【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第22問:不動産登記法「抵当権・根抵当権の登記」の完全解説

2026年8月12日水曜日

令和6年度【不動産登記法】

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【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第22問:不動産登記法「抵当権・根抵当権の登記」の完全解説

午後の部の第22問(不動産登記法)の解説です!

テーマは担保権登記の頻出論点である「抵当権・根抵当権の登記」。

今回は、「債務者の住所証明情報の要否」「混同消滅後の権利変動」「抹消登記と前提の相続登記」「共同根抵当と行政区画変更」といった、実務的かつ受験生が本試験で悩みやすい応用論点までバランスよく網羅されています。

担保権の登記を解くコツは、「登記名義人(誰が当事者か)」と「時系列(何が先に起きたか)」を徹底的に整理することです。

それでは、学生の解答ア〜オのうち、「正しいもの(マル)」の組合せをスッキリ整理していきましょう!

問題文

抵当権又は根抵当権の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とし、Cを債務者とする根抵当権の設定の登記の申請をする場合には、当該申請の申請情報に記載されたCの住所を証する情報の提供を要する。

Aを抵当権の登記名義人とする甲土地について、Aが甲土地の所有権を取得したことにより当該抵当権が混同により消滅した後、当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAからBへの売買を原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、Aは、単独で混同を登記原因とする当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることができる。

Aを抵当権の登記名義人とする甲土地について、Aが甲土地の所有権を取得したことにより当該抵当権が混同により消滅した後、当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、混同を登記原因として当該抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは、B及びCを登記義務者としなければならない。

Aを所有権の登記名義人とする甲土地に抵当権の設定の登記がされている場合において、Aが死亡した後に当該抵当権が消滅したときは、Aの唯一の相続人であるBは、当該抵当権の設定の登記の抹消の前提として、甲土地について相続を原因とする所有権の移転の登記を申請することを要しない。

Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを債務者とする根抵当権の設定の登記がされた後、Bの住所について地番変更を伴わない行政区画の変更がされた場合には、乙土地について甲土地と共同根抵当とする根抵当権の設定の登記の前提として、甲土地についてBの住所の変更の登記を申請することを要しない。

【選択肢】

1:ア エ
2:ア オ
3:イ ウ
4:イ エ
5:ウ オ

ア:根抵当権設定登記における債務者の住所証明情報の要否

【問題文】
ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを根抵当権者とし、Cを債務者とする根抵当権の設定の登記の申請をする場合には、当該申請の申請情報に記載されたCの住所を証する情報の提供を要する。

【結論:誤り(バツ)】

解説

根抵当権(または抵当権)設定登記の申請情報と添付情報に関する基本知識です。

設定登記における当事者は、登記権利者(根抵当権者B)と登記義務者(設定者・所有者A)です。「債務者C」はあくまで登記事項(登記事項の要素)にすぎず、登記申請の当事者(申請人)ではありません。

不動産登記のルールにおいて、住所証明情報(住民票など)の提供が求められるのは、「新たに登記名義人となる者」(本問では根抵当権者B)に限られます。債務者Cは名義人になるわけではないため、Cの住所証明情報の提供は不要です。

したがって、記述は誤りです。

📌 暗記のポイント: (根)抵当権設定で住所証明情報がいるのは「(根)抵当権者」だけ!債務者の住民票は不要!

イ:混同消滅後・第三者への所有権移転後の抹消申請手続き

【問題文】
イ Aを抵当権の登記名義人とする甲土地について、Aが甲土地の所有権を取得したことにより当該抵当権が混同により消滅した後、当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAからBへの売買を原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、Aは、単独で混同を登記原因とする当該抵当権の設定の登記の抹消の申請をすることができる。

【結論:誤り(バツ)】

解説

抵当権者がその不動産の所有権を得ると、権利が同一人に帰属するため抵当権は「混同(こんどう)」により消滅します(民法179条1項)。

もし、所有権がAにある状態のままなら、Aは単独で「混同」を原因とする抵当権抹消登記を申請できます(不動産登記法70条の2)。

しかし本肢では、抹消する前に所有権が売買によってBに移転してしまっています。

現在の所有者であるBにとって、この抵当権(すでに形骸化しているとはいえ)が抹消されることは利益になるため、Bが「登記権利者」となります。一方、元抵当権者であるAは「登記義務者」となります。

したがって、所有権が第三者に移った後はAが単独で抹消することはできず、AとBの共同申請によって抹消しなければなりません。記述は誤りです。

📌 暗記のポイント: 混同で消滅していても、所有権が第三者に移ったら単独抹消は不可!共同申請になる!

