【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第21問:不動産登記法「区分建物(マンション)の登記」の完全解説
午後の部の第21問(不動産登記法)の解説です!
テーマは受験生が苦手としやすい「区分建物(マンション)の登記」です。
今回は、区分建物における「所有権保存登記(いわゆる74条2項保存)」を中心に、信託登記や登記記録の閉鎖など、受験生によって差がつきやすい骨太な論点が出題されています。
区分建物の登記を攻略する最大のコツは、「敷地権(部屋と土地がセットになった状態)」があるかないかで、ルールがどう変わるかを意識することです。
それでは、学生の解答ア〜オのうち、「正しいもの(マル)」の組合せをスッキリ整理していきましょう!
問題文
区分建物についての登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 なお、敷地権である旨の登記がされている土地に関して建物の区分所有等に関する法律第22条第1項ただし書の規約はないものとする。
ア 敷地権のない区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者が当該区分建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、申請情報には登記原因及びその日付を記載することを要する。
イ 敷地権付き区分建物の表題部所有者Aが死亡し、その唯一の相続人であるBがCに当該区分建物を売却した場合には、Cは、自己を登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することはできない。
ウ Aが表題部所有者として記録されている所有権の登記がない敷地権付き区分建物について、当該区分建物及びその敷地権を目的として、Aを委託者とし、Bを受託者とする信託契約が締結された場合には、Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる。
エ 敷地権付き区分建物が属する一棟の建物に共用部分である旨の登記がされた建物がある場合において、売買を原因とする当該区分建物の所有権の移転の登記を申請するときは、当該共用部分である旨の登記のされた建物の種類、構造及び床面積を申請情報の内容としなければならない。
オ 敷地権付き区分建物について、表題部所有者から所有権を取得した者を所有者とする所有権の保存の登記がされた後に、錯誤を原因として当該所有権の保存の登記の抹消がされた場合には、登記官は、その登記記録を閉鎖する。
【選択肢】
1:ア イ
2:ア オ
3:イ ウ
4:ウ エ
5:エ オ
ア:敷地権のない区分建物の所有権保存登記
【問題文】
ア 敷地権のない区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者が当該区分建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、申請情報には登記原因及びその日付を記載することを要する。
【結論:誤り(バツ)】
解説
区分建物特有の「所有権保存登記(不動産登記法74条2項)」に関する超重要論点です。
通常の建物や土地では、表題部所有者から買い受けた人(転得者)が直接自分の名義で保存登記をすることはできません(一旦表題部所有者名義で保存登記をしてから移転登記をする必要があります)。
しかし、区分建物(マンション)に限っては、手続の簡素化のために「表題部所有者から所有権を取得した者も、直接自分名義で保存登記ができる」という特例があります。
このとき、申請書に「登記原因(売買など)とその日付」を書くべきかどうかが問題となりますが、ルールは以下の通りに分かれます。
- 敷地権がある場合: 土地の持分移転も同時に行われるため、実質的な移転登記としての性質を持ちます。そのため、登記原因(売買等)と日付の記載が必要です。
- 敷地権がない場合: 建物だけの純粋な保存登記であるため、通常の保存登記の原則通り、登記原因および日付の記載は不要です。
本肢は「敷地権のない区分建物」について記述しているため、原因・日付の記載は不要です。したがって、記述は誤りです。
イ:表題部所有者の相続人からの転得者による保存登記
【問題文】
イ 敷地権付き区分建物の表題部所有者Aが死亡し、その唯一の相続人であるBがCに当該区分建物を売却した場合には、Cは、自己を登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することはできない。
【結論:誤り(バツ)】
解説
さきほどのアで登場した「不動産登記法74条2項」の枠組みをもう一歩踏み込んだ先例知識です。
74条2項により、直接自分名義で保存登記ができるのは「表題部所有者から所有権を取得した者」です。
では、表題部所有者Aさんが亡くなって、その相続人Bさんから買い受けたCさん(いわば孫受けの転得者)も直接保存登記ができるでしょうか?
