午後の部・第15問(不動産登記法)の解説です。
テーマは登記申請の「却下(きゃっか)」や「取下げ(とりさげ)」、そして「事前通知」。
手続きが途中でダメになったときのルールや、リカバリーに関するちょっと実務的な論点です。
この手の問題は、一見すると「細かくて難しそう」に思えますが、実は受験生なら絶対に知っているべき超定番の「ひっかけパターン」が潜んでいます。
そこに気づければ、実務的な細かい先例(ウの特約など)を全く知らなくても、一瞬で正解を絞り込むことができます。
提示された解説を整理しつつ、本試験で確実に得点するためのポイントを分かりやすく解説します!
問題文
不動産登記の申請の却下又は取下げに関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 申請代理人が甲土地の所有権の移転の登記の申請を取り下げて、当該申請の際に納付した印紙の再使用証明を受けた場合には、当該申請代理人は、当該申請の申請人以外の者を申請人とする甲土地と同一の登記所の管轄区域内にある乙土地の所有権の移転の登記の申請のために、当該印紙を使用することはできない。
イ 法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用する方法により登記の申請をした場合において、当該申請を取り下げるときは、当該申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法によることができる。
ウ 「承役地の所有者は承役地の浸冠水その他の影響について一切異議求償等を申立てない」旨の特約を申請情報として地役権の設定の登記を申請した場合には、当該申請は却下される。
エ 書面申請の方法により登記の申請をした場合において、当該申請が却下されたときは、当該申請の申請書は還付されない。
オ 外国に住所を有する登記義務者が登記識別情報を提供することができないために事前通知による手続を利用して登記の申請をする場合において、登記官が事前通知を発送した日から2週間内に当該登記義務者から申請の内容が真実である旨の申出がされなかったときは、当該申請は却下される。
【選択肢】
1:ア
イ
2:ア
エ
3:イ
オ
4:ウ
エ
5:ウ
オ
ア:登録免許税(印紙)の「再使用証明」のルール
【問題文】
ア (前略)再使用証明を受けた場合には、当該申請代理人は、当該申請の申請人以外の者を申請人とする(中略)別の申請のために、当該印紙を使用することはできない。
【結論:誤り】
解説
書面申請で間違えて登記を申請してしまい、取り下げた場合、貼ってあった高い収入印紙(登録免許税)を捨てるのはもったいないので、税務署や法務局から「この印紙はまだ使ってないよ」というハンコ(再使用証明)をもらうことができます。
この再使用証明をもらった印紙は、同じ登記所(管轄)であれば、なんと「別の事件」「別の人(申請人)」の登記申請であっても使い回すことができます。
司法書士事務所の実務でも、ミス等で取下げになった印紙を他の事件に回すことは普通に行われています。
記述は「使用することはできない」としているため、誤りです。
📌 暗記のポイント: 再使用証明を受けた印紙は、同じ法務局の管轄内なら、他人の別の事件に使い回してOK!
イ:オンライン申請の取下げ方法
【問題文】
イ 電子情報処理組織を使用する方法(オンライン)により登記の申請をした場合において、当該申請を取り下げるときは、当該申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法によることができる。
【結論:誤り】
解説
不動産登記法における大原則「申請方法と取下げ方法は一致させる」というルールです(不動産登記規則39条1項参照)。
- オンライン申請 で出したもの ⇒ オンライン
で取り下げる
- 書面申請 で出したもの ⇒ 書面(窓口・郵送)
で取り下げる
最初から最後まで手続きのルートは統一しなければなりません。
オンラインで始めたものを途中で紙の書面を出して取り下げることはできませんので、本肢は誤りです。
📌 暗記のポイント: ネット(オンライン)で始めた恋(申請)は、ネットで終わらせる(取下げ)。 急に紙の手紙(書面)で別れを告げるのはルール違反!
