【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第19問:不動産登記法「所有権移転登記」の完全解説

2026年8月8日土曜日

令和6年度【不動産登記法】

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午後の部の第19問(不動産登記法)の解説です!

 

テーマは「所有権の移転の登記」に関する総合問題。

 

相続、会社合併、利益相反、死因贈与、不在者財産管理人など、様々なシチュエーションにおける所有権移転の細かいルールが問われています。

 

この手の個別具体的な問題に対抗するためのマインドは、「原理原則に立ち返ること」、そして「怪しい手続きには、誰のお墨付き(家庭裁判所や監督人など)が必要か?」を考えることです。

 

一見すると難しそうに見えますが、受験生なら瞬時に「これはおかしい!」と気づける超定番のバツ肢が潜んでいます。

 

そこを軸にすれば、細かい知識をすべて覚えていなくても、安全に正解を絞り込むことができます。それでは各選択肢を順番に見ていきましょう!

 

 

 

問題文

 

所有権の移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

 

ア 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、遺産分割協議によりB及びCが各2分の1の持分の割合で甲土地を取得したときは、AからBへの相続を原因とする所有権の一部移転の登記と、AからCへの相続を原因とするAの共有持分の全部移転の登記とは、それぞれの登記の前後を明らかにして同時に申請することができる。

 

イ 甲土地の所有権の登記名義人である株式会社Aを吸収合併消滅会社とし、株式会社 Bを吸収合併存続会社とする吸収合併がされた場合において、甲土地について合併を原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、登記原因証明情報として、合併の記載のあるAの登記事項証明書を提供しなければならない。

 

Aに保佐人B及び保佐監督人Cが選任されている場合において、Bがその所有する甲不動産をAに売却したときは、A及びBは、AB間の甲不動産の売買についてCの同意を証する情報を提供して、BからAへの売買を原因とする所有権の移転の登記の申請をすることができる。

 

Aを所有権の登記名義人とする甲不動産について、ABに死因贈与をし、その執行者としてCを指定する旨の合意が公正証書でない書面によってされた場合において、Aが死亡し、Cが死因贈与を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請するときは、代理権限を証する情報の一部として、当該書面に押印されたAの印鑑に関する証明書又はAの相続人全員の承諾書に押された印鑑に関する証明書を提供しなければならない。

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aが死亡し、その相続人がB及びCであるが、Bのために不在者の財産の管理人Dが選任されている場合において、 CD間の遺産分割協議により、Cが単独で甲土地の所有権を取得し、遺産分割を原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、当該遺産分割協議についての家庭裁判所のDに対する許可があったことを証する情報を提供しなければならない。

 

 

【選択肢】

 

 1:ア イ

 

 2:ア オ

 

 3:イ ウ

 

 4:ウ エ

 

 5:エ オ

 

 

 

ア:相続登記の申請形式

 

【問題文】

 

ア 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、遺産分割協議によりB及びCが各2分の1の持分の割合で甲土地を取得したときは、AからBへの相続を原因とする所有権の一部移転の登記と、AからCへの相続を原因とするAの共有持分の全部移転の登記とは、それぞれの登記の前後を明らかにして同時に申請することができる。

 

 

【結論:誤り(バツ)】

 

 

解説

 

相続登記の基本中の基本を問う、絶対に引っかかってはならない選択肢です。

 

相続は「包括承継(亡くなった人の権利義務を丸ごと引き継ぐこと)」です。

 

Aさんが亡くなってBC2分の1ずつ取得した場合、申請する登記は「AからB及びCへの所有権移転登記(持分各2分の1)」という1本の登記になります。

 

問題文のように、「AからBへ一部移転」した後に「残りをCへ全部移転」というように、バラバラに2本の登記に分けて申請するようなアクロバティックなことは認められません。

 

したがって、記述は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 相続登記は丸ごと1本で申請するのが大原則!「一部移転」と「全部移転」に小分けして同時に出すなんて絶対に不可!

 

 

 

イ:吸収合併による移転登記の添付書面

 

【問題文】

 

イ 甲土地の所有権の登記名義人である株式会社Aを吸収合併消滅会社とし、株式会社 Bを吸収合併存続会社とする吸収合併がされた場合において、甲土地について合併を原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、登記原因証明情報として、合併の記載のあるAの登記事項証明書を提供しなければならない。

 

 

【結論:誤り(バツ)】

 

 

解説

 

会社合併(法人の包括承継)に伴う移転登記の添付書面に関する問題です。

 

A社が消滅してB社に吸収された場合、B社へ所有権移転登記を申請します。

 

このとき、合併によってA社が消滅し、B社がそれを引き継いだという事実を証明するために出す登記原因証明情報は、消滅したA社のものではなく、「合併の記載がある『B社(生き残った存続会社)』の登記事項証明書」です(実務上は会社法人等番号の提供で足りますが、書面としてはB社のものです)。

 

消滅したA社の登記簿には「合併により解散」としか書かれませんので、B社が引き継いだ証明にはなりません。

 

したがって、Aの書面を「提供しなければならない」とする記述は誤りです。

 

 

📌 暗記のポイント: 合併の証明は、生き残った会社(存続会社B)の登記事項証明書を出す!

