【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第16問:民法「債権譲渡」の完全解説

2026年10月17日土曜日

令和7年度【民法】

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【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第16問:民法「債権譲渡」の完全解説

午前の部・第16問(民法)の解説です!

本問のテーマは「債権譲渡(対抗要件・譲渡制限特約・将来債権譲渡・差押え・相殺)」に関する総合問題です。

確定日付の有無による対抗問題、譲渡制限特約が付された債権の破産時供託請求権、将来債権譲渡における譲渡制限の悪意擬制、譲渡制限特約付き債権の転得者・差押え、債権譲渡と相殺(他人の債権の譲受)など、2020年改正民法を踏まえた実践的な論点が幅広く問われています。

それでは、各肢の論点を順番に確認していきましょう!

■ 問題文

債権の譲渡に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、選択肢のうち、どれか。

ア AがBに対する甲債権をCに譲渡し、その事実を確定日付のある証書によらずにBに通知した後に、Aが甲債権を更にDに譲渡し、その事実を確定日付のある証書によってBに通知したときは、Bは、Dに対して甲債権に係る債務を履行しなければならない。

イ 譲渡禁止特約が付された金銭債権が譲渡され、その事実を譲渡人が確定日付のある証書によって債務者に通知した後に、譲渡人について破産手続開始の決定があった場合には、債権の全額を譲り受けた譲受人は、譲渡禁止特約があることを知っていたときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を供託させることができる。

ウ 将来債権の譲渡がされた後、債務者対抗要件を具備する前にその将来債権について譲渡禁止の意思表示がされた場合には、債務者は、譲受人がそのことを知らず、知らなかったことについて重大な過失がなかったときであっても、譲受人に対してその債務の履行を拒むことができる。
エ 譲渡禁止特約が付された債権が譲渡され、譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていた場合において、その譲受人の債権者が当該債権の差押えをしたときは、債務者は、その譲受人の債権者に対し、その債務の履行を拒むことができない。

オ 債権譲渡の譲受人が債務者対抗要件を具備した後に、債務者が譲渡人に対する他人の債権を取得した場合において、その債権が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じたものであるときは、債務者は、その債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

【選択肢】

1:ア イ
2:ア エ
3:イ ウ
4:ウ オ
5:エ オ

■ ア:確定日付の有無と第三者対抗要件の優劣

【記述ア】 AがBに対する甲債権をCに譲渡し、その事実を確定日付のある証書によらずにBに通知した後に、Aが甲債権を更にDに譲渡し、その事実を確定日付のある証書によってBに通知したときは、Bは、Dに対して甲債権に係る債務を履行しなければならない。

【結論:正しい(マル)】

【解説】
債権が二重譲渡された場合、第三者に対する対抗要件(民法467条2項)である「確定日付のある証書による通知又は承諾」を備えた譲受人が優先します。本肢では、Cへの通知は確定日付のない証書であり、Dへの通知は確定日付のある証書によって行われているため、Dが完全な第三者対抗要件を備えた譲受人として優先します。したがって、債務者BはDに対して債務を履行しなければなりません。したがって、BはDに履行しなければならないとする本記述は正しい(〇)です。 📌 暗記のポイント: 確定日付のない通知を受けた者(C)よりも、確定日付のある通知を受けた者(D)が常に優先する!

■ イ:譲渡制限特約付き債権と譲渡人破産時の供託請求権

【記述イ】 譲渡禁止特約が付された金銭債権が譲渡され、その事実を譲渡人が確定日付のある証書によって債務者に通知した後に、譲渡人について破産手続開始の決定があった場合には、債権の全額を譲り受けた譲受人は、譲渡禁止特約があることを知っていたときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を供託させることができる。

