【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第23問:不動産登記法「抹消回復登記」の完全解説
午後の部の第23問(不動産登記法)の解説です!
テーマは、受験生の多くが苦手意識を持ちやすい「抹消された登記の回復(抹消回復登記)」。
抹消回復登記を攻略する上での大原則は、「不適法に(間違って)消されちゃった登記を、実体関係に合わせて元通りに復活させる」ということです。
本問では、「利害関係人の承諾(ア)」「添付情報・印鑑証明書(イ)」「実体関係との不一致(ウ)」「誰が登記義務者になるか(エ)」「登録免許税(オ)」と、抹消回復の重要論点がこれでもかと詰め込まれています。
それでは、正しいものの組合せをスッキリ整理していきましょう!
■ 問題文
抹消された登記の回復に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。 なお、登記官の職権による登記の回復については考慮しないものとし、租税特別措置法等の特例法による税の減免規定の適用はないものとする。
ア Aが所有権の登記名義人である甲土地について、Bによる滞納処分による差押えの登記がされ、次いでAからCへの所有権の移転の仮登記がされた後に、当該差押えの登記が抹消され、次いで当該仮登記に基づく本登記がされた場合において、Bが、抹消された当該差押えの登記の回復の嘱託をするときは、Bは、Cの承諾を証する情報を提供しなければならない。
イ 自然人であるAからBへの所有権の移転の登記がされてBが所有権の登記名義人となった甲土地について、当該所有権の移転の登記が抹消され、その後、当該所有権の移転の登記の回復を申請する場合には、Aの印鑑に関する証明書の提供を要しない。
ウ Aを抵当権者とし、Bを抵当権設定者兼債務者とする抵当権の設定の登記がされている甲土地について、Bが被担保債権の弁済をする前に、抵当権設定契約を適法に合意解除し、A及びBの申請により当該抵当権の設定の登記が抹消された場合には、A及びBは、抵当権の設定の登記の回復の申請をすることはできない。
エ Aが所有権の登記名義人であり、Bが抵当権の登記名義人である甲土地について、AB間の抵当権設定契約の解除を原因として抵当権の設定の登記の抹消がされ、その後、AからCへの所有権の移転の登記がされた場合において、当該抵当権の設定の登記の回復を申請するときは、Bを登記権利者とし、Aを登記義務者として当該申請をしなければならない。
オ 債権額を1000万円とする抵当権の設定の登記を回復する登記の登録免許税の額は、4万円である。
【選択肢】
1:ア ウ
2:ア オ
3:イ ウ
4:イ エ
5:エ オ
■ ア:抹消回復における「登記上の利害関係を有する第三者」
【問題文】
ア Aが所有権の登記名義人である甲土地について、Bによる滞納処分による差押えの登記がされ、次いでAからCへの所有権の移転の仮登記がされた後に、当該差押えの登記が抹消され、次いで当該仮登記に基づく本登記がされた場合において、Bが、抹消された当該差押えの登記の回復の嘱託をするときは、Bは、Cの承諾を証する情報を提供しなければならない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
抹消回復登記において、もっとも頻出する「利害関係人の承諾(不動産登記法68条)」の該当性です。
時系列を整理してみましょう。
- 所有者Aの土地に、Bが「差押え」の登記をした。
- その後、Cが「所有権移転の仮登記」をした。
- Bの「差押え」が(間違って不適法に)抹消された。
- Cが仮登記に基づく「本登記」をして所有者になった。
この状態で、Bが「差押えを元通りに復活させたい(回復嘱託)」と言い出しました。
もし、この差押え登記が復活すると、Cさんの所有権は「差押えが最初からあった状態の土地」に戻ってしまい、将来競売にかけられるリスクを背負うため、大損害を被ります。
このように、登記の回復によって形式的に不利益を受ける第三者(C)は「登記上の利害関係を有する第三者」に該当するため、Cの承諾を証する情報(承諾書など)の添付が必須となります。したがって、記述は正しいです。
■ イ:所有権移転登記の回復における印鑑証明書の要否
【問題文】
イ 自然人であるAからBへの所有権の移転の登記がされてBが所有権の登記名義人となった甲土地について、当該所有権の移転の登記が抹消され、その後、当該所有権の移転の登記の回復を申請する場合には、Aの印鑑に関する証明書の提供を要しない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
登記申請における印鑑証明書の添付ルールの基本知識です。
AからBへの所有権移転登記が(間違って)抹消されてしまったため、これを復活させて「B名義」に戻す申請をします。
この回復登記における当事者は以下の通りです。
- 登記権利者: B(名義が復活して得をする)
- 登記義務者: A(名義がBに戻って損をする)
共同申請において、所有権の登記名義人が登記義務者となるときは、原則としてその義務者の印鑑証明書を提供しなければなりません(不動産登記規則16条1項1号)。
