【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第9問:民法「即時取得」の完全解説
午前の部・第9問(民法)の解説です!
今回のテーマは物権編・占有権の分野から超重要論点である「即時取得(民法192条以下)」です。
占有改定と即時取得、相続による占有承継、善意・無過失の判断時期、動産質権の即時取得、盗品・遺失物の回復請求など、受験生が必ず押さえておくべき判例・条文知識が網羅されています。
本問は「誤っているものの組合せ」を問う問題です。各肢の〇×判定を論理的に行い、確実に正解を選択しましょう。
それでは、解説に入ります!
■ 問題文
即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、選択肢のうち、どれか。
ア A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、以後BがCのために引き続き甲動産を保管する意思を表示した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
イ A所有の甲動産をAから預かっていたBが死亡し、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCが、Bを相続し、甲動産の占有を承継した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
ウ A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じていたCとの間で甲動産の売買契約を締結した後、Cが、甲動産についてBが無権利であることを知り、甲動産の現実の引渡しを受けた場合には、Cは、甲動産を即時取得することができない。
エ A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCのために動産に質権を設定し、Cに甲動産の現実の引渡しをした場合には、Cは、甲動産について質権を即時取得する。
オ A所有の甲動産を盗んだBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、現実の引渡しをした場合には、Aは、その盗難から2年間は、Cに対し、甲動産の返還を求めることができる。
【選択肢】
1:ア イ
2:ア オ
3:イ ウ
4:ウ エ
5:エ オ
■ ア:占有改定による即時取得の成否
【記述ア】 A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、以後BがCのために引き続き甲動産を保管する意思を表示した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
即時取得の要件である「占有を始めた(取引による引渡し)」(民法192条)には、現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転が含まれますが、占有改定は含まれないとするのが確立した判例です(最判昭32.3.5・最判昭35.2.11)。
本肢の「以後BがCのために引き続き甲動産を保管する意思を表示した」という引渡し方法は占有改定(民法183条)に該当します。占有改定のみでは外形上の占有状態に変化がなく、原所有者Aの外部に対する信用を奪うまでの効果を認めることができないため、即時取得は成立しません。
したがって、「Cは即時取得する」とする本記述は誤り(×)です。
■ イ:相続と即時取得(取引行為の要否)
【記述イ】 A所有の甲動産をAから預かっていたBが死亡し、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCが、Bを相続し、甲動産の占有を承継した場合には、Cは、甲動産を即時取得する。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
即時取得が成立するためには、売買や贈与といった「取引行為(有効な特定承継)」によって占有を取得したことが不可欠です。
相続のような包括承継(一般承継)は取引行為に該当しないため、相続人が即時取得を主張することはできません。相続人は被相続人Bの地位(本問では受寄者=他主占有の地位)をそのまま受け継ぐに過ぎないためです。
したがって、「Cは即時取得する」とする本記述は誤り(×)です。
■ ウ:善意・無過失の判断時期
【記述ウ】 A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じていたCとの間で甲動産の売買契約を締結した後、Cが、甲動産についてBが無権利であることを知り、甲動産の現実の引渡しを受けた場合には、Cは、甲動産を即時取得することができない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
即時取得における譲受人の「平穏・公然・善意・無過失」は、「占有を取得した時(=引渡しを受けた時)」を基準に判断されます(民法192条、最判平26.4.24参照)。
売買契約の締結時に善意無過失であっても、現実の引渡しを受ける時点においてBが無権利者であることを知ってしまっていた(悪意となった)場合、占有取得時に善意無過失の要件を満たさないため、即時取得は成立しません。
したがって、「Cは即時取得することができない」とする本記述は正しい(〇)です。
■ エ:動産質権の即時取得
【記述エ】 A所有の甲動産をAから預かっていたBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCのために動産に質権を設定し、Cに甲動産の現実の引渡しをした場合には、Cは、甲動産について質権を即時取得する。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
即時取得(民法192条)は、所有権だけでなく**「動産を目的とする他の物権(質権など)」**を設定する場合にも適用されます(民法343条)。
無権利者Bから善意無過失で質権の設定を受け、現実の引渡しを受けた質権者Cは、甲動産について質権を即時取得します。
したがって、本記述は正しい(〇)です。
■ オ:盗品・遺失物の回復請求(2年間)
【記述オ】 A所有の甲動産を盗んだBが、甲動産がBの所有であると過失なく信じているCに対して甲動産を売却し、現実の引渡しをした場合には、Aは、その盗難から2年間は、Cに対し、甲動産の返還を求めることができる。
【結論:正しい(マル)】
【解説】
即時取得の要件を満たす場合であっても、占有物が「盗品または遺失物」であるときは、被害者または遺失者は盗難または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復(返還)を請求することができます(民法193条本文)。
したがって、盗難の被害者Aは、2年以内であれば善意無過失の即時取得者Cに対して返還を求めることができるため、本記述は正しい(〇)です。
■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。
・ア:誤り(占有改定では即時取得は成立しない)
・イ:誤り(相続は取引行為ではないため即時取得は成立しない)
・ウ:正しい(引渡し時に悪意になれば即時取得できない)
・エ:正しい(動産質権の即時取得は可能)
・オ:正しい(盗品・遺失物は2年間回復請求可能)
誤っている記述は ア と イ なので、正解は 1(ア イ) となります。
💡 解法テクニック
- 超重要判例である ア(占有改定⇒即時取得×:誤り) を速攻で確定します。この段階で選択肢は 1(アイ) または 2(アオ) に絞られます。
- 次に イ と オ を比較します。
- 基本知識である イ(相続⇒取引行為ではないため即時取得×:誤り) を見抜けば、一瞬で 1(ア イ) を導き出すことができます!
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