【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第13問:不動産登記法「申請人(単独か共同か)」の完全解説

2026年7月28日火曜日

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午後の部の第13問(不動産登記法)の解説です。

 

テーマは登記の「申請人」。 つまり、「その登記は1人(単独)で申請できるか、それとも2人(共同)で申請しなければならないか」を問う問題です。

 

不動産登記は「ウソの登記」が紛れ込むのを防ぐため、得をする人(登記権利者)と損をする人(登記義務者)がガッチリ手を組んで申請する「共同申請」が大大大原則です。

 

単独で申請できるのは、法律が「例外的に1人でやっていいよ」と特別に認めたケースだけ。

 

令和5年の最新法改正を逆手にとった超一級品の「ひっかけ選択肢」も含まれているため、条文の細部まで正確にチェックしながらスッキリわかりやすく解説していきます!

 

 

問題文

 

登記の申請人に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 なお、判決による登記及び代位による登記については考慮しないものとする。

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地に、Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされており、当該抵当権の設定の登記についてBが死亡した時に抵当権は消滅するとの定めの登記がされている場合において、その後、Bが死亡し、当該抵当権が消滅したときは、Aは、単独で、当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。

 

Aを根抵当権者とする元本確定前の根抵当権の債務者Bが破産手続開始の決定を受けた場合において、Cが当該根抵当権の被担保債権を代位弁済したときは、C,単独で、当該根抵当権の移転の登記の申請と併せて当該根抵当権の元本の確定の登記を申請することができる。

 

Aを登記名義人とする地上権の設定の登記がされている甲土地について、Aが当該地上権をAの相続人であるBに遺贈する旨の遺言書を作成した場合において、その後、Aが死亡したときは、Bは、単独で、遺贈を登記原因とするAからBへの地上権の移転の登記を申請することができる。

 

Aを委託者とし、B及びCを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Bが受託者を辞任し、その任務が終了した場合には、Cは、単独で、Bの任務の終了による権利の変更の登記を申請することができる。

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、売買を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記手続を行う旨の公正証書が作成された場合には、Bは、当該公正証書を添付情報として提供したとしても、単独で、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を申請することはできない。

 

 

 

【選択肢】

 

 1:アイ

 

 2:アオ

 

 3:イウ

 

 4:ウエ

 

 5:エオ

 

 

 

ア:権利の消滅に関する定めの登記がある場合の抹消

 

【問題文】

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地に、Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされており、当該抵当権の設定の登記についてBが死亡した時に抵当権は消滅するとの定めの登記がされている場合において、その後、Bが死亡し、当該抵当権が消滅したときは、Aは、単独で、当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

あらかじめ「この人が死んだら、この権利は終わりにします」という特約を登記簿に載せておくことができます(権利の消滅に関する定めの登記)。

 

実際にBさんが亡くなったとき、抵当権が消滅したことは「Bさんの死亡」という客観的な事実(戸籍謄本など)だけで100%確定します。

 

ウソが紛れ込む余地がありませんし、すでに亡くなっているBさんと共同申請をするのも物理的に不可能です。そのため法律は、「権利の消滅の定め」が登記されている場合は、登記権利者(この場合は土地オーナーのAさん)が単独で抹消申請してよいと定めています(不動産登記法69条)。

 

 

📌 暗記のポイント:「死んだら消滅」の約束が登記されていれば、本当に死んだあとは1人(単独)でサクッと抹消してOK

 

 

 

イ:代位弁済による根抵当権移転と元本確定の登記

 

【問題文】

 

Aを根抵当権者とする元本確定前の根抵当権の債務者Bが破産手続開始の決定を受けた場合において、Cが当該根抵当権の被担保債権を代位弁済したときは、Cは、単独で、当該根抵当権の移転の登記の申請と併せて当該根抵当権の元本の確定の登記を申請することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

記述式でも合否を分ける超重要論点です。

 

まず、債務者Bが破産したことで、この根抵当権の元本は「法律上当然に確定」します。

 

元本が確定したことを原因とする「元本確定の登記」は、根抵当権者(または設定者)が単独で申請できるという特例があります(不動産登記法93条)。

 

しかし、後半の「代位弁済による根抵当権移転の登記」は、大原則通り「共同申請」で行う必要があります(弁済したC=権利者、元の根抵当権者A=義務者)。

 

したがって、Cが「単独で移転登記と確定登記を併せて申請する」ということはできません。

 

 

📌 暗記のポイント:元本確定登記は単独でできる特例があるけれど、代位弁済の移転登記は「共同申請」の原則通り!混ぜて単独でやろうとしてはダメ。

 

 

 

ウ:遺贈を原因とする権利移転の申請形式

 

【問題文】

 

