【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第14問:民法「法定地上権」の完全解説
午前の部・第14問(民法)の解説です!
本問のテーマは民法388条の「法定地上権」に関する判例総合問題です。
未登記の建物譲受と土地抵当権、1番抵当権設定後の築造(後順位抵当権実行)、土地建物同一所有化と建物抵当権、建物共有と土地単独所有における抵当権設定、共同抵当後の再築など、司法書士試験で超頻出の重要判例が網羅されています。
それでは、各肢の論点を順番に確認していきましょう!
■ 問題文
法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、選択肢のうち、どれか。
ア 甲土地を所有するAが、甲土地上にあるB所有の乙建物をBから買い受けた後、その旨の登記がされないまま、Aが甲土地に抵当権を設定した場合において、抵当権の実行によりCが甲土地の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
イ A所有の甲土地にBのために第1順位の抵当権が設定された後、甲土地上にA所有の乙建物が建築され、次いで、甲土地にCのために第2順位の抵当権が設定された場合において、第2順位の抵当権の実行によりDが甲土地の所有権を取得したときは、Bが乙建物の承認をしていたときであっても、法定地上権は成立しない。
ウ A所有の甲土地上にあるB所有の乙建物にCのために第1順位の抵当権が設定された後、BがAから甲土地を買い受け、次いで、乙建物にDのために第2順位の抵当権が設定された場合において、第1順位の抵当権の実行によりEが乙建物の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
エ A所有の甲土地上にA及びB共有の乙建物がある場合において、Aが甲土地に抵当権を設定し、抵当権の実行によりCが甲土地の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。 1:ア ウ
2:ア エ
3:イ ウ
4:イ オ
5:エ オ
■ ア:建物買受後に所有権移転登記を未了のまま設定された土地抵当権
【記述ア】 甲土地を所有するAが、甲土地上にあるB所有の乙建物をBから買い受けた後、その旨の登記がされないまま、Aが甲土地に抵当権を設定した場合において、抵当権の実行によりCが甲土地の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】判例(最判昭48.9.18)によれば、土地所有者が土地上の建物を買い受けて事実上処分権を取得したときは、建物の所有権移転登記が未了のまま土地に抵当権を設定した場合であっても、抵当権設定時に土地と建物は「同一人に帰属していた」とみなされ、法定地上権が成立します。
対抗要件(登記)の有無に関わらず実体上の所有権が同一人に属していれば足りるため、「法定地上権は成立しない」とする本記述は誤り(×)です。
■ イ:1番抵当権設定後の建物築造と後順位抵当権の実行
【記述イ】 A所有の甲土地にBのために第1順位の抵当権が設定された後、甲土地上にA所有の乙建物が建築され、次いで、甲土地にCのために第2順位の抵当権が設定された場合において、第2順位の抵当権の実行によりDが甲土地の所有権を取得したときは、Bが乙建物の建築を承認していたときであっても、法定地上権は成立しない。
【結論:正しい(マル)】
【解説】また、1番抵当権者(B)が建物の建築を承諾していたとしても、不成立の結論は変わりません(最判平3.3.8)。
したがって、法定地上権は成立しないとする本記述は正しい(〇)です。■ ウ:他人物建物への抵当権設定後に土地を取得した場合の1番抵当権実行
【記述ウ】 A所有の甲土地上にあるB所有の乙建物にCのために第1順位の抵当権が設定された後、BがAから甲土地を買い受け、次いで、乙建物にDのために第2順位の抵当権が設定された場合において、第1順位の抵当権の実行によりEが乙建物の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】
建物の1番抵当権設定時には土地と建物が別人の所有(土地A・建物B)であったため、1番抵当権(C)設定時の要件のみを見ると不成立に見えます。しかし、判例(最判平2.1.22)は、その後に建物所有者Bが土地を取得して「同一人所有」となった後に競売された場合、法定地上権の成立を認めます。
なぜなら、建物抵当権者(C)にとって法定地上権が成立することは何ら不利益にならず、むしろ担保価値が高まるため保護する必要があるからです。
したがって、「法定地上権は成立しない」とする本記述は誤り(×)です。■ エ:建物が共有・土地が単独所有における土地抵当権の実行
【記述エ】 A所有の甲土地上にA及びB共有の乙建物がある場合において、Aが甲土地に抵当権を設定し、抵当権の実行によりCが甲土地の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
【結論:誤り(バツ)】判例(最判昭46.12.21)によれば、土地が単独所有(A所有)で建物が共有(A・B共有)の場合、土地所有者Aが土地に設定した抵当権の実行により土地所有権が第三者Cに移転したときは、法定地上権が成立します。
もし成立しないとすると、建物共有者の1人であるBが建物の収去を余儀なくされ、著しい不利益を受けるからです。(※土地が共有で建物が単独所有の場合とは結論が反対になるため注意が必要です。)したがって、「法定地上権は成立しない」とする本記述は誤り(×)です。
■ オ:共同抵当後の建物滅失・第三者による再築
【記述オ】 A所有の甲土地上にA所有の乙建物がある場合において、Aが甲土地及び乙建物に共同抵当権を設定した後、乙建物が取り壊され、次いで、Aから甲土地を賃借したBが甲土地上にB所有の丙建物を建築した後、抵当権の実行によりCが甲土地の所有権を取得したときは、法定地上権は成立しない。
【結論:正しい(マル)】本肢のように、再築された建物が土地所有者以外(賃借人B)の所有物である場合も同様であり、抵当権者が新建物(丙建物)について土地と同一順位の共同抵当権を取得したなどの特段の事情がない限り、法定地上権は成立しません。
したがって、法定地上権は成立しないとする本記述は正しい(〇)です。■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:誤り(未登記でも実質同一所有なら成立する)
・イ:正しい(1番更地抵当権設定後の築造は承認があっても成立しない)
・ウ:誤り(建物抵当権後に土地取得して同一所有になれば成立する)
・エ:誤り(土地単独・建物共有は建物共有者保護のため成立する)
・オ:正しい(共同抵当後の滅失・再築では原則として成立しない)
正しい記述は イ と オ なので、正解は 4(イ オ) となります。
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