ウ:混同消滅後・相続開始後の抹消登記の登記義務者

【問題文】
ウ Aを抵当権の登記名義人とする甲土地について、Aが甲土地の所有権を取得したことにより当該抵当権が混同により消滅した後、当該抵当権の設定の登記の抹消がされない間にAが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、混同を登記原因として当該抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは、B及びCを登記義務者としなければならない。

【結論:正しい(マル)】

解説

イの変形バージョンで、混同消滅後に相続が発生したケースです。

抵当権者かつ所有者であったAさんが亡くなり、BさんとCさんがその地位を相続しました。混同によって消滅している抵当権を抹消するためには、Aさんの残した登記義務者の地位を引き継いだ相続人全員(BおよびC)が登記義務者とならなければなりません。

これは「登記義務者について相続が開始したため、相続人全員から共同で(または義務者の包括承継人として)申請する」という不動産登記の原則通りの処理です。記述は正しいです。

📌 暗記のポイント: 義務者が亡くなった場合は、その相続人全員が登記義務者の地位を引き継ぐ!

エ:抵当権消滅と前提の相続登記の要否

【問題文】
エ Aを所有権の登記名義人とする甲土地に抵当権の設定の登記がされている場合において、Aが死亡した後に当該抵当権が消滅したときは、Aの唯一の相続人であるBは、当該抵当権の設定の登記の抹消の前提として、甲土地について相続を原因とする所有権の移転の登記を申請することを要しない。

【結論:誤り(バツ)】

解説

受験生が非常に引っかかりやすい「抹消登記と前提の相続登記」の時系列トリックです。

以下の2つのパターンの違いを絶対に整理しておきましょう。

  • 【消滅 ⇒ 死亡】 抵当権が消滅した後に、所有者Aが死亡した場合
    消滅した時点ではAが生きていたため、Aが登記義務者です。その後に死亡したため、相続人Bは「移転登記(相続登記)を経ずに」、直接Aの名義のまま包括承継人として抹消登記ができます(不登法62条)。
  • 【死亡 ⇒ 消滅】 所有者Aが死亡した後に、抵当権が消滅した場合(本肢のケース)
    抵当権が消滅した時点では、土地の所有権はすでに相続人Bに移っています。したがって、登記義務者は現在の所有者であるB自身でなければなりません。そのため、前提として「AからBへの相続登記」を通す必要があります。

本肢は「Aが死亡した後に抵当権が消滅した」とあるため、前提の相続登記が必要です。「要しない」とする記述は誤りです。

📌 暗記のポイント: 「死亡が先なら相続登記が必要、消滅が先なら相続登記は不要」と覚えましょう!

オ:共同根抵当の設定と債務者の行政区画変更(住所変更登記の成否)

【問題文】
オ Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、Bを債務者とする根抵当権の設定の登記がされた後、Bの住所について地番変更を伴わない行政区画の変更がされた場合には、乙土地について甲土地と共同根抵当とする根抵当権の設定の登記の前提として、甲土地についてBの住所の変更の登記を申請することを要しない。

【結論:正しい(マル)】

解説

共同根抵当権の追加設定の前提登記に関する実務知識です。

既に甲土地にある根抵当権と「共同根抵当(セット)」にするために、新しく乙土地へ追加設定の登記をする場合、甲土地の登記事項と内容が完全に一致していなければなりません。

しかし、債務者Bの住所が「地番変更を伴わない行政区画の変更(市町村合併や町名変更など)」によって変わった場合、これは法律の規定によって当然に変更されたものとみなされます(不動産登記規則92条1項)。

わざわざ「住所変更登記」をしなくても法務局側で分かっている状態であるため、追加設定の前提として甲土地の債務者住所変更登記を申請する必要はありません。記述の通りで正しいです。

📌 暗記のポイント: 行政区画変更による住所変更は当然に変わったとみなされるため、わざわざ前提の変更登記をしなくてOK!

まとめ

🏁 正解の組み合わせと現場での解法

本問は「正しいものの組合せ」を求めています。

  • ア:誤り(債務者の住所証明情報は不要)
  • イ:誤り(所有権が第三者に移ったら共同申請)
  • ウ:正しい(相続人全員が登記義務者)
  • エ:誤り(死亡が先なので前提の相続登記が必要)
  • オ:正しい(行政区画変更なら前提の住所変更登記は不要)

正しい記述は なので、正解は 5 となります。


💡 現場での理想的なショートカット手順

  1. まず軸になる基本知識 ア(債務者の住所証明情報が必要 ⇒ 100%バツ) を見破ります。 ⇒ これでアを含む ① と ② が一瞬で消えます。
  2. 次に、受験生の頻出ひっかけ論点である エ(死亡が先か消滅が先か) を慎重に読みます。「Aが死亡した後に消滅」なので前提の相続登記が必要(=記述はバツ)だと判定します。 ⇒ これでエを含む ④ も消えます。
  3. 残った選択肢は 3(イ ウ)5(ウ オ) に絞られます(この時点で ウ は確実にマルだと分かります)。
  4. 最後に イ か オ を比較します。「行政区画変更による当然変更(前提の変更登記不要)」という オ の基本ルールを思い出せれば、迷うことなく 5 を選ぶことができます!


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