【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第15問:民法「抵当権の消滅」の完全解説
午前の部・第15問(民法)の解説です!
本問のテーマは「抵当権の消滅(抵当権の放棄・代価弁済・抵当権消滅請求・消滅時効・地上権質/抵当の放棄制限)」に関する総合問題です。
抵当権の放棄と被担保債権の消滅、代価弁済の効果、共有持分の第三取得者による抵当権消滅請求、民法396条の時効の特例、地上権を目的とする抵当権の放棄制限など、条文・判例の基本~重要知識が満遍なく問われています。
それでは、各肢の論点を順番に確認していきましょう!
■ 問題文
抵当権の消滅に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、選択肢のうち、どれか。
ア 抵当権者が同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権を放棄した場合において、当該他の債権者の債権が弁済により消滅したときは、その抵当権は、放棄がなかったのと同じ状態に戻る。
イ 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当不動産の代価をその抵当権者に弁済した場合には、後順位の抵当権は、その順位が上昇する。
ウ 共有不動産全体に抵当権が設定されている場合には、当該共有不動産の共有持分のみを取得した第三取得者は、自己の共有持分について単独で抵当権消滅請求をすることができる。
エ 抵当権を実行することができる時から民法第166条第2項の消滅時効期間が経過したときは、抵当権設定者は、抵当権者に対し、時効による抵当権の消滅を主張することができる。オ 地上権を目的として抵当権を設定した地上権者は、その地上権を放棄したときであっても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない。
【選択肢】
1:ア ウ
2:ア オ
3:イ ウ
4:イ エ
5:エ オ
■ ア:特定債権者のための抵当権の放棄と当該債権の弁済消滅
【記述ア】 抵当権者が同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権を放棄した場合において、当該他の債権者の債権が弁済により消滅したときは、その抵当権は、放棄がなかったのと同じ状態に戻る。
【結論:正しい(マル)】
【解説】判例(大判大5.2.22)によれば、抵当権者が同一の債務者に対する他の無担保債権者の利益のために抵当権を放棄(民法376条1項)した場合において、その利益を受けた他の債権者の債権が弁済等によって消滅したときは、抵当権の放棄による負担・拘束が消滅し、抵当権は放棄がなかったのと同様の状態(元の完全な優先弁済権を有する状態)に戻ります。
したがって、放棄がなかったのと同じ状態に戻るとする本記述は正しい(〇)です。
■ イ:代価弁済による抵当権消滅と後順位抵当権者の順位
【記述イ】 抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当不動産の代価をその抵当権者に弁済した場合には、後順位の抵当権は、その順位が上昇する。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】しかし、代価弁済は請求を行った抵当権者のために不動産全体の価値を清算して抵当権を消滅させる手続きであり、後順位抵当権者の順位が上昇(繰り上がり)するわけではありません。むしろ代価弁済により不動産上のすべての抵当権が消滅することになります。
したがって、「後順位の抵当権の順位が上昇する」とする本記述は誤り(×)です。
■ ウ:共有持分の第三取得者による抵当権消滅請求
【記述ウ】 共有不動産全体に抵当権が設定されている場合には、当該共有不動産の共有持分のみを取得した第三取得者は、自己の共有持分について単独で抵当権消滅請求をすることができる。
【結論:誤り(バツ)】
【解説】判例(最判平13.6.5)によれば、不動産全体に抵当権が設定されている場合、その共有持分のみを取得した第三取得者は、自己の持分について単独で抵当権消滅請求(民法379条)をすることはできません。
抵当権は不可分性(民法296条・372条)を有するため、不動産全体に対する抵当権を特定の共有持分だけで切り離して消滅請求することは認められないからです。したがって、「単独で抵当権消滅請求をすることができる」とする本記述は誤り(×)です。■ エ:債務者・抵当権設定者に対する抵当権の時効消滅の特例
【記述エ】 抵当権を実行することができる時から民法第166条第2項の消滅時効期間が経過したときは、抵当権設定者は、抵当権者に対し、時効による抵当権の消滅を主張することができる。
【結論:誤り(バツ)】そのため、債務者や抵当権設定者との関係では、抵当権自体が単独で20年(民法166条2項)の消滅時効にかかることはなく、被担保債権が時効消滅しない限り、抵当権のみの時効消滅を主張することはできません。
したがって、抵当権設定者が抵当権のみの消滅時効を主張できるとする本記述は誤り(×)です。■ オ:地上権を目的とする抵当権と地上権の放棄
【記述オ】 地上権を目的として抵当権を設定した地上権者は、その地上権を放棄したときであっても、その放棄をもって抵当権者に対抗することができない。
【結論:正しい(マル)】■ まとめ
🏁 正解の組み合わせ
本問は「正しいものの組合せ」を求めています。
・ア:正しい(特定債権者の弁済消滅により抵当権は元に戻る)
・イ:誤り(代価弁済で順位上昇するわけではない)
・ウ:誤り(共有持分の第三取得者は単独で消滅請求不可)
・エ:誤り(設定者に対して抵当権のみの時効消滅は主張不可)
・オ:正しい(地上権放棄は抵当権者に対抗不可)
正しい記述は ア と オ なので、正解は 2(ア オ) となります。
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