【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第18問:不動産登記法「名義人表示変更登記(名変)」の完全解説

2026年8月7日金曜日

令和6年度【不動産登記法】

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午後の部の第18問(不動産登記法)の解説です!


テーマは「登記名義人の名称又は住所の変更の登記(通称:名変登記)」の要否や原因について。


引っ越しで住所が変わったり、会社の名前が変わったりしたときに、登記簿のデータを現在の正しい情報にアップデートする手続きです。


実務の世界では「たかが名変、されど名変。名変を忘れる司法書士は命取り」と言われるほど、絶対にノーミスで通さなければならない超重要論点です。


名変登記を攻略する大原則(マインド)は以下の通りです。


大原則1: 「所有権の移転や抹消など、所有権が動くときは絶対に名変の省略は許されない!」


大原則2: 特例有限会社から株式会社への移行は、法律上「組織変更」ではなく「商号変更(名前の変更)」として扱う!


この2つの強力な軸を持って、「誤っているもの」の組合せをスッキリ整理していきましょう!




問題文


登記名義人の名称又は住所の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア 所有権の登記名義人が地上権の設定の登記の抹消の申請をする場合において、住所の変更により当該所有権の登記名義人の現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときは、当該申請をする前提として、当該所有権の登記名義人の住所の変更の登記を申請しなければならない。


イ 仮差押えの登記がされた不動産について、当該仮差押えが本執行に移行してされる強制競売の申立てがされる前に仮差押債権者であるAの住所の変更があった場合には、Aは、当該不動産の仮差押債権者の住所の変更の登記を申請することができる。


ウ 甲不動産の所有権の登記名義人である特例有限会社が株式会社へ移行した場合には、甲不動産についてする所有権の登記名義人の名称の変更の登記の登記原因は、組織変更である。


エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、AがBに対して甲土地の所有権移転登記手続をする旨の和解調書の正本を提供して、AからBへの所有権の移転の登記の申請をする場合において、住所の変更によりAの現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときであっても、当該和解調書の当事者の表示にAの変更後の住所と登記記録上の住所とが併記されているときは、Bは,当該申請をする前提として、Aの住所の変更の登記を申請することを要しない。


オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aの破産管財人Bが甲土地を任意売却し、所有権の移転の登記の申請をする場合において、住所の変更によりAの現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときは、Bは、当該申請をする前提として、Aの住所の変更の登記を申請しなければならない。




【選択肢】


 1:アイ


 2:アオ


 3:イエ


 4:ウエ


 5:ウオ




各肢の解説


ア:所有権名義人が義務者となる抹消登記と名変


【問題文】


ア 所有権の登記名義人が地上権の設定の登記の抹消の申請をする場合において、住所の変更により当該所有権の登記名義人の現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときは、当該申請をする前提として、当該所有権の登記名義人の住所の変更の登記を申請しなければならない。



【結論:正しい(マル)】



解説


名変登記の省略に関する基本かつ重要な引っ掛け論点です。


不動産登記法では、「設定された権利(地上権や抵当権など)を抹消するとき、その権利の名義人(地上権者など)の住所が変わっていても、前提の名変登記は省略して一気に抹消していいよ」という便利な特例があります。


しかし、今回のケースで住所が変わっているのは、地上権者ではなく「所有権の登記名義人(土地のオーナー)」です。 いくら抹消手続きであっても、「所有権の名義人」の住所が変わっている場合は、絶対に名変登記を省略することはできません。


原則通り、前提として住所変更の登記を申請しなければならないため、記述は正しいです。



📌 暗記のポイント: 名変を省略できるのは、引退して登記簿から消え去る「所有権以外の権利者」だけ!「所有権の名義人」は絶対に省略不可!




イ:仮差押債権者の住所変更登記


【問題文】


イ 仮差押えの登記がされた不動産について、当該仮差押えが本執行に移行してされる強制競売の申立てがされる前に仮差押債権者であるAの住所の変更があった場合には、Aは、当該不動産の仮差押債権者の住所の変更の登記を申請することができる。



【結論:正しい(マル)】



解説


仮差押え(かりさしおさえ)の登記がされた後、本番の裁判で勝って強制競売(本執行)へ進む前に、仮差押債権者Aさんの住所が変わったケースです。


仮差押えの登記自体は裁判所からの「嘱託(しょくたく)」によって入れられたものですが、その後に債権者自身の住所が変わった場合、債権者Aさんは自分から単独で「仮差押債権者の住所変更登記」を法務局に申請することができます(昭和33年民甲205号回答)。


したがって、記述の通り「申請することができる」で正しいです。



📌 暗記のポイント: 裁判所が入れてくれた仮差押えであっても、自分の住所が変わった変更登記は、自分で単独で法務局に申請してOK!