今回の回復登記によってAは所有権名義を失う義務者ですから、当然Aの印鑑証明書が必要です。したがって、「要しない」とする記述は誤りです。
■ ウ:適法に解除・抹消された登記の回復の可否
【問題文】
ウ Aを抵当権者とし、Bを抵当権設定者兼債務者とする抵当権の設定の登記がされている甲土地について、Bが被担保債権の弁済をする前に、抵当権設定契約を適法に合意解除し、A及びBの申請により当該抵当権の設定の登記が抹消された場合には、A及びBは、抵当権の設定の登記の回復の申請をすることはできない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
冒頭でお伝えした、抹消回復登記の「大原則」をそのまま突いた基本問題です。
抹消回復登記ができるのは、あくまで「不適法に(=手続の間違いや実体がないのに)抹消された場合」に限られます。
本肢では、抵当権が「適法に合意解除」され、手続きも「正しい申請」によって抹消されています。つまり、実体としても手続としても何一つ間違っていません。
実体としてすでに消滅している抵当権を、あとから「やっぱり復活させたい」といって回復登記で蘇らせることは絶対にできません(それは回復ではなく、新しい抵当権の設定登記にすべきです)。したがって、記述の通りで正しいです。
■ エ:抵当権回復登記における登記義務者(現在の所有者か、抹消時の所有者か)
【問題文】
エ Aが所有権の登記名義人であり、Bが抵当権の登記名義人である甲土地について、AB間の抵当権設定契約の解除を原因として抵当権の設定の登記の抹消がされ、その後、AからCへの所有権の移転の登記がされた場合において、当該抵当権の設定の登記の回復を申請するときは、Bを登記権利者とし、Aを登記義務者として当該申請をしなければならない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
抵当権の回復登記において、非常に多くの受験生が迷う「登記義務者は誰か?」という論点です。
時系列を整理します。
- 所有者Aの土地に、Bの抵当権があった。
- (間違って)Bの抵当権が抹消された。
- その後、AからCへ所有権が移転した(現在の所有者はC)。
この不適法に消されたBの抵当権を復活させるとき、登記権利者はもちろんBですが、登記義務者は元の所有者Aでしょうか?それとも現在の所有者Cでしょうか?
判例(最高裁昭和42年6月27日判決)は、「現在の所有権の登記名義人(C)を登記義務者としなければならない」としています。
なぜなら、抵当権が復活するということは、現在の所有者であるCさんの土地の上に重荷(抵当権)が乗っかることを意味するため、実質的に不利益を被ってでも登記を甘受しなければならない立場にあるのはCさんだからです。
したがって、抹消時の所有者であるAを登記義務者とする本肢の記述は誤りです。
■ オ:抹消回復登記の登録免許税
【問題文】
オ 債権額を1000万円とする抵当権の設定の登記を回復する登記の登録免許税の額は、4万円である。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
登録免許税の計算問題です。問題文の「債権額1000万円」や、選択肢4万円(設定登記の税率1000分の4で計算した額)という具体的な数字に惑わされてはいけません。
抹消回復登記の登録免許税は、元の設定登記のように債権額に税率をかけるのではなく、「不動産1個につき1,000円」の定額(一律)と決められています(登録免許税法別表第一第一号(十四))。
したがって、債権額がいくらであろうと、甲土地1筆の回復登記であれば登録免許税は1,000円です。4万円とする記述は誤りです。
■ まとめ
🏁 正解の組み合わせと現場での解法
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:正しい(Cは利害関係人なので承諾が必要)
・イ:誤り(義務者Aの印鑑証明書は必要)
・ウ:正しい(適法に消された登記は回復できない)
・エ:誤り(登記義務者は現在名義人のC)
・オ:誤り(登録免許税は一律1,000円)
正しい記述は ア と ウ なので、正解は 1 となります。
💡 現場での理想的なショートカット手順
- まず、一瞬で切れる絶対のサービス知識 オ(登録免許税4万円 ⇒ バツ、一律1,000円) を見破ります。 ⇒ これでオを含む ②、⑤ が消えます。
- 次に、回復登記のそもそも論である ウ(適法に解除したものは回復できない ⇒ 100%マル) を判定します。 ⇒ これでウを含む ① か ③ に絞られます。
- あとは ア と イ の比較です。イの「所有権を失う義務者Aの印鑑証明書が不要なわけがない(=バツ)」と気づければ、その時点で消去法により 1(ア ウ) が確定します!
難しいと思われがちな抹消回復ですが、登録免許税や大原則(ウ)といった基本足場を固めておけば、本試験でも確実に1点をもぎ取れる問題です!この調子で進みましょう。
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