要とされています(最判昭33.6.14)。
本肢のCはBから買い受けているものの、自らへの所有権移転登記を備えていません。そのため解除により所有権を取り戻したAに対して自らの所有権取得を主張することはできません。
したがって、「主張することができる」とする本記述は誤り(×)です。
■ イ:共同相続と無権利者の登記の抹消範囲
【記述イ】 A及びBが甲土地を共同相続した場合において、Bが、甲土地について単独で相続した旨の登記をした上で甲土地をCに売却し、その旨の登記がされたときは、Aは、Cに対し、当該登記の全部抹消登記手続をすることを請求することができる。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
共同相続人の1人(B)が勝手に単独相続の登記をして第三者(C)に譲渡した場合、Bの実体的な持分範囲内については無権限処分ではなく有効な処分となります。
したがって、他の共同相続人Aが不法に害されたのは「自己の持分」についてのみであり、Cの登記のうちAの持分を超える部分(Aの持分部分)についてのみ抹消(又は持分移転登記)を請求できるに過ぎません(最判昭38.2.22)。
「登記の全部抹消登記手続を請求することができる」とする本記述は誤り(×)です。
■ ウ:相続放棄の効力と第三者(登記不要)
【記述ウ】 甲土地を所有するAが死亡し、Aの子B及びCのうちBが相続の放棄をしてCがAの唯一の相続人となった場合には、Bの債権者Dが甲土地をBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえたときであっても、Cは、Dに対し、甲土地の単独所有権の取得を主張することができる。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。この効果は絶対的であり、登記がなくても第三者に対抗できます。
したがって、相続放棄者Bの債権者Dが共同相続の登記をして持分を差し押さえたとしても、単独相続人となったCは登記なくしてDに対し単独所有権を対抗(主張)できます(最判昭42.1.20)。
したがって、本記述は正しい(〇)です。
■ エ:背信的悪意者からの転得者と第一買主
【記述エ】 A所有の甲土地をAがBに売却したが、その旨の登記がされていないことを奇貨として、CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け、その旨の登記がされた場合には、その後、Cが事情を知らないDに甲土地を売却し、その旨の登記がされたときであっても、Bは、Dに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
第一買主Bを害する目的で買い受けた二重買主Cは「背信的悪意者」にあたり、Bに対して登記の欠缺を主張する正当な利益を欠きます(民法177条の「第三者」に当たらない)。
しかし、背信的悪意者Cからさらに買い受けた転得者D自身が善意(事実に付き善意・無過失等)である場合、Dは民法177条の「第三者」に該当します(最判平8.10.29)。D自身がBに対する背信的悪意者でない限り、未登記のBは登記を備えたDに対して所有権を対抗できません。
したがって、「BはDに対し所有権の取得を主張することができる」とする本記述は誤り(×)です。
■ オ:時効完成後の抵当権設定と再度の時効取得
【記述オ】 AがB所有の甲土地を占有し、取得時効が完成した後、その旨の登記がされない間に、CがBから甲土地について抵当権の設定を受け、その旨の登記がされた場合において、Aがその後引き続き時効取得に必要な期間甲土地の占有を継続したときは、Aが当該抵当権の存在を容認していたなどの特段の事情がない限り、Aは、甲土地の取得時効を援用し、Cに対し、当該抵当権の消滅を主張することができる。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
取得時効が完成(第1の時効)した後に抵当権(C)が設定された場合、時効取得者Aは登記がなければ抵当権者Cに対抗できません(負担つき所有権を取得する)。
しかし、抵当権設定後さらに新たに時効取得に必要な期間(10年または20年)占有を継続した場合(第2の時効)、Aは抵当権の負担のない完全な所有権を時効取得し、抵当権者Cに対して抵当権の消滅を主張できます(最判平24.3.16)。
したがって、本記述は正しい(〇)です。
■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:誤り(解除前の第三者として対抗するには自らの登記が必要)
・イ:誤り(他人の持分侵害の範囲でのみ抹消請求できる)
・ウ:正しい(相続放棄の効果は絶対。登記なくして対抗可能)
・エ:誤り(背信的悪意者からの善意の転得者には未登記で対抗不可)
・オ:正しい(抵当権設定後に再度時効期間占有すれば抵当権は消滅)
正しい記述は ウ と オ なので、正解は 5(ウ オ) となります。
💡 解法テクニック
- 基本中の基本である ウ(相続放棄は登記なく対抗可⇒正しい) を確定します。この時点で選択肢は 4(ウエ) または 5(ウオ) に絞れます。
- 次に エ と オ を吟味します。
- 判例で超有名な オ(抵当権設定後に再度時効完成で抵当権消滅⇒正しい) または エ(背信的悪意者からの善意転得者⇒誤り) を見抜けば、確実に 5(ウ オ) へ到達できます!
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