ウ:特例有限会社から株式会社への移行と登記原因


【問題文】


ウ 甲不動産の所有権の登記名義人である特例有限会社が株式会社へ移行した場合には、甲不動産についてする所有権の登記名義人の名称の変更の登記の登記原因は、組織変更である。



【結論:誤り(バツ)】



解説


会社法と不動産登記法のクロスオーバー論点として非常によく狙われる重要知識です。


「有限会社〇〇」が「株式会社〇〇」に移行する場合、実態としては組織が変わるように思えますが、法律上は「商号変更(会社の名前の変更)」の扱いになります(会社法上の特例措置)。


そのため、不動産登記における名変の登記原因も、「組織変更」ではなく「商号変更」と書かなければなりません。記述は「組織変更である」としているため、誤りです。



📌 暗記のポイント: 有限会社から株式会社へのレベルアップは、不動産登記の世界では「組織変更」ではなく「商号変更」と書く!




エ:和解調書による移転登記と名変の要否


【問題文】


エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、AがBに対して甲土地の所有権移転登記手続をする旨の和解調書の正本を提供して、AからBへの所有権の移転の登記の申請をする場合において、住所の変更によりAの現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときであっても、当該和解調書の当事者の表示にAの変更後の住所と登記記録上の住所とが併記されているときは、Bは、当該申請をする前提として、Aの住所の変更の登記を申請することを要しない。




【結論:誤り(バツ)】


解説


裁判所の「和解調書(判決と同じ効力を持つ書類)」を使って、単独で所有権移転登記を申請するケースです。


書類の中に、ご丁寧にAさんの「古い住所」と「新しい住所」が両方書いて(併記されて)あります。


一見すると、「裁判所が新旧の住所の繋がりを認めてくれているんだから、名変は要らないのでは?」と思いたくなりますが、それは罠です。


大原則の通り、「所有権の移転登記」をする際、登記簿上の住所と現在の住所が1文字でも違っていれば、どんな事情(判決や和解調書への併記など)があっても、絶対に前提の名変登記を省略することはできません。 したがって、「申請することを要しない」とする記述は誤りです。



📌 暗記のポイント: 所有権移転の前の名変は絶対君主!裁判所の書類に新旧住所が書いてあろうが、絶対に省略はさせない!




オ:破産管財人による任意売却と名変の要否


【問題文】


オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aの破産管財人Bが甲土地を任意売却し、所有権の移転の登記の申請をする場合において、住所の変更によりAの現在の住所と登記記録上の住所とが異なるときは、Bは、当該申請をする前提として、Aの住所の変更の登記を申請しなければならない。



【結論:正しい(マル)】



解説


土地のオーナーAさんが破産してしまい、裁判所から選ばれた破産管財人Bさんが、Aさんの代わりに土地を売却(任意売却)して所有権移転登記を申請するケースです。


このとき、破産者Aさんの住所が登記簿と変わっていました。


破産管財人が売却する場合であっても、これから行うメインの手続きは「所有権の移転登記」です。 


何度も言うように、所有権移転の前提としての名変登記は絶対に省略できません。


破産管財人Bは、売却による移転登記をする前に、前提として住所変更の登記を申請しなければならないため、記述は正しいです。



📌 暗記のポイント: 破産管財人が出てくる特殊な売却であっても、メインの目的は「所有権移転」。だから名変の省略は絶対にダメ!




まとめ


🏁 正解の組み合わせ


本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。


ア:正しい(所有権名義人が義務者の抹消は名変が必要)

イ:正しい(仮差押債権者の住所変更は自分でできる)

ウ:誤り(有限会社から株式会社への移行原因は「商号変更」)

エ:誤り(和解調書に併記があっても所有権移転前の名変は省略不可)

オ:正しい(破産管財人の売却でも名変が必要)


誤っている記述は ウ と エ なので、正解は 4 となります。


現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。


1. 受験生の絶対の軸である エ(所有権移転の前の名変登記は判決等があっても絶対に省略不可 ⇒ 「要しない」は100%バツ) を見つけます。 ⇒ この時点で、エを含む ③ か ④ に絞られます。


2. あとは相方である イ(仮差押債権者の住所変更は自分でできる ⇒ マル)か ウ(有限会社から株式会社への移行原因は商号変更 ⇒ 「組織変更」とする記述はバツ)を比較します。



3. ウの「組織変更ではなく商号変更」という定番知識を思い出せば、ウがバツだと確信できるため、迷うことなく最速で 4 を選ぶことができます!


アやオのような「抹消や破産管財人が絡むと名変はどうなるんだっけ?」と一瞬迷いやすい選択肢を綺麗に回避し、ウ・エという超強力な基礎知識だけで美しく正答を導き出せる構成になっています。




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