【結論:正しい(マル)】
【解説】民法466条の3本文により、譲渡制限(禁止)特約が付された金銭債権の全額が譲渡され、対抗要件が備えられた後に譲渡人について破産手続開始決定があった場合、譲受人は悪意または重過失であっても、債務者に対してその債権全額に相当する金銭を供託所に供託させることができます。これは譲渡人が破産した場合に、悪意の譲受人が債務者から直接弁済を受けられず、破産財団からも回収できなくなる不都合を避けるための特例規定です。したがって、悪意であっても債務者に供託させることができるとする本記述は正しい(〇)です。 📌 暗記のポイント: 譲渡制限特約につき悪意の譲受人であっても、譲渡人が破産した場合は債務者に供託請求ができる!(民法466条の3)

■ ウ:将来債権譲渡における譲渡制限意思表示の悪意擬制

【記述ウ】 将来債権の譲渡がされた後、債務者対抗要件を具備する前にその将来債権について譲渡禁止の意思表示がされた場合には、債務者は、譲受人がそのことを知らず、知らなかったことについて重大な過失がなかったときであっても、譲受人に対してその債務の履行を拒むことができる。

【結論:正しい(マル)】
【解説】民法466条の6第2項によれば、将来債権の譲渡後、対抗要件具備時までに譲渡制限の意思表示(譲渡禁止特約)がされたときは、譲受人その他の第三者が「そのことを知っていたもの(悪意)」とみなされます。悪意とみなされる結果、民法466条3項が適用され、債務者は譲受人が実際には善意無重過失であったとしても、譲受人からの履行請求を拒むことができます。したがって、善意無重過失であっても履行を拒むことができるとする本記述は正しい(〇)です。 📌 暗記のポイント: 将来債権譲渡の対抗要件具備前に付された譲渡制限特約は、譲受人を「悪意とみなす」ため履行拒絶が可能!(民法466条の6第2項)

■ エ:譲渡制限特約付き債権の悪意譲受人の債権者による差押え

【記述エ】 譲渡禁止特約が付された債権が譲渡され、譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていた場合において、その譲受人の債権者が当該債権の差押えをしたときは、債務者は、その譲受人の債権者に対し、その債務の履行を拒むことができない。

【結論:誤り(バツ)】
【解説】民法466条の4第2項によれば、譲受人が譲渡制限(禁止)特約につき悪意または重過失である場合において、その「譲受人の債権者」が当該債権を差し押さえたときは、債務者はその差押債権者に対して「履行を拒むことができる」と規定されています。(※なお、同条1項は「譲渡人の債権者」が差し押さえた場合であり、その場合は履行拒絶ができませんが、本肢のように「悪意の譲受人の債権者」が差し押さえた場合は債務者の保護が優先され、履行拒絶が認められます。)したがって、「履行を拒むことができない」とする本記述は誤り(×)です。 📌 暗記のポイント: 悪意の譲受人の債権者が差押えをしてきた場合、債務者は履行を拒むことができる!(民法466条の4第2項)

■ オ:対抗要件具備後の「他人の債権」の取得と相殺

【記述オ】 債権譲渡の譲受人が債務者対抗要件を具備した後に、債務者が譲渡人に対する他人の債権を取得した場合において、その債権が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じたものであるときは、債務者は、その債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

【結論:誤り(バツ)】
【解説】民法469条2項ただし書は、債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権については、仮にその債権自体が対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じたものであっても、「対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したとき」は相殺をもって譲受人に対抗できないと規定しています。対抗要件具備後に他人の反対債権をわざわざ買い取って相殺することを認めると、譲受人の期待を不当に害するためです。したがって、「相殺をもって譲受人に対抗することができる」とする本記述は誤り(×)です。 📌 暗記のポイント: 対抗要件具備後に譲渡人に対する「他人の債権」を譲り受けて取得した場合、相殺対抗は認められない!(民法469条2項ただし書)

■ まとめ

🏁 正解の組み合わせ

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

・ア:正しい(確定日付ある通知を受けたDが優先)
・イ:正しい(破産時には悪意譲受人でも供託請求が可能)
・ウ:正しい(将来債権譲渡の具備前特約は悪意擬制され履行拒絶可)
・エ:誤り(悪意譲受人の差押債権者に対して履行拒絶が可能)
・オ:誤り(対抗要件具備後に取得した「他人の債権」による相殺は不可)

誤っている記述は エ と オ なので、正解は 5(エ オ) となります。


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