先例(昭和58年民三部回答)では、「表題部所有者の包括承継人(相続人B)から所有権を取得した者(C)も、直接自己名義で所有権保存登記を申請することができる」とされています。
相続人BはAの地位を丸ごと引き継いでいるため、実質的にAから直接買ったのと同視できるからです。
したがって、「申請することはできない」とする記述は誤りです。
ウ:区分建物の保存登記と信託登記の一括申請
【問題文】
ウ Aが表題部所有者として記録されている所有権の登記がない敷地権付き区分建物について、当該区分建物及びその敷地権を目的として、Aを委託者とし、Bを受託者とする信託契約が締結された場合には、Bは、一の申請情報により、自らを所有者とする所有権の保存の登記及び信託の登記を申請することができる。
【結論:正しい(マル)】
解説
信託登記の基本ルールと区分建物の保存登記の組み合わせです。
信託によって不動産の権利が受託者に移る場合、「信託による移転登記(または保存登記)」と「信託の登記」は、一の申請情報により(=セットで同時に)申請しなければならないという鉄則があります(不動産登記法98条1項)。
本肢では、表題部所有者Aさんから受託者Bさんへ信託契約が締結されています。
Bさんは74条2項の「表題部所有者から所有権を取得した者」に該当するため、自分名義の保存登記が可能です。
そして信託のルールに従い、「所有権保存登記」と「信託の登記」を一の申請情報で同時に申請することができます。記述の通りで正しいです。
エ:一棟の建物に属する共用部分の情報の要否
【問題文】
エ 敷地権付き区分建物が属する一棟の建物に共用部分である旨の登記がされた建物がある場合において、売買を原因とする当該区分建物の所有権の移転の登記を申請するときは、当該共用部分である旨の登記のされた建物の種類、構造及び床面積を申請情報の内容としなければならない。
【結論:誤り(バツ)】
解説
共用部分である旨の登記がされた建物は売買の登記の対象にならない。
オ:転得者名義の保存登記抹消と登記記録の閉鎖
【問題文】
オ 敷地権付き区分建物について、表題部所有者から所有権を取得した者を所有者とする所有権の保存の登記がされた後に、錯誤を原因として当該所有権の保存の登記の抹消がされた場合には、登記官は、その登記記録を閉鎖する。
【結論:誤り(バツ)】
解説
登記簿の管理に関する事務手続きの問題です。
表題部所有者から買い受けた人名義で「74条2項保存登記」をしたものの、あとからそれが間違い(錯誤)だと分かって、その保存登記を抹消したケースです。
保存登記が抹消されると、登記簿は「誰も所有権の登記をしていない状態(=表題部しかない状態)」に戻ります。
しかし、表題部所有者のデータ自体は法的に残っているため、登記記録を「閉鎖」して完全に無くしてしまう必要はありません。
登記官が職権で、もともとの表題部所有者の記載を回復させる処理を行います。したがって、「登記記録を閉鎖する」とする記述は誤りです。
まとめ
🏁 正解の組み合わせと現場での解法
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
ア:誤り(敷地権なし⇒原因日付は不要)
イ:誤り(相続人からの転得者Cも保存登記可能)
ウ:正しい(信託と保存はセットで一括申請)
エ:正しい(共用部分の情報を書く必要がある)
オ:誤り(登記記録は閉鎖しない)
正しい記述は ウ と エ なので、正解は 4 となります。
💡 現場での理想的なショートカット手順
- まず基本知識である ア(敷地権なしなのに原因日付が必要 ⇒ 100%バツ) を見破ります。 ⇒ これでアを含む ① と ② が消えます。
- 次に定番の先例知識である イ(相続人からの転得者Cは保存登記できない ⇒ 100%バツ) を見破ります。 ⇒ これでイを含む ③ も消えます。
- 残った選択肢は 4(ウ エ) と 5(エ オ) の二択になります。
- 最後に オ(保存登記が消えたら登記簿閉鎖 ⇒ バツ、表題部があるから残す) を判定できれば、難問である エ の知識が全く分からなくても、消去法で確実に 4 を導き出すことができます!
このように、区分建物の登記であっても基本の「ア・イ・オ」を丁寧に処理すれば確実に得点できる構成になっています。この調子で一歩ずつ合格に近づいていきましょう
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