Aを登記名義人とする地上権の設定の登記がされている甲土地について、Aが当該地上権をAの相続人であるBに遺贈する旨の遺言書を作成した場合において、その後、Aが死亡したときは、Bは、単独で、遺贈を登記原因とするAからBへの地上権の移転の登記を申請することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

令和541日施行の改正不動産登記法を狙い撃ちにした、非常に質の高いひっかけ肢です。

 

法改正により、「相続人に対する遺贈」であれば、例外的に受遺者が単独で登記申請できるようになりました(不動産登記法633項)。

 

しかし、この単独申請の特例が認められているのは、条文上明確に「所有権の移転登記」に限定されています。

 

本肢をよく見ると、移転する権利は「所有権」ではなく「地上権」になっています。

 

所有権以外の権利(地上権や抵当権など)の遺贈については、たとえ相手が相続人であってもこの特例は適用されず、大原則どおり「共同申請」でしなければなりません。

 

したがって、Bが単独で申請することはできないため本肢は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント:相続人への遺贈が単独申請できるのは「所有権」だけ!「地上権」の遺贈は原則どおり共同申請!

 

 

 

エ:複数受託者の一部辞任による変更登記

 

【問題文】

 

Aを委託者とし、B及びCを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Bが受託者を辞任し、その任務が終了した場合には、Cは、単独で、Bの任務 of 終了による権利の変更の登記を申請することができる。

 

 

【結論:誤り】

 

 

解説

 

信託不動産において、受託者が複数いるケースのルールです。

 

受託者がBC2人いる場合、その不動産は2人の「合有(ごうゆう)」という形で登記されています。

 

ここでBさんが辞任して引退した場合、残されたCさんの単独受託状態にするための変更登記(合有名義人変更登記)をする必要があります。

 

この登記は、引退するBさんにとっては「名義が外れる(損をする)」手続きであり、残るCさんにとっては「自分だけの名義になる(得をする)」手続きです。

 

つまり、利害が対立するため、残存受託者(C)と前受託者(B)の「共同申請」で行うのが原則です(不動産登記法1002項の裏返し)。Cが単独で申請することはできません。

 

 

📌 暗記のポイント:2人いた受託者のうち1人が辞めるときは、残った人と辞める人の「共同申請」で名義を直す!

 

 

 

オ:公正証書がある場合の共同申請原則

 

【問題文】

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、売買を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記手続を行う旨の公正証書が作成された場合には、Bは、当該公正証書を添付情報として提供したとしても、単独で、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を申請することはできない。

 

 

【結論:正しい】

 

 

解説

 

「共同申請の大原則」の強固さを教えてくれる問題です。 売買による所有権移転は、当然「共同申請」です。

 

たとえ公証役場で「ABに土地を売ります、登記手続きをします」という立派な公正証書を作ってもらったとしても、それはあくまで二人の間の契約書が公的に証明されたというだけに過ぎません。

 

共同申請の原則を突破して、買主(B)が1人で単独申請できるようになるには、裁判を起こして「ABに登記を移せ」という『確定判決』をもらう必要があります(不動産登記法631項/判決による登記)。

 

公正証書は判決ではないため、どれだけ証明力が高くても単独申請の武器にはなりません。したがって、「単独申請することはできない」とする本肢の記述は正しいです。

 

 

📌 暗記のポイント:どれだけ立派な「公正証書」があっても、判決じゃないなら単独申請はムリ! 原則通り二人で窓口に行きなさい。

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

 

  • ア:正しい(消滅の定めがあれば単独抹消OK
  • イ:誤り(代位弁済の移転登記は共同申請)
  • ウ:誤り(法改正で単独申請できるのは「所有権」のみ。地上権は共同申請)
  • エ:誤り(受託者の一方辞任による変更は共同申請)
  • オ:正しい(公正証書があっても判決でなければ単独申請は不可)
  •  

正しい記述は ア と オ なので、正解は 2 となります。

 

現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。

 

  1. 不動産登記法の絶対原則を問う オ(公正証書があっても単独申請はできない ⇒ 100%正しい) を見つけます。この時点で、オを含むに絞られます。

 

  1. 相方である ア(消滅の定めがあれば単独抹消OK ⇒ 正しい)か エ(受託者の辞任変更共同申請だからバツ)を比較します。

 

これで、受験生が混乱しやすいイ(根抵当権)や、法改正のひっかけであるウ(地上権の遺贈)の罠を完全にスルーして、安全かつ最速で 2 を選ぶことができます!

 

午後の部の択一式はとにかく時間との勝負です。

 

このように「単独か、共同か」の原則を見極める目を持っておくと、記述式問題の申請書を書くときにも迷いがなくなりますよ!

 

 

 

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