【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第17問:民法「弁済・代物弁済」の完全解説

2026年10月17日土曜日

令和7年度【民法】

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【令和7年度 司法書士試験】午前の部 第17問:民法「弁済・代物弁済」の完全解説

午前の部・第17問(民法)の解説です!

本問のテーマは「弁済(履行の提供・弁済費用・代物弁済効力の発生時期)」に関する教授と学生の対話形式の問題です。

双務契約における同時履行と履行遅滞請求の要件、弁済費用の負担原則(民法485条)、不動産代物弁済における「所有権移転の時期」と「債務消滅の時期」の違い、債権譲渡による代物弁済の効力発生時期など、実務・判例上きわめて重要な基本論点が網羅されています。

それでは、対話文の各記述を順番に確認していきましょう!

■ 問題文

次の対話は、弁済に関する教授と学生との対話である。
教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、選択肢のうち、どれか。

教授: 本日は、弁済について検討しましょう。売主Aと買主Bの間の売買契約において、Aが所定の期日にBの住所地に目的物を持参し、その引渡しと同時に代金を支払うとされた事例について、考えてみましょう。約定の期日にBが代金支払の準備をして待っていたのにAがBの住所地に目的物を持参しなかった場合には、Bは、Aに対して履行遅滞による損害賠償請求をすることができますか。

学生:ア Bは、代金支払の準備をしたことを通知してその受領の催告をしなければ、Aに対して、履行遅滞による損害賠償を請求することはできません。

教授: では、冒頭の事例において、Aが約定の期日にBの住所地に目的物を持参したが、その運送に費用を要したとします。当事者が費用の発生を契約時に予測していたのに、その負担について契約で定めていなかったときは、その運送費用は誰が負担しますか。

学生:イ Aが負担します。

教授: 次に、代物弁済についてお聞きします。債務者が、債権者との合意によって、債権者に対して本来の債務の弁済に代えて自己が所有する不動産の譲渡をすることを約し、その後、その不動産について債務者から債権者への所有権移転登記がされた事例について、考えてみましょう。この事例において、代物弁済による債務消滅の効果は、いつ生ずることになりますか。

学生:ウ 代物弁済契約が成立した時点で、債務消滅の効果が生じます。
教授: 同じ事例において、代物弁済契約による不動産の所有権移転の効果は、いつ生ずることになりますか。学生:エ 代物弁済契約が成立した時点で、所有権移転の効果が生じます。

教授: それでは、少し事例を変えて、本来の債務の弁済に代えて債務者が第三債務者に対する債権を債権者に対して譲渡することとしたときは、代物弁済による債務消滅の効果は、いつ生ずることになりますか。

学生:オ 確定日付のある証書により、債務者が第三債務者に通知をし、又は第三債務者が承諾をした時に、債務消滅の効果が生じます。

【選択肢】

1:ア ウ
2:ア エ
3:イ エ
4:イ オ
5:ウ オ

■ ア:持参債務における履行遅滞責任と口頭の提供

【学生の発言ア】 Bは、代金支払の準備をしたことを通知してその受領の催告をしなければ、Aに対して、履行遅滞による損害賠償を請求することはできません。

【結論:誤り(バツ)】
【解説】判例(大判大10.7.11)によれば、持参債務(本問のAの目的物引渡義務)において、債務者(A)が約定の期日に目的物を持参して履行の提供をしなかった場合、債権者(B)は自身が代金支払の準備をして待っていれば(履行の意思と準備があれば)、自ら弁済の提供(通知や受領催告など)をしなくても、Aに対して直ちに履行遅滞による損害賠償責任を追及することができます。したがって、「通知をして受領催告をしなければ損害賠償請求できない」とする本記述は誤り(×)です。
📌 暗記のポイント: 相手方(持参債務者)が提供すらしてこない場合、待っていた買主は自ら口頭の提供等をしなくても相手の履行遅滞責任を問える!

■ イ:弁済の費用の負担原則

【学生の発言イ】 Aが負担します。

【結論:正しい(マル)】
【解説】

民法485条本文は「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする」と規定しています。

本肢では、持参債務における運送費用について特約(別段の意思表示)が定められていなかったため、目的物引渡債務の債務者である売主Aが弁済費用を負担することになります。したがって、債務者Aが負担するとする本記述は正しい(〇)です。
📌 暗記のポイント: 弁済費用は原則として「債務者」の負担!(民法485条本文)

■ ウ:不動産代物弁済における「債務消滅」の効果発生時期

【学生の発言ウ】 代物弁済契約が成立した時点で、債務消滅の効果が生じます。

【結論:誤り(バツ)】
【解説】

判例(最判昭40.4.30)によれば、不動産を代物弁済の目的とした場合、本来の債務が消滅する効果(債務消滅効)が生じるのは、代物弁済契約が成立した時点ではなく、原則として「所有権移転登記の手続きが完了した時」です。

登記という第三者対抗要件を備えて初めて確実な代物弁済の給付(現実の給付)が完了したと評価されるためです。したがって、「契約成立時点で債務消滅効果が生じる」とする本記述は誤り(×)です。
📌 暗記のポイント: 不動産代物弁済の「債務消滅効」は登記完了時(対抗要件具備時)に発生する!

■ エ:不動産代物弁済における「所有権移転」の効果発生時期

【学生の発言エ】 代物弁済契約が成立した時点で、所有権移転の効果が生じます。

【結論:正しい(マル)】
【解説】判例(最判昭57.6.4)によれば、代物弁済契約に基づく目的不動産の所有権移転の効力(物権変動)自体は、当事者間に特段の合意がない限り、「代物弁済契約が成立した時」に生じます(民法176条の意思表示原則)。※ウの「債務消滅効(登記完了時)」と、エの「所有権移転効(契約成立時)」の時期のズレは、司法書士試験で極めて超頻出の対比ポイントです。したがって、契約成立時点で所有権移転の効果が生じるとする本記述は正しい(〇)です。
📌 超重要比較: 不動産代物弁済において、①所有権移転は「契約成立時」、②債務消滅は「登記完了時」!

■ オ:債権譲渡による代物弁済の「債務消滅」効果発生時期

【学生の発言オ】 確定日付のある証書により、債務者が第三債務者に通知をし、又は第三債務者が承諾をした時に、債務消滅の効果が生じます。

【結論:正しい(マル)】
【解説】

判例(最判昭48.7.19)によれば、本来の弁済に代えて第三者に対する債権を譲渡(債権譲渡による代物弁済)した場合、債務消滅の効果が生じるのは、「確定日付のある証書による通知又は承諾という対抗要件(第三者対抗要件)が備えられた時」です。

(※不動産代物弁済で「登記(対抗要件)時」に債務が消滅するのとまったく同じパラレルな理屈です。)したがって、対抗要件具備時に債務消滅の効果が生じるとする本記述は正しい(〇)です。
📌 暗記のポイント: 債権譲渡による代物弁済の債務消滅効も、第三者対抗要件(確定日付通知・承諾)具備時!

■ まとめ

🏁 正解の組み合わせ

本問は「誤っているものの組合せ」を求めています。

・ア:誤り(通知・催告がなくても履行遅滞追及は可能)
・イ:正しい(弁済費用は原則債務者負担)
・ウ:誤り(不動産代物弁済の債務消滅効は登記完了時)
・エ:正しい(不動産代物弁済の所有権移転効は契約成立時)
・オ:正しい(債権譲渡代物弁済の債務消滅効は対抗要件具備時)

誤っている記述は ア と ウ なので、正解は 1(ア ウ) となります。


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