ウ:地役権設定登記における不適法な特約
【問題文】
ウ 「承役地の所有者は承役地の浸冠水その他の影響について一切異議求償等を申立てない」旨の特約を申請情報として地役権の設定の登記を申請した場合には、当該申請は却下される。
【結論:正しい】
解説
昭和36年の非常に古い先例(民甲2324号回答)をベースにした、かなり細かい知識です。
地役権(ちえきけん)とは、「他人の土地(承役地)を、自分の土地(要役地)の利便性のために使わせてもらう権利」です(通行や引水など)。
問題文にある「水浸しになっても文句を言わない」という特約は、土地の利用方法に関するルールというよりも、当事者間の個人的な「損害賠償の請求権をあらかじめ放棄する」という契約(債権的な特約)に過ぎません。
このような物権の本質に関わらない個人的な約束は、登記簿に載せることはできないため、これを申請情報に入れてしまうと登記官に却下されます。
知識として知らなくても、他の選択肢で完全に勝負がつきます。
📌 暗記のポイント: 個人的な「損害賠償のジャンル」の約束は、土地の権利の登記には馴染まないから却下される。
エ:却下された場合の「申請書」のゆくえ
【問題文】
エ 書面申請の方法により登記の申請をした場合において、当該申請が却下されたときは、当該申請の申請書は還付されない。
【結論:正しい】
解説
法務局の窓口に紙で申請書を出したものの、不備があって「却下」されてしまったケースです。
このとき、一緒に提出していた契約書(登記原因証明情報)や委任状などの「添付書類」はすべて返して(還付して)もらえます。
そうしないと、お客様の大切な書類が法務局に没収されてしまうからです。
しかし、「登記申請書(本紙)」だけは、法務局が「こういう申請があって却下した」という証拠(歴史)として保管するため、絶対に返してくれません(不動産登記規則38条2項参照)。
記述の通り、正しいです。
📌 暗記のポイント: 却下されたとき、お客様の書類(添付書面)は返してくれるが、自分が書いた「申請書」は法務局にとられる!
オ:海外在住の義務者に対する「事前通知」の期間
【問題文】
オ 外国に住所を有する登記義務者が(中略)事前通知を発送した日から2週間内に(中略)申出がされなかったときは、当該申請は却下される。
【結論:誤り】
解説
受験生なら絶対に落としてはならない、超・定番のひっかけ論点です!
権利証(登記識別情報)を無くしてしまった時の救済策である「事前通知制度」。
法務局から義務者の住所あてに「本当に登記していいですか?」という確認の手紙が届き、それに返事をするシステムです。
この返事の期限は原則として「発送した日から2週間以内」です(不動産登記規則70条8項)。
しかし、義務者が「外国(海外)」に住んでいる場合は、郵便の往復に時間がかかるため、期限が「4週間以内」に延長されます。
本肢はわざわざ「外国に住所を有する」と書いてあるのに「2週間内」としているため、典型的な引っ掛けであり、誤りです。
📌 暗記のポイント: 事前通知の返答期限は、国内なら2週間、海外なら4週間!
まとめ
🏁 正解の組み合わせ
正しい記述の組み合わせを選びます。
- ア:誤り
- イ:誤り
- ウ:正しい
- エ:正しい
- オ:誤り
したがって、正しい組み合わせは ウ と エ
となり、正解は 4 です。
現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。
- 受験生の誰もが警戒している オ(海外在住の事前通知は4週間 ⇒ 「2週間」とする記述は100%バツ)
を見つける。 ⇒ この時点で、オを含む ③ と ⑤ が消えます。
- 次に、基本原則である イ(オンライン申請の取下げはオンラインで行う ⇒ 書面でできるとする記述はバツ) を見つける。 ⇒ イを含む ① も消えます。
- 残ったのは ②(ア・エ)か ④(ウ・エ)です。ここで エ(却下されたら申請書は返ってこない ⇒ 100%正しい)
を確信。
- 最後にア(再使用証明印紙の使い回しOK ⇒ できないとする記述はバツ)をジャッジすれば、難しいウの先例を知らなくても、迷うことなく 4 を選ぶことができます!
本試験の緊張した場面では、ウのような見たことのない選択肢があると焦ってしまいますが、「他の定番論点を完璧に弾けば、消去法で確実に正解できる」という良い見本のような問題です。
基本をしっかり固めていきましょう!

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