 

 

 

ウ:保佐人と被保佐人間の利益相反取引

 

【問題文】

 

Aに保佐人B及び保佐監督人Cが選任されている場合において、Bがその所有する甲不動産をAに売却したときは、A及びBは、AB間の甲不動産の売買についてCの同意を証する情報を提供して、BからAへの売買を原因とする所有権の移転の登記の申請をすることができる。

 

 

【結論:正しい(マル)】

 

 

解説

 

民法と不動産登記法のクロスオーバー論点です。

 

保佐人Bさんが、自分が持っている不動産を、担当している被保佐人Aさんに売却するケースです。

 

これは保佐人Bと被保佐人Aの間で利益がぶつかり合う「利益相反(りえきそうはん)行為」に該当します(保佐人が高く売りつければAさんが損をするため)。

 

このように保佐人と被保佐人の利益が相反する場合、原則として保佐人は代理権を行使できませんが、「保佐監督人(C)」がいる場合は、その保佐監督人Cの同意を得れば、Bは有効に取引を行うことができます(民法876条の52項、8514号)。

 

登記申請の際にも、この「保佐監督人の同意書(印鑑証明書付き)」を添付すれば登記が通るため、記述の通りで正しいです。

 

 

📌 暗記のポイント: 保佐人の利益相反は、「保佐監督人のお墨付き(同意)」があればクリアできる!

 

 

 

エ:死因贈与と執行者の代理権限証明情報

 

【問題文】

 

Aを所有権の登記名義人とする甲不動産について、ABに死因贈与をし、その執行者としてCを指定する旨の合意が公正証書でない書面によってされた場合において、Aが死亡し、Cが死因贈与を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請するときは、代理権限を証する情報の一部として、当該書面に押印されたAの印鑑に関する証明書又はAの相続人全員の承諾書に押された印鑑に関する証明書を提供しなければならない。

 

 

 

【結論:正しい(マル)】

 

 

解説

 

実務でも非常に重要となる、死因贈与の執行者が単独申請(形式上は義務者代理)する場合の先例知識です。

 

死因贈与(自分が死んだらこの不動産をあげるという契約)に基づき、指定された執行者Cが登記を申請する場合、その死因贈与契約が「公正証書」でなされているなら信頼性が高いので問題ありません。

 

しかし、本肢のように「公正証書でない書面(私文書)」のときは、本当に本人が生前にそんな契約をしたのか怪しい部分があります。

 

そのため、偽造を防ぐ厳重なセキュリティとして、「契約書に押されたAの印鑑証明書」、または「Aの相続人全員が『この契約は本当です』と認めた承諾書+その相続人全員の印鑑証明書」の添付が必須となります。記述の通りで正しいです。

 

 

 

📌 暗記のポイント: 契約書が公正証書じゃない怪しい死因贈与は、「本人の生前の印鑑証明書」か「相続人全員のハンコと印鑑証明書」でガチガチに固める!

 

 

 

オ:不在者財産管理人による遺産分割協議と家裁の許可

 

【問題文】

 

Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Aが死亡し、その相続人がB及びCであるが、Bのために不在者の財産の管理人Dが選任されている場合において、 CD間の遺産分割協議により、Cが単独で甲土地の所有権を取得し、遺産分割を原因とする所有権の移転の登記の申請をするときは、当該遺産分割協議についての家庭裁判所のDに対する許可があったことを証する情報を提供しなければならない。

 

 

【結論:誤り(バツ)】

 

 

解説

 

⚠️ 【解説の補足】

 

この選択肢は一見すると「不在者財産管理人が遺産分割をするんだから、家裁の許可がいるのでは?」と引っかかりやすいですが、登記添付書面の組み合わせとして決定的なバツが隠されています。

 

不在者財産管理人Dが、行方不明のBの代わりに遺産分割協議(処分行為)をするためには、確かに家庭裁判所の「権限外行為許可(民法28条)」が必要です。

 

しかし、この問題文をよく読むと、遺産分割の結果「Cが単独で所有権を取得した」とあります。

 

つまり、行方不明のB(および管理人D)は、自分の持分をすべてCに譲ってしまい、何も財産をもらっていない(持分ゼロの)状態になっています。

 

不在者の財産を守る立場の管理人Dが、不在者に一銭も財産を残さないような遺産分割協議をすることは利益相反(または不在者の不利益)にあたるため、そもそも家庭裁判所はこのような許可を出しません。

 

よって、許可書を出して「登記の申請をするときは〜」という前提自体が法律上あり得ないため、本肢は誤りとなります。

 

家裁の選任審判書等は必要ですが、この文脈での許可書提供はバツとなります)。

 

 

📌 暗記のポイント: 不在者財産管理人が「不在者に何も残さない遺産分割」をするなんて、家裁が許可を出すわけがない!

 

 

 

まとめ

 

🏁 正解の組み合わせ

 

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

  • ア:誤り
  • イ:誤り
  • ウ:正しい
  • エ:正しい
  • オ:誤り

 

正しい記述は ウ と エ なので、正解は 4 となります。

現場での理想的なスピード解決ステップは以下の通りです。

 

  1. 受験生なら見た瞬間に違和感を覚える ア(相続登記を一部移転と全部移転に小分けして同時申請 ⇒ 100%バツ) を見つける。この時点で、アを含むが一瞬で消えます。

 

  1. 次に、基本知識である イ(合併の証明書は消滅会社ではなく存続会社Bのもの ⇒ 100%バツ) を見つける。これでイを含むも消えます。

 

 

  1. この時点で残ったのは 4(ウ エ) と 5(エ オ) に絞られます。ここでウ(保佐監督人の同意で利益相反クリア ⇒ 100%マル)を確信できれば、難しいエの先例やオのひっかけに悩むことなく、最速で 4 を選ぶことができます!

 

難しいとされる死因贈与の先例(エ)や不在者(オ)を正面から判定しにいかなくても、ア・イ・ウという手前の基本論点をきれいに弾けば確実に正解にたどり着ける、非常にスマートな問題です。

 

この調子で次の問題も攻略していきましょう!

  


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