【令和6年度 司法書士試験】午後の部 第25問:不動産登記法「処分禁止の仮処分の登記」の完全解説
午後の部の第25問(不動産登記法)の解説です!
テーマは、受験生の多くが苦手とする「処分禁止の仮処分の登記(民事保全法関連)」。
この論点を攻略するための大原則は、「仮処分は裁判所(書記官)からの『嘱託』で始まり、終わるときも原則『嘱託』。ただし、勝訴した仮処分債権者が自分の登記を通すときは、邪魔な後れる登記を『単独』で一発抹消できる」という一連の流れをイメージすることです。
今回の問題は、保全手続のかなり深いところまで突っ込んだ骨のある出題ですが、実務・本試験ともに超重要論点です。
各肢の○×をスッキリ整理していきましょう!
■ 問題文
Aを所有権の登記名義人とする甲不動産についての処分禁止の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア
Bが売買によりAから甲不動産の所有権を取得したが、甲不動産について、AからBへの所有権の移転の登記が未了の間にCを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、Bの債権者であるDの代位によりAからBへの所有権の移転の登記がされた場合において、Cが、AからCへの所有権の移転の登記の申請と同時に、単独で当該処分禁止の登記に後れるBのための登記の抹消を申請するときは、その旨をB及びDに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない。
イ
甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、Cを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた場合において、Bが、AからBへの所有権の移転の登記の申請と同時に、単独で当該抵当権の設定の登記の抹消を申請しなかったときは、当該所有権の移転の登記の申請は却下される。
ウ
甲不動産について、債務者の表示として「被相続人A相続人B」と記載された仮処分命令の決定書の正本を提供して所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記が嘱託される場合には、当該処分禁止の登記の前提として、当該登記請求権の債権者であるCは、Bに代位して相続を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。
エ
甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、登記官が、Bの申請に基づきAからBへの所有権の移転の登記及び当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消をするときは、職権で、当該処分禁止の登記を抹消しなければならない。
オ
甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、当該登記請求権について保全の必要性が消滅したときは、A及びBは、解除を登記原因として当該処分禁止の登記の抹消を申請することができる。
【選択肢】
1:ア イ
2:ア エ
3:イ オ
4:ウ エ
5:ウ オ
■ ア:仮処分に後れる登記の抹消申請と「事前通知」の相手方
【問題文】
ア:Bが売買によりAから甲不動産の所有権を取得したが、甲不動産について、AからBへの所有権の移転の登記が未了の間にCを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、Bの債権者であるDの代位によりAからBへの所有権の移転の登記がされた場合において、Cが、AからCへの所有権の移転の登記の申請と同時に、単独で当該処分禁止の登記に後れるBのための登記の抹消を申請するときは、その旨をB及びDに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
仮処分債権者が勝訴し、自分の本登記を通すために「仮処分に後れる登記」を単独で抹消する際の実務ルールです(不動産登記法111条)。
不意打ちで登記を消されてしまう現名義人に対して、仮処分債権者は「あなたの登記を消しますよ」とあらかじめ通知したことを証する情報(書面など)を添付しなければなりません。
本肢のポイントは、抹消されるB名義の登記が、債権者Dによって「代位」されて入った登記である点です。
この場合、名義人であるBだけでなく、わざわざ代位手続きをしてB名義を入れた代位債権者Dに対しても通知が必要とされています(先例)。Dへの通知を怠ると、Dにとっても不意打ちとなってしまうからです。したがって、記述は正しいです。
■ イ:仮処分に後れる登記の抹消申請の「同時義務」の有無
【問題文】
イ:甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、Cを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされた場合において、Bが、AからBへの所有権の移転の登記の申請と同時に、単独で当該抵当権の設定の登記の抹消を申請しなかったときは、当該所有権の移転の登記の申請は却下される。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
仮処分債権者Bが、自分の「所有権移転登記」を申請する際、後れる抵当権(C)の抹消を絶対に同時に申請しなければならないか、という問題です。
結論から言うと、同時に抹消申請をしなくても、Bへの所有権移転登記の申請自体は問題なく受理されます(却下されません)。 Bとしては、後れる抵当権(C)をひとまずそのまま残した状態で、自分の所有権移転登記だけを先に通すことも自由だからです(もちろん、後から単独で消すことはできなくなり、原則どおり共同申請で消すなどの負担は生じますが、却下事由にはなりません)。したがって、「却下される」とする記述は誤りです。
■ ウ:債務者が不帰属(相続発生)の場合の仮処分登記の前提
【問題文】
ウ:甲不動産について、債務者の表示として「被相続人A相続人B」と記載された仮処分命令の決定書の正本を提供して所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記が嘱託される場合には、当該処分禁止の登記の前提として、当該登記請求権の債権者であるCは、Bに代位して相続を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
登記名義人が死亡し、その相続人に対して仮処分をかける場合の特殊な先例です。(先例昭60.6.30-3412)
通常、被相続人名義の不動産を処分するには、前提として「相続登記」を入れておく必要があります(不動産登記法62条の変更登記などの原則)。 しかし、処分禁止の仮処分命令正本に「被相続人A 相続人B」とあらかじめ記載されている場合は、裁判所から登記所への嘱託により、相続登記を経ることなく、直接「処分禁止の登記」を執行することができます。
債権者CがわざわざBに代位して相続登記を申請する必要はありません。したがって、記述は誤りです。
■ エ:役割を終えた「処分禁止の登記」の抹消方法(職権抹消)
【問題文】
エ:甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、登記官が、Bの申請に基づきAからBへの所有権の移転の登記及び当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消をするときは、職権で、当該処分禁止の登記を抹消しなければならない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
仮処分債権者Bが勝訴し、「Bへの所有権移転」と「後れる登記の抹消」を申請した後の、残された「処分禁止の登記」自体の片付け方についてのルールです。
Bへの移転登記が完了し、邪魔な後れる登記も綺麗に抹消された場合、この「処分禁止の登記」はその役目を完全に終えたことになります。
このとき、残った処分禁止の登記は、登記官が「職権」で抹消します(不動産登記規則184条、152条2項)。わざわざBが抹消申請をしたり、裁判所に嘱託を頼んだりする必要はありません。したがって、記述の通りで正しいです。
■ オ:保全の必要性消滅による仮処分登記の抹消手続き
【問題文】
オ:甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、当該登記請求権について保全の必要性が消滅したときは、A及びBは、解除を登記原因として当該処分禁止の登記の抹消を申請することができる。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
仮処分登記の「始まりと終わり」の原則を問う問題です。
処分禁止の仮処分登記は、そもそも裁判所からの「嘱託」によって登記簿に記録されたものです。
その後、和解や事情変更によって「仮処分の必要がなくなった(保全の必要性消滅)」からといって、当事者(AとB)が当事者間の「解除」を原因として、共同で抹消申請をすることは認められません。
この場合は、仮処分命令を出した裁判所(書記官)に対して仮処分取消しの申立てなどを経て、裁判所から登記所へ「仮処分登記の抹消の嘱託」をしてもらう必要があります。
したがって、共同申請ができるとする記述は誤りです。
■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:正しい(代位によって入った登記を消すなら、代位者Dへの通知も必須)
・イ:誤り(同時申請しなくても却下はされない)
・ウ:誤り(決定書に「被相続人A相続人B」とあれば前提の相続登記は不要)
・エ:正しい(役割を終えた処分禁止の登記は登記官が職権抹消する)
・オ:誤り(保全の必要性消滅による抹消は裁判所の嘱託による)
正しい記述は ア と エ なので、正解は 2 となります。
💡 現場での理想的なスピード解決ステップ
- 受験生にとってブレない鉄板知識である オ(仮処分の抹消は原則「嘱託」⇒当事者の共同申請はバツ) を見破ります。 ⇒ これでオを含む ③ と ⑤ が瞬時に消えます。
- 次に、仮処分の職権抹消ルールである エ(本登記と後れる登記を消したら、仮処分自体は登記官が職権で消す⇒100%マル) を判定します。 ⇒ これでエを含む ② か ④ に絞られます。
- あとは ア と ウ の勝負です。ウの「相続人Bと書いてあれば前提の相続登記は不要」という有名な先例を思い出せれば、ウがバツだと分かるため、残った 2(ア エ) が確実な正解として導